駆逐艦バリー、横須賀を離れる。防衛省、不正確な情報を横須賀市に伝える


2月17日の夕方、横須賀の錨地に停泊していた駆逐艦バリー。この日は出港しなかった






バリーの左右両側にバージが接舷し、クレーンでミサイルをVLSに挿入する作業が続けられていた(23.2.17 星野 撮影)


2月17日、横須賀市は防衛省南関東防衛局からの情報提供として、駆逐艦バリー(BARRY DDG 52)が「本日2月17日(金曜日)、米国へ帰還しました」と発表した。12月に配備されたシャウプ(SHOUP DDG 86)と入れ替えなのだという。
これで横須賀を母港とする米艦船の数は13隻に戻った。

ところで、横須賀市の発表では2月17日にバリーが「帰還しました」とされているのだが、実際には、17日にバリーは横須賀を出港しなかった。
17日の夕方になってもバリーは横須賀の錨地にいて、VLSにミサイルを挿入する作業を行っていた。
ミサイルの積み込み自体危険な作業だが、急いでいたということなのか、バリーの左右両舷にクレーンを積んだバージが横付けし、両側から同時にミサイルを挿入する作業が続けられていた。
バリーが錨地を出港して浦賀水道に向かったのは、翌18日の13時頃のことだ。

既に「帰還」したと防衛省や横須賀市が発表した駆逐艦が、実際にはまだ出港していないどころか、錨地で危険な作業を行っていたのだ。
これは一体どういうことなのだろうか?

横須賀の錨地は横須賀では無く、日本でも無いと防衛省や横須賀市は考えているのか。さすがにそんなわけではないだろう。

バリーが横須賀から離れることを伝える米海軍第7艦隊HPの記事をみると、確かにバリーは2月17日に横須賀を出港したと書いてある。これは控えめに言っても間違った情報だ。
しかし、この間違った情報を米軍は、間違っていることを知りつつ日本政府に伝えたのだろう。まさか駆逐艦バリーは命令に違反して横須賀に留まっていて、それを米軍幹部が知らなかったなどということはないだろう。

そして、おそらく防衛省は、米軍から伝達された情報を、それが事実かどうか問い直さず、確認もせずに、ひたすら従順にそのまま横須賀市に伝えたのだろう。
横須賀市も、それが事実かどうか改めて確認することはせず、従順にそのまま発表したということだろう。

米軍が伝えてきた情報を発表すること自体は必要なことだろう。しかし、それが事実かどうかを、なぜ日本政府も横須賀市も確認しなかったのか。
米軍の言うことを何でもひたすら唯々諾々と信じ込む習性が染みついてしまっているのではないか。

だが、そもそもなぜ米軍は、明らかに事実と異なる情報を日本政府に伝えたのだろうか。

昨年12月に駆逐艦シャウプが新たに横須賀に配備された時にも、横須賀市への通報はシャウプが横須賀に配備された翌日になってのことだった。艦船を配備する場合には、事前に通報するというこれまでの慣例が守られなかったのだ。日本政府にも事前の連絡がなかったという。
日本政府が米軍にひたすら従順であることを良いことに、米軍の増長がエスカレートしているのではないか。

これは「たかが1日の違い」の話ではない。
米軍は、バリーが危険な作業を横須賀の錨地で行っていることを知りながら、それを知らせずに事実と異なる情報を日本政府に伝えたということであり、日本政府も横須賀市も、米軍の通知をそのまま発表するだけで、「帰還した」はずの駆逐艦が横須賀で危険な作業を行なっていることを把握していなかった、ということだ。

事故が起きなかったから結果オーライという話ではない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2月12日、横須賀基地のハーバー・マスター・ピア(HMP)に停泊していた駆逐艦バリー


こちらの角度から見ると、すでに2月12日の時点で、DESRON15(第15駆逐戦隊)のエンブレムがバリーから取り外されていたことが分かる(23.2.12 星野 撮影)


2023-2-19|HOME|