原子力空母定期修理、今年の放射性廃棄物運搬船はSLNCヨークか


昨年6月7日、横浜ノースドックに停泊中の貨物船SLNCヨーク(22.6.7 星野 撮影)

今年も横須賀で原子力空母ロナルド・レーガン(RONALD REAGAN CVN 76)の定期修理が行われている。
今回の定期修理で排出される放射性廃棄物などを横須賀から米国ワシントン州ブレマートンのピュージェット・サウンド海軍造船所まで運ぶ業務の受注業者が、SLNC社(Schuyler Line Navigation Company)に決まったことは既に今年1月6日に発表されている。

AIS(船舶自動識別装置)の情報によれば、このSLNC社の貨物船SLNCヨーク(SLNC YORK)が、現地時間の3月29日に米国ワシントン州のエバレットを出港した。出港後しばらくは沖泊まりをしていたが、翌3月30日の午前2時台には出発した。
SLNCヨークは、韓国のマサンを現地時間の3月9日に出港してエバレットに3月27日に到着したばかりだった。
AISによれば、SLNCヨークの次の目的地は横須賀、到着予定日は4月12日だ。
ただし、AISの表示する到着予定日や予定時刻は、実際のものとは異なる場合がかなりあるので、必ずしもこの予定日通りに到着するとは限らない。表示される目的地が変化することもざらにある。
とは言え、4月12日と言えば、今年の原子力空母定期修理で排出される放射性廃棄物輸送業務を担う貨物船到着の、LAYDAYSの最終日だ。
ということは、このSLNCヨークが、今年の放射性廃棄物運搬船となる可能性が高いということではないか。

SLNC社は複数の貨物船を運航しており、3月30日の時点では、SLNCコルシカ(SLNC CORSICA)がシンガポールに滞在している。このSLNCコルシカがこれから横須賀にやってくる可能性もあり得るが、この記事を執筆している時点では、横須賀に向かって動き出してはいない。現時点で横須賀に向かっているとみられるSLNC社の貨物船は、SLNCヨークだ。

SLNCヨークは、昨年、横浜ノースドックや那覇軍港でオスプレイを搬出入するなど、在日米軍に関わる軍事輸送業務を複数回担った貨物船だ。
その貨物船に、今年の原子力空母定期修理で排出される放射性廃棄物の運搬を担わせるということなのだろうか。

ところで、1964年に日本政府と米国政府が取り交わしたエード・メモワールでは、動力装置の修理を日本国内では行わないこと、放射性物質を日本国内で艦外に搬出しないことなどが定められている。
この約束に違反して、横須賀で原子力艦の動力装置の修理が行われ、それによって排出された放射性廃棄物がコンテナに入れられて艦外に出され、貨物船に積みかえられようとしているのだ。
何度繰り返しても、またどのような詭弁を使っても、決して許されることはない約束違反であり、危険な行為だ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


3月30日の原子力空母ロナルド・レーガン。下の3月26日の写真と比べると、甲板上の「幕」が取り外されるなど定期修理が終盤に近づいていることがうかがえる(23.3.30 星野 撮影)


3月26日の原子力空母ロナルド・レーガン(23.3.26 星野 撮影)


2023-3-30|HOME|