沿岸警備隊大型カッター、横須賀寄港




横須賀基地の13号バースに停泊する沿岸警備隊大型カッター、ストラットン


ストラットンは全長約127メートルの大型カッターで、57mm単装速射砲のほか、近接防空兵器のファランクス20mmCIWSも備えている


4月28日から5月3日にかけて、米沿岸警備隊の大型カッターのストラットン(STRATTON WMSL 752)が横須賀基地に寄港し、13号バースに滞在した。

米沿岸警備隊のHPによれば米カリフォルニア州アラメダを母港としているストラットンだが、横須賀にやって来る前には、ハワイのホノルルに現地時間の4月14日から18日にかけて寄港していたようだ。
太平洋周辺のパトロール航海の任務に就いているのだろう。

横須賀には毎年、沿岸警備隊のカッターがやって来る。
今回のストラットンの入港も、断言はできないが、例年と同様の沿岸警備隊のいわばルーティン的な寄港だったのかもしれない。
しかし、近年、米沿岸警備隊と日本の海上保安庁との間の連携の動きが高まっていることに注意しておく必要がある。

例えば今年2月には、ストラットンと同じバーソロフ級(あるいはレジェンド級とも言う)大型カッターのキンボール(KIMBALL WMSL 756)が鹿児島港に入港し、鹿児島湾で第10管区海上保安本部と初の合同訓練を行っている。

そもそも日本の海上保安庁は、海上保安庁法第25条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と、明確に軍ではなく、軍であってはならないものと位置づけられている。 それに対して米国の沿岸警備隊は、軍の組織として位置づけられている。

2010年にその米沿岸警備隊と海上保安庁は「米国沿岸警備隊と海上保安庁との間の覚書」を結び連携を強めており、さらに2022年5月には協力覚書付属文書を結んでいる。
この付属文書の締結以降、米沿岸警備隊と海保は、両者の合同訓練や情報交換などを「サファイア(SAPPHIRE)」と名づけ、それを「自由で開かれたインド太平洋の実現」のための取り組みなのだと主張するようになった。

上で述べた鹿児島湾での沿岸警備隊大型カッターと海保の合同訓練も、「サファイア」なのだという。

「サファイア(SAPPHIRE)」とは、"Solid Alliance for Peace and Prosperity with Humanity and Integrity on the Rule-of-law based Engagement"の頭文字をつなげたものだ。海上保安庁によると、「法の支配の取組における誠実と仁愛に基づいた平和と繁栄のための強固な連携」という訳になるという。
なんだか意味のよく分からない「訳」をこしらえたものだが、海上保安庁の「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため」(海上保安庁法第1条)という設置目的は、「自由で開かれたインド太平洋の実現」という「サファイア」の目的と、どのように整合するのだろうか。

「誠実と仁愛に基づいた平和と繁栄のための強固な連携」を米沿岸警備隊と行うということは、海上保安庁法第5条に掲げられている、海上保安庁の担う事務のどれにあたるのだろうか。

海上保安庁や米沿岸警備隊の言う「誠実と仁愛に基づいた平和と繁栄」とは何なのだろうか。ちなみに、「誠実と仁愛に基づいた」の部分は、英文の「with Humanity and Integrity」にあたるのだろうが、単語の順番が入れ替わっているのは何か意味があるのだろうか。また、「Humanity」を「仁愛」とだいぶひねった訳にしているのは、何か意味があるのだろうか。

そして、このような名目で進められている米沿岸警備隊との連携強化が、日本の海上保安庁を「日米軍事一体化」に組み込む仕掛けの一つになってはいないだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔) (23.4.30 星野 撮影)


ストラットンが接岸した13号バースは、原子力空母ロナルド・レーガンの停泊する12号バースの隣だ


2023-5-5|HOME|