原子力空母ロナルド・レーガン出港、試験航海か


5月12日の朝、出港直前の原子力空母ロナルド・レーガン(2023.5.12 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


動き始めたレーガン(2023.5.12 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


試験航海のようで、登舷礼は行われなかった



飛行甲板上には、作業をする乗組員の姿が見えた


飛行甲板の先端部には、武装した兵士の姿も見えた


沖に出て行くレーガン(2023.5.12 星野 撮影)

5月12日、原子力空母ロナルド・レーガン(RONALD REAGAN CVN 76)が横須賀を出港した。

レーガンは、昨年12月16日に横須賀に帰港し、今年1月から定期修理を行っていた。
今回の出港はおそらく、定期修理後の点検・検査のための短期的な試験航海だろう。
一旦、横須賀基地に戻って来てから、パトロール航海に出るのだろう。

午前10時10分台に12号バースを離れ、出港したレーガンは、ゆっくりと航行し、12時前には三浦海岸、金田湾沖に到達していたが、12時20分頃には浦賀水道の途中であるにもかかわらず右側に船首の向きを変え始めた。

金田湾沖で方向転換をしながら飛行甲板上の遮蔽板を上げていたのか、甲板上が白く光る様子も見られた。
やがて12時50分台には横須賀基地の方向に船首を向けてしまった。
13時前には2機のヘリがレーガン周辺の上空に飛来し、周回飛行をした後で13時4〜5分頃には相次いで着艦した。
その後、15時30分過ぎにゆっくりと方向転換を開始して徐々に浦賀水道の南下を再開するまで、長時間にわたって三浦海岸沖に停留していた。停留中には投錨しているようだった。

まさに巨大船である原子力空母の浦賀水道でのこのような振る舞いは、「船舶交通がふくそうする海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行なうことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とする」海上交通安全法からみて、問題があるのではないか。


猿島の横を通り抜ける原子力空母ロナルド・レーガン(2023.5.12 星野 撮影)


横須賀沖を行く原子力空母(2023.5.12 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


11時50分頃には三浦海岸沖に到達していたレーガン(2023.5.12 星野 撮影)



12時台に、浦賀水道の中にいるレーガンが船首の向きを変え始めた(2023.5.12 星野 撮影)


12時40分頃には遮蔽板を上げていたのか、飛行甲板上が白く光る様子も見られた(2023.5.12 星野 撮影)
船首の向きを180度転換させた原子力空母(2023.5.12 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


13時頃、2機のヘリが飛来した。2機はやがてレーガンに着艦した。同じ頃、オスプレイも北西方面から飛んできて、
近くを通り過ぎて城ヶ島の方に飛んでいった。オスプレイは陸自の機体かもしれない(2023.5.12 星野 撮影)


15時40分頃、再びゆっくりと方向転換して浦賀水道の南下を始めたレーガン(2023.5.12 星野 撮影)


ところで、4月28日、外務省北米局局長が横須賀市役所を訪れ、原子力空母ロナルド・レーガンが、2024年春を目処に横須賀を出港し、同年夏頃に米国に帰還する予定で、後継艦の原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)が、同年後半に横須賀に入港する予定だと米側から通報があったと、横須賀市長らに説明した。
報道によれば、レーガンは帰国後、大規模改修工事を行う予定だという。

他方、横須賀市発表の当日の「会談概要」には、「米軍では、艦船の整備状況を万全にする趣旨から、海外に前方展開する艦船については、その期間を10年までとするべきと定められていること等に鑑み、今般の決定がなされたものと認識している」と外務省北米局局長が説明したことになっている。

新聞報道にも引用されていた「海外に前方展開する艦船の期間は10年まで」という説明だが、横須賀を母港とする米艦をみると、第7艦隊旗艦のブルーリッジ(BLUE RIDGE LCC 19)は、1979年から横須賀に配備され続けている。また、イージス巡洋艦シャイロー(SHILOH CG 67)も、2006年から横須賀に配備され続けている。
このような事実と北米局長の「説明」は、どのように整合しているのだろうか。「海外に前方展開する『原子力』艦船」ということなのか。横須賀市発表の「会談概要」からは、残念ながらこの点について市長が質問した様子は見られないので詳細は不明だ。

また、外務省北米局局長は、「コールドウェル米海軍原子炉管理局長が林外務大臣を表敬した際に、原子力艦の運用に当たっては、これまで米国政府が表明してきたコミットメントのとおり、今後も変わらず高い水準の安全性を確保していく旨改めて表明があった」ことを根拠として、原子力空母の安全性について「政府としては、原子力防災上の懸念は無いと認識している」と「説明」している。

日本政府による独自の安全審査すらせずに、米海軍の局長が外務大臣に「安全性を確保していく」と表明しただけで「懸念は無い」と言い切ってしまうのは、あまりにも無責任ではないか。
米軍関係者が安全だと言えば、日本政府は独自の安全審査もせず、調査もせずに安全だと信じ込んでしまうのか。日本政府にとって米軍は、信仰の対象のようなものなのか。それとも、異論を述べることが許されていない存在なのか。

また、外務省局長のこのような発言を聞いただけで、「横須賀に新たに赴任する、ジョージ・ワシントンの乗組員や家族の方達には、横須賀を第2の故郷だと思っていただきたいと考えている」と言ってしまう市長も、やはり極めて無責任ではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2023-5-15|HOME|