薬物汚染疑惑の中、原子力空母ロナルド・レーガン横須賀出港、任務航海か


5月23日の朝、12号バースから動き始めた原子力空母ロナルド・レーガン


バースから出て船体の全体を見せるレーガン。登舷礼は行われなかった


飛行甲板上で作業している乗組員の姿は確認された


横須賀基地を出て行くレーガン。右手の錨地には、米海軍の燃料を運ぶ民間タンカー、SLNCパックスの姿が見える(2023.5.23 星野 撮影)

5月23日午前10時過ぎ、強風と雨の中、原子力空母ロナルド・レーガンが横須賀基地の12号バースから出港した。

5月12日から19日にかけて約1週間の試験航海を行ってから約4日後の出港だった。
レーガンは、今回は三浦海岸沖で停止すること無く、浦賀水道を抜けて太平洋へと出て行き、同日午後には伊豆半島の石廊崎沖に達したことが、AIS(船舶自動識別装置)の情報で明らかになった。

本格的な任務航海に出発する時には、礼服姿の乗組員が飛行甲板の周りにずらりと整列する登舷礼が行われるのが通例になっているが、今回は行われなかった。
しかし、星条旗新聞HPに同日付で掲載された記事の内容を読む限り、任務航海への出発と見て間違いはないのだろう。

レーガン出港の前日の5月22日には、巡洋艦ロバート・スモールズ(ROBERT SMALLS CG 62)が横須賀を出港している。
このロバート・スモールズが、レーガンの随伴艦を務めるのだろう。

星条旗新聞に掲載されたレーガン出港を報じる記事のタイトルは、「USS Ronald Reagan departs Yokosuka for what may be its final patrol before carrier swap」。来年に行われることが発表された、横須賀母港の原子力空母の交換の前の、最後のパトロール航海になるかもしれないということだ。
実際、レーガンの出港と同じ頃(現地時間5月22日)に、レーガンと交代して横須賀に来るという原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)が、オーバーホールを終えて造船所から試験航海に出たことも報じられている。
この記事では、レーガンが今秋に横須賀に戻ってくるまでの期間を1つのパトロール航海期間として、上記のタイトルを付けたのだろう。
おそらく実際には、レーガンは夏にも短期的に横須賀に戻ってくるだろう。

ところで、同じ星条旗新聞の記事は、米海軍犯罪捜査局がレーガン乗組員について「薬物の使用、所持、流通」の容疑で捜査中であることが、今回のレーガンの出港前日に明らかになったことを指摘している。
まだ捜査中で、薬物の種類や艦内での使用の程度は解明されていないという。
それでもレーガンは出港していった。

この記事は、今回のレーガン出港に際して、スケジュールと天候の事情で、桟橋ではセレモニーが行われなかったと書いているが、登舷礼を行わなかったことも含めて、艦内の薬物汚染の疑惑の中、逃げるように出港していくレーガンが、いわば「どのツラ下げて」セレモニーなどできるのか、という事情もあったのかもしれない。

同記事は、レーガンは2018年にも、別の薬物事件の中心的な舞台となったことを指摘している。
この事件では、レーガンの15人の乗組員がLSDとエクスタシーの配布と使用を行う組織に関与していたとされている。恐るべきことだが、その15人のうち1人を除く全員が、レーガンの原子炉部門に配属されていたという。

つまり、横須賀を母港とする原子力空母の艦内で、薬物使用が行われている可能性があるということだ。しかも、原子炉部門の担当者の間で、薬物汚染が広がっていたということだ。

東京湾周辺をはじめ日本列島に住む人びとの生存と安全にかかわる、きわめて危機的な事態が生じているということではないか。
なぜ、日本政府も横須賀市も神奈川県も、この重大な問題の追及を行わないのか。

以前の記事でも紹介したが、日本政府の外務省北米局局長は、原子力空母の交代を横須賀市に報告した際に、「コールドウェル米海軍原子炉管理局長が林外務大臣を表敬した際に、原子力艦の運用に当たっては、これまで米国政府が表明してきたコミットメントのとおり、今後も変わらず高い水準の安全性を確保していく旨改めて表明があった」と述べた。
「今後も変わらず」の運用をするということは、「今後も変わらず」原子力空母の艦内で原子炉担当者の薬物使用も起こり得る、ということではないのか。

それでも、日本政府の官僚たちにとっては、米軍に従順であることが何よりも優先されるというのか。
あまりにも無責任すぎる。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


横須賀基地出港後、浦賀水道を通過し、三浦半島の剣崎の陰に消えていく原子力空母ロナルド・レーガン(2023.5.23 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


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