駆逐艦ハワード、バリ島近くで座礁事故


今年6月11日、横須賀基地の6号バースに停泊していた駆逐艦ハワード(23.6.11 星野 撮影)


6月15日、横須賀沖の錨地で弾薬積み込み作業を行った駆逐艦ハワード(23.6.15 星野 撮影)


7月21日から27日にかけて、ハワードは横須賀基地の6号バースに停泊していた。7月にハワードが横須賀に滞在したのは、この期間だけだった。
手前から3隻目の「83」の駆逐艦がハワード(23.7.25 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


Navy Times及びUSNI NewsなどのHPの報道によると、横須賀に配備されているイージス駆逐艦ハワード(HOWARD DDG 83)は8月10日、インドネシアのバリ島近くで座礁事故を起こした。
この時ハワードはバリ島に寄港しようとしていた。インドネシア共和国独立78周年記念行事に参加するためだったようだ。

Navy TimesやUSNI Newsなどの、米軍から情報提供を受けた報道はいずれも、この事故を「ソフトグラウンディング」(soft grounding)と呼んでいる。
USNI Newsの記事によれば「ソフトグラウンディング」とは、「船体が海底に衝突したものの、外部からの追加的な支援や大きな損傷を受けることなく、自力で離礁できることとして定義されている」(USNI News 8月22日付記事「USS Howard Suffered ‘Soft Grounding’ Near Bali Ahead of CO Removal」https://news.usni.org/2023/08/22/uss-howard-suffered-soft-grounding-near-bali-ahead-of-co-removalより引用)。

確かにNavy Timesは、駆逐艦ハワードは自らのパワーや推進力で通常のオペレーションに戻ることができたという第7艦隊のスポークスパーソンの言葉を伝えている。
とはいえ、実際にはハワードや乗組員にどのような損害がもたらされた事故だったのか、明らかにされてはいない。
事故の詳細については、米軍もまだ調査中のようだ。

事故直後の8月19日に米海軍は、駆逐艦ハワードのケンジ・イガワ艦長の解任を発表した。
「指揮能力に対する信頼を失ったため」だという。イガワ中佐は昨年12月にハワードの艦長に就任したばかりだった。
海軍はこの処分と座礁事故との関係については何も述べていないようだが、事故の責任をとらせるためだったのだろう。

横須賀を母港とする米艦の事故といえば、2017年に当時の母港艦船11隻のうち6隻のイージス艦が立て続けに事故を起こしたことが記憶に新しい。

米会計検査院は2017年9月7日、海外母港艦船の運用スケジュール自体に問題があり、乗組員が基礎的技術の習得訓練をする時間がなく、乗組員の訓練不足や過労をもたらしているというレポートを公表している。

その後、横須賀を母港とするイージス艦は増やされており、近年米軍は、かれらのいわゆる「同盟国」とともに東アジア周辺海域での威嚇行動をさらに強化させている。作戦行動の激しさが増していけば、艦船の運用もより厳しくなるだろう。
基礎的技術習得の時間すら取れないハードな運用スケジュールの中、乗組員が過労状態になるという問題は、より深刻なものになっているのではないか。
今回のハワードの座礁事故は、米艦船が市民を巻き込む重大事故を引き起こす危険性が高まっていることを示しているのではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2023-8-24|HOME|