米韓合同軍事演習で、横須賀の艦内に米韓海兵隊司令部


8月27日、横須賀基地の9号バースに停泊する揚陸指揮艦ブルーリッジ。この時、艦内には米韓海兵隊連合司令部が設置されていた(23.8.27 星野 撮影)


米軍画像サイトDVIDSに掲載された、今回の演習でブルーリッジに乗船する海兵隊員。8月24日とされている。
https://www.dvidshub.net/image/7992493/ulchi-freedom-shield-23-iii-mef-embarkationより引用


上の写真で海兵隊員が乗船している青い乗船タラップは、この赤丸の位置にあるもののようだ(23.8.27 星野 撮影)

8月21日から31日までの日程で、米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」(Ulchi Freedom Shield 2023)が行われた。 陸・海・空での戦闘はもとよりサイバー攻撃や核攻撃も含む全面戦争を想定した、過去最大規模の演習だった。

米海兵隊HPに2023年8月29日付けで掲載された記事「III MEF and Republic of Korea Marines operate from USS Blue Ridge during Ulchi Freedom Shield 23」によると、今回のウルチフリーダムシールドには、米第3海兵遠征軍と韓国海兵隊も参加した。

この海兵隊HP記事によると、今年行われたウルチフリーダムシールド2023の特徴は、米海軍第7艦隊旗艦の揚陸指揮艦ブルーリッジ(BLUE RIDGE LCC 19)にCMCC(Combined Marine Component Command: 海兵隊連合司令部)が設置されたことだ。

同記事によれば、米韓の海兵隊は戦時にCMCCを設置する。
米韓両軍は戦時において、米韓連合司令部(ROK/US Combined Forces Command)の作戦統制の下で行動するのだが、CMCCはその連合司令部の、海兵隊の戦闘を担当する部門となる。
その海兵隊司令部が、横須賀に停泊中のブルーリッジに設置されたのだ。

今回の演習期間中、横須賀基地に停泊していたブルーリッジには司令部要員として米第3海兵遠征軍の軍人と韓国海兵隊の軍人が多数乗り込み、生活し、艦内で肩を並べて朝鮮半島での戦争の指揮統制を行う訓練を実施した。
横須賀基地のブルーリッジが、ウルチフリーダムシールド演習が想定する朝鮮半島での戦争における、米韓海兵隊の戦闘の指揮統制を担ったのだ。

横須賀配備艦のブルーリッジは任務航海に出ていくことは少なく、普段は基地内に停泊しながら艦の通信機能を使って、第7艦隊旗艦としての任務を果たしているとみられる。

ということは、あってはならないことだが、実際に朝鮮半島で戦闘が発生した場合にも、横須賀基地に停泊しているブルーリッジに米韓両軍の海兵隊司令部要員が乗り込み、CMCCを設置することがありうることを今回の演習は示しているのではないか。

横須賀はすでに、攻撃兵器を満載する原子力空母の母港であるのみならず、巡航ミサイルを大量に発射できるイージス艦がたくさん停泊している一大ミサイル基地でもあるのだが、横須賀に停泊している揚陸指揮艦に米韓海兵隊のCMCCが設置されれば、朝鮮半島の戦争の指揮統制機能も担う基地ということにもなる。
それによって、横須賀や周辺の人口密集地帯は、攻撃対象となる危険性がますます高まることにもなる。

にもかかわらず、そのことの当否を市民は全く問われていないし、そもそも何の説明もなされていないし、情報も公開されていない。少なくとも横須賀市のHPには、今回のCMCC設置について情報は掲載されていない。

住民自らの生命や生活にかかわる重大な問題について、そして戦争に加担するかどうかという重大な問題について、当事者である住民が自分たちで決める権利を持たず、当事者の知らないところで外国の軍隊が決めてしまう社会に、民主主義や地方自治があると言えるのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


米軍画像サイトDVIDSに掲載された、横須賀のブルーリッジ艦内に設置されたCMCCで
肩を並べて朝鮮半島での戦闘の指揮をする韓国海兵隊員と米海兵隊員の写真。
https://www.dvidshub.net/image/7992495/ufs-23-landing-force-operations-center-uss-blue-ridge-lcc-19より引用


米軍画像サイトDVIDSに掲載された、横須賀ブルーリッジ内に設置されたCMCCで活動した米韓海兵隊員の集合写真。
米韓海兵隊の多数の兵士が横須賀で朝鮮半島での戦闘の指揮を執っていたことが分かる。
https://www.dvidshub.net/image/8014070/ufs-23-us-rok-marines-aboard-uss-blue-ridgeより引用



2023-9-13|HOME|