原子力空母レーガン、ようやく出港


9月29日午前10時過ぎ、12号バースから動き始めた原子力空母ロナルド・レーガン(23.9.29 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


艦橋周辺の甲板上に、まばらな人影が見える(23.9.29 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)




結局、登舷礼は行われなかった(23.9.29 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


横須賀沖を南下する原子力空母(23.9.29 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


午前11時、観音崎沖を行くレーガン(23.9.29 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


出港の取り消しを繰り返して12号バースに停泊し続けた原子力空母レーガン(23.9.24 星野 撮影)



9月28日、午前10時を過ぎても出港できなかったレーガン(23.9.28 星野 撮影)

9月29日午前9時55分、原子力空母ロナルド・レーガンが横須賀基地から出港した。

今回、パトロール航海から戻ってきて横須賀基地に入港したのは8月25日だった。ということは、横須賀基地に1か月以上も滞在していたことになる。

例年、5月頃に横須賀からパトロール航海に出港する原子力空母は、夏に短期間、横須賀に帰港したあと再び出港し、晩秋から12月頃までに任務航海を終えて横須賀に帰港する。
夏の横須賀滞在が1か月以上の長期になったのは、きわめて異例のことだ。

米海軍の空母パイロットは、「前回の空母からの発着艦から所要の日数(30日)がたった場合は空母艦載機着陸訓練(FCLP)を実施し、訓練終了後には、パイロットが洋上の空母において、実際に着艦することにより着艦資格を取得するための試験である空母着艦資格取得訓練(CQ:Carrier Qualification)」を実施しなければならない(岩国市HP「空母艦載機着艦訓練(FCLP)」https://www.city.iwakuni.lg.jp/soshiki/16/9172.htmlより引用)。

時間と労力と財政負担を考えると、米軍としては、任務航海中の一時的な帰港であるはずの夏の横須賀滞在から任務航海に戻る際にFCLPやCQを実施しなければならなくなることは、極力避けたいはずだ。そのため、1か月よりも短い期間で出港することが至上命題であるはずだ。
にもかかわらず、それができなかったということだ。

横須賀市の報道発表によると米軍は当初9月17日に、9月18日の午前10時20分に横須賀基地を出港することを日本の外務省を通じて「通報」していた。
実際、18日の朝には海上保安庁も警戒に当たっていたが、直前に出港は中止され、翌日に延期された。
以後、9月19日午前10時20分と「通報」された出港も中止となり、9月20日には午前8時の出港が中止され、改めて「通報」された同日正午12時の出港も中止された。
9月25日午前10時の出港も中止され、9月28日午前10時の出港も中止された。

そしてようやく、9月29日に出港できたというわけだ。
米軍も、1か月以内に出港しようとしていたことはうかがえる。それができなかった理由は何なのだろうか。

この間、米軍が連日、出港の発表とその「ドタキャン」を繰り返した原因について、人びとの間でいくつかの噂が飛び交っていた。
しかし、米軍は惨めにも出港発表の取り消しを連日繰り返したにもかかわらず、その理由を説明せず、どういうわけか日本政府も横須賀市も神奈川県も、米軍に対して原因を追及しようとしたという話は伝わっていない。

だが今回、米軍が思い通りに動かすことができなかったモノは、東京湾に浮かぶ、かれら自身の原子力空母だ。万が一にもその原子炉が事故を起こしたりすれば、被害を受けるのは東京湾周辺に暮らす人びとだ。
そうしたことすら、米軍幹部はおろか、日本政府や横須賀市や神奈川県の担当者も想像することができないのか。

日本政府や「自治体」の幹部にとっては、日本で暮らす人びとの安全を犠牲にしても米軍幹部のために尽くし、かれらの指示通りに行動し、米軍に快適な環境を保障することが自分たちの任務だということなのだろうか。
「米軍はお前ら下々のために良きにはからってくれるから、つべこべ言わずに付き従え」という姿勢が、防衛省幹部をはじめ、日本政府や自治体幹部に共有されてはいないだろうか。

この間の米軍の「ドタキャン」の繰り返しから浮かび上がってきたのは、何らかのトラブルが解決できていないにもかかわらず漫然と出港の発表を繰り返す組織的な「無能さ」と、原子力艦のトラブルの原因を説明しようとしない傲慢さ、そして何も言わない日本「政府」の、米軍の子分であるかのような異様な姿勢だろう。

ところで、9月29日の出港では、水兵たちが飛行甲板の周囲にズラリと並ぶ「登舷礼」は行われなかった。

厚木基地の監視も行っている爆音訴訟調査研究センターの情報によれば、9月29日のレーガン出港後、昼の12時頃、厚木基地から艦載ヘリが5機離陸した。
さらに、13時22分には米軍C40A輸送機(ボーイング737)が厚木基地に着陸した。
爆音訴訟調査研究センター関係者によれば、このC40Aで岩国から航空要員が移送されてきた可能性があるという。

そうであるならば、この要員を乗せなければレーガンは本格的な任務航海はできないだろう。

これらのことを考え合わせると、9月29日のレーガンの出港は試験航海のためのものであって、短期間で1度横須賀に戻ってきて、その後、本格的な任務航海に出発することになる可能性がある。もちろん、断言はできないが。

また、FCLPは、基地周辺や訓練空域周辺で生活する人びとに多大の被害を与えるものだが、今回、レーガンから艦載機が降りてから既に1か月以上が経過しており、今後これらの訓練が実施されるということなのだろうか。
しかし、もしもこれらの訓練を実施しなくてもレーガンが任務航海に出ていくことが可能だというのであれば、巨額を投じてきわめて貴重な自然環境を破壊して馬毛島に飛行場を建設する口実の根拠が根底から覆り、建設は不要だということを米軍自らが証明することになる。

この意味でもレーガンの今後の動向は要注意だ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


9月29日の正午頃、厚木基地を飛び立つレーガン艦載ヘリ(23.9.29 爆音訴訟調査研究センター 撮影)


9月29日13時22分、厚木基地に着陸するC40A輸送機。レーガンの航空要員が乗っていた可能性がある(23.9.29 爆音訴訟調査研究センター 撮影)



2023-9-30|HOME|