横田空域一部返還、米軍空域かえって増える?


国土交通省の報道資料に、羽田発大阪方面行きの出発経路を加えた。黄色は米軍航空基地


横田空域一部返還後、西行きの壁がさらに高くなったことを示す概念図(数字は百フィート単位の高度)

半年前の08年9月25日、横田空域が一部返還され、それにともない羽田発の西行き出発ルートが変更された。
国土交通省によれば、飛行時間が短縮されたとのことだ。

中国四国九州方面行きと沖縄方面ゆきについては、飛行時間の短縮は正しそうだ。横須賀上空を通過する大阪方面行きも時間的には短縮 された、と報道発表には書かれている。ただこのコースについては見逃せない変更があった。横須賀VORを通過する高度が5割り増し になったのだ。

横田空域の一部返還については「羽田の西側には壁がある、と言われ、これを飛び越すために東京湾上で高度をかせぐような運用を強い られてきたが、それを大きく改善した」という説明が国交省航空局管制保安部管制課長からされている。
壁は空域の一部返還で確かに低くなった。でも航空機はさらに急角度で高度を上げなければならなくなった。これは「大きな改善」では なく「大きな改悪」だ。

なぜ、こんな矛盾する航空路が設定されたのだろうか。
そこには米軍機の飛行を民間機の安全より重視する日本政府の姿勢が読み取れる。
これまでと同じ高度をたどっても、返還された空域を通過して問題なく飛行ができよう。その高度を民間機から取り上げたのだ。
三浦半島から相模湾の上空は、厚木基地の艦載機が大島沖の訓練空域に行き来するルートになっている。その飛行空域を拡大しない限り、 それまでも壁と表現されたような急角度でクリアしなければならないルートをさらに高度を上げさせるような措置をとる必然性はない。
三浦半島から相模湾の上空高度10000フィートから12000フィートの空域を何処の機関が利用することになったかを調べれば、 すぐにわかることだ。

那覇空港への着陸ルートでは「嘉手納ラプコン」により民間機が海面近くの低空飛行を強いられている。羽田発の民間機の急上昇は、 高度が逆に高いところを通らせる米軍優先の管制方式で、嘉手納ラプコンの羽田版ともいえる。
米軍空域が返還されたというのは見せ掛けで、厚木の艦載機の飛行空域は実際には拡大している。

(RIMPEACE編集部)


2009-3-15|HOME|