三浦のヘリ墜落事故報告書

そもそも整備後点検飛行は機能しているのか?


地面にたたきつけられ横転した事故機MH−60S(2013.12.18 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)

2013年12月16日、三浦半島の先端近く、神奈川県三浦市の相模湾に面した埋め立て地に厚木基地の多用途ヘリMH−60S(NF 613)が落ちた。不時着というよりは墜落に近い。

6月26日に、事故報告書が関係する自治体に届けられた。一読して感じたのは、米軍機を整備したあとで点検するための飛行(整備後点検飛行)が、点検の役割を果たしているのか、という疑問だ。

報告書によれば、このヘリは整備後点検飛行実施中で、事故の原因はテール・ローター軸まわりの締め付けナットが緩み、その結果テール・ローターが離脱したため、とのことだ。
事故を引き起こしたナットの緩みは、2013年2月の修理の後の取り付けが不適切だったため、と説明している。整備記録も適切に記録されていなかった。(だから、本事故は人為的ミスによるもの だ、と結論付けている)

ん?
取り付けに問題があった修理は2013年2月に行われた。
この報告書の冒頭に「整備後点検飛行は、航空機が適切に機能していることを確保するため、様々な整備作業が機体に行われたのちに実施される航空機の飛行である」と紹介されている。 2月に行われたテール・ローター・ヘッドなどを取り外した整備の後にも、当然整備後点検飛行は行われたはずだ。その点検飛行で、なぜ「不適切な取り付け」が発見されなかったのか?
10か月後の(別の整備の後の)点検飛行で最大出力で飛んだら突然ナットが緩んだ、というのだろうか。それでは、整備直後の点検飛行がモノノヤクに立っていないことを示すだけだ。

10か月の間飛行を続けてその間にナットが緩んだ、しかし日常の点検ではそれが見つからなかった、というのは言い訳にならない。
いつナットが緩んでテール・ローターが外れて落ちてくるかもしれないヘリを、10カ月間飛ばし続けていたのだから、事故は起こるべくして起きたと言わざるを得ない。
事故報告書を文面通りに読めば、事故の原因を個人の責に帰すだけでは決定的に不十分で、整備後点検が機能しなかった管理体制がまず問われるべきだ。そして、今飛行している米軍ヘリ、 少なくともH60ヘリについて、徹底的な点検のやり直しが急務だ。

ところで、10か月前の整備が事故の原因だった、というのは本当に練った結論なのだろうか。
機体を事故現場から回収して厚木基地に運んだのが12月20日未明、その3か月後に米海軍の救難艦を動員して、脱落した後部ローターを墜落地点近くの海域で探した理由はなんだったのだろうか。 3か月にわたる機体側の調査では究明しきれない原因が、脱落したローターに刻まれていると、事故調査関係者が判断したからではないのか?
後部ローターが見つからなかったために、機体側の調査だけで結論を出したとすると、真の原因が解明されず、その結果事故が繰り返される恐れはないのだろうか?

この「事故報告書」で幕引きをするのは危険だし、あまりにも杜撰だ。

(金子ときお・相模原市議・RIMPEACE共同代表、RIMPEACE編集部)

[参考]
事故調査報告書 (概要)(神奈川県のページに公開されているもの)


機体から落ちた後部ローターを探す米海軍救難艦セーフガード。結局発見できなかった (2014.3.24 撮影)


2014-6-30|HOME |