海兵隊、富士山麓などで演習実施


この写真が掲載された米軍画像サイトの記事によれば、12月3日、MV-22Bオスプレイからキャンプ富士に降りる第7海兵連隊第2大隊の海兵隊員たち。
CV-22の屋久島沖墜落事故の直後だが、12月3日の時点では平然とオスプレイを使った演習が続けられていた。
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 | 2/7 Aerial Insert [Image 1 of 10]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8148163/sifex-24-2-7-aerial-insert


12月4日に東富士演習場で行われた、海兵隊KC-130J輸送機からのパラシュート投下による、物資の補給訓練
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 | Just-in-Time Logistics [Image 10 of 20]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8160774/sifex-24-just-time-logistics


演習には、第369海兵軽攻撃ヘリコプター飛行隊(Marine Light Attack Helicopter Squadron (HMLA) 369)のAH-1Z攻撃ヘリコプターも参加した。
HMLA-369はカリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトン所属の部隊だ
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 SIMCAS [Image 1 of 10]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8147096/sifex-24-simcas


12月5日、キャンプ富士でCH-53ヘリに乗り込む海兵隊員。
CH-53は、第466海兵重ヘリコプター飛行隊(Marine Heavy Helicopter Squadron (HMH) 466)の機体。
乗り込む海兵隊員は、UDP(部隊派遣プログラム)によって沖縄の第3海兵師団第4海兵連隊の部隊となっている、第7海兵連隊第2大隊の兵士
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 | 2/7 Air Insert [Image 3 of 14]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8153019/sifex-24-2-7-air-insert


海軍のヘリもSIFEX24に参加した。第51ヘリコプター海洋打撃飛行隊(Helicopter Maritime Strike Squadron (HSM) 51)のMH-60R
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 | HMH-466, HSM-51 ADGR [Image 8 of 14]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8153676/sifex-24-hmh-466-hsm-51-adgr

米海兵隊は2023年11月15日から12月15日まで、富士山麓などでMAGTF-SIFEX 24(Marine Air-Ground Task Force Stand-In Force Exercise 24: 海兵空地任務部隊スタンド・イン・フォース演習24)と名付けられた演習を行った。

「マルチドメイン」な戦闘を想定したこの演習は、富士山麓のキャンプ富士や北富士演習場、東富士演習場に加えて、沖縄のキャンプハンセンも舞台として実施されたようだ。

そもそもMAGTF(マグタフ: Marine air-ground task force)とは、防衛省の日本語訳では「海兵空地任務部隊」と呼ばれる、司令部隊・陸上部隊・航空部隊・兵站部隊の4つの要素を包括した海兵隊の作戦行動の単位だ(在日米海兵隊HP https://www.japan.marines.mil/Units/ 参照)。
また、SIFEX(サイフェックス)とは、「Stand-In Force Exercise」を略した頭字語だ。
その、スタンド・イン・フォースとは、海兵隊が現在打ち出している中国との戦争のコンセプトである「機動展開前進基地作戦」(EABO: Expeditionary Advanced Base Operations)の担い手となる部隊のことだ。
より具体的には、対艦ミサイル、対空ミサイルなど多様で強力な打撃力を持つ兵器を持ち、「前方地域」に設置される「簡素かつ臨時の場所(遠征前方基地:EAB)」に分散配置されて移動しながら戦闘を行う部隊がスタンド・イン・フォースだ。
状況に応じて、狭義の海兵隊以外の部隊や軍種なども含んで構成されることも想定されている。

今回のSIFEX24は、主に海兵隊の各部隊で構成された海兵空地任務部隊(MAGTF)がスタンド・イン・フォースとして第1列島線でEABOを行う訓練だったようだ。

12月18日付けの米海兵隊HP記事「MAGTF Stand-In Force Exercise Empowers Small-Unit Leaders」によると、師団レベルで行われた今回の演習には、第4海兵連隊や第3偵察大隊、第36海兵航空群、第36海兵航空補給中隊などが参加した。

米軍画像サイトDVIDSの記事の中には、この演習の期間中、キャンプ富士でMV-22オスプレイから降り立つ兵士たちを第7海兵連隊第2大隊と説明しているものもある。これは米本土の第1海兵師団配下の第7海兵連隊第2大隊が、UDP(部隊派遣プログラム)によって沖縄の第3海兵師団第4海兵連隊の部隊ということになっていたということだろう。
また別のDVIDS記事には、富士山麓で戦闘訓練をする海兵隊員の写真に、第2海兵連隊第2大隊所属としたうえで、UDPによって第3海兵師団第4海兵連隊に前方配備されている、という説明がつけられているものもある。

MAGTF-SIFEX 24では、これらの部隊が、偵察、直接戦闘、ヘリやオスプレイによる兵力の展開、輸送機なども使った航空支援などの訓練を行った。
11月29日の屋久島沖でのCV-22オスプレイ墜落事故とほぼ同じ時間帯に厚木基地に4機のMV-22オスプレイが飛来して、12月6日に普天間に帰るまで平然と飛行を繰り返していたのも、このMAGTF-SIFEX 24のためだった。

言うまでもなくこれらの演習は、南西諸島をはじめとする日本列島、フィリピンなどを戦場として中国と戦争をする訓練だ。もちろん、実際の戦争になれば、富士山麓の演習場や米軍基地の中だけで戦闘が行われるということにはならないし、演習場や基地の中だけが攻撃対象になるということもない。
その戦争の被害はまた、「実力組織」が直接展開している場所だけに限らず、当然、社会全体に破局的な影響を及ぼすことにもなる。人びとの日常生活や食料・物資・エネルギーの供給はそのままで、どこか遠くの戦場だけで戦闘が行われている、ということはあり得ない。しかし、そうした市民の生活と生命の破壊を考慮に入れて軍事演習が行われることはない。

ところで、EABOにおけるスタンド・イン・フォースにするために現在進められているのが、海兵連隊の海兵沿岸連隊(MLR: Marine Littoral Regiment)への改編だ。
昨年11月には、沖縄に駐留する2つの海兵連隊のうち第12海兵連隊の方がMLRに改編されている。
しかし、今回のMAGTF-SIFEX 24に参加したのは第12海兵沿岸連隊ではなく、第4海兵連隊のほうだった。
ということは、MLRに改編されていない部隊も、スタンド・イン・フォースとしての役割を担うということなのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


12月5日、富士山麓で機関銃を撃つ海兵隊員。UDPによって第3海兵師団第4海兵連隊に配備されている、第2海兵連隊第2大隊の兵士だ
米軍画像サイトDVIDS記事「SIFEX 24 | Force on Force」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8151553/sifex-24-force-force


2024-1-13|HOME|