金子ときお 議会レポート

補給廠のPCB今だ動かず


 6月定例市議会が4日から30日まで開かれ、横田基地所属の輸送機による落下訓練の事故や昨年の相模原市上空での米軍機と日航機のニアミスの運輸省報告、3月議会で宿題にしておいたPCBの保管などを取り上げた。  以下、質問と答弁を採録する(見出し、一部省略と要約は編集者による)。少し長いが、この3か月間の市内の基地問題に触れているので、ぜひお読みいただきたい。なお、今回は基地問題以外に、埋蔵文化財の保存と地域振興券の外国人差別なども取り上げた。



 基地問題−この3ヵ月を振り返る

 前議会、3月議会で相模補給廠のPCBや地雷敷設訓練などいろいろ聞きましたが、今回はそれらの課題のその後が中心です。質問に入る前に、この3ヵ月の基地問題の動きを振りかえって見ます。
基地を巡る動きの中で最大の問題は、何といっても国会で、日米新ガイドラインに関連する周辺事態法が強行採決されたと言う事です。市内に三つの基地を抱え、そのうちキャンプ座間は在日米陸軍の司令部、在韓国連軍の後方司令部といった、朝鮮半島の緊張関係に一番敏感に反応する基地です。相模総合補給廠のように朝鮮戦争や、ベトナム戦争、湾岸戦争で、後方支援基地として重要な任務を担った基地も抱えています。
こうした後方支援基地、司令部を抱える本市にとって、議会でも度々取り上げさせていただきましたが、今回の周辺事態法は大変な課題です。この国会の動きと連動してか、市内米軍基地の動きは相変わらずいろいろあります。 最近の米陸軍の隊内紙、トリイを見ていますと、連日のように基地内での激しい訓練が行われ、前議会で取り上げた地雷の敷設訓練だけでなく、様々な防御訓練などが行われています。
空の方をみると、5月5日、落ちたのは隣の町田市でしたが、一時は相模原市の名前も出ていました、横田基地所属の輸送機による落下訓練で、誤投下、誤って砂袋を落としてしまったというのがありました。これも凄いことです。人的被害が出なかったのが不思議なくらいです。
 厚木基地を巡る、艦載機の爆音については、空母キティーホークがペルシャ湾に展開中のため余り被害が出ていませんが、その分かどうか、自衛隊の訓練とそれに伴う爆音被害が増えてきています。特に自衛隊のジェット機については、地元自治体との約束があるにもかかわらず、最近ジワジワと離発着の回数が増えています。また、岩国基地所属機もかなり多く飛んでいます。 相模原の空は横田と厚木、空軍と海軍の飛行機によって北も南も占領されている。そんな気がします。
 もう一つ、キャンプ座間のパラボラアンテナの撤去もありました。6月初旬のことでした。横田の空軍に所属していた施設ですが、クレーンでつり上げて、撤去していました。今後どういう事になるのか注目しているんですが。


PCB問題・地雷敷設訓練その後

 まず、相模総合補給廠のPCB、ポリ塩化ビフェニール、ダイオキシンにまさるとも劣らな有毒の化学物質、その製造や使用が禁止されている、このPCB含有物が全国各地の米軍基地から、相模補給廠に運び込まれている、この事を2月に発表しました。
3月議会で、PCBの保管と撤去について、経過と本市の対応を聞きました。その時の回答では国を通じて米軍に、PCB含有物の保管の有無、保管している場合の種類、保管状況、搬出予定時期等、文書による照会をしているというものでした。
 実は私も直後に米軍に、アメリカの情報公開法、「Freedom of Information Act」(FOIA)のリクエストを行いまして、4月下旬に第一陣、先日6月18日には第二陣の文書も公開され、私の手元に届きました。分量がかなりになるので、現在分析中としか言えませんが、ざっと見てもかなりの量のPCB含有物が、沖縄や、三沢、横須賀など全国各地の米軍基地から運び込まれています。中には長崎県の対馬からというのもありました。この相模総合補給廠に保管されたPCB、3月4日の米軍準機関紙、スターズ&ストライプスは3月中には3分の2は国外に運び出す、と報道しました。また、さらにあらたに運び込まれる物もあるとも。 3ヵ月立ちました。私たちが見ている限り、搬出された様子はみられません。どうなっているんでしょうか。
PCBの保管と撤去、移動について、国からの回答、その後の対応も含め、PCB問題の経過と対応を伺います。
次に、相模総合補給廠での地雷の敷設訓練のその後です。  詳しい経過は省きますが、前議会で、市長は、米軍に訓練の中止などを文書要請した、とありました。この間の経過と、さらに、相模総合補給廠の訓練基地化、こうした地雷の敷設訓練などが、補給廠で行われることに危惧を抱いています。  大きな倉庫を利用しての、外からは見えないたくさんの訓練があるわけで、補給廠が恒常的な訓練基地化していくことの地ならしとすら感じます。  市長の見解を伺います。



 落下物事故・ニアミス問題その後

 次に、横田基地の輸送機による落下物訓練の事故について伺います。 5月5日のこの事故、一歩間違えば大事故につながる、そうした訓練を市街地の中にある横田基地で週2回も行っていること自体に、驚くわけですが、横田基地への米軍機のアプローチ、相模原市上空もその範囲に入ります。
今回の事故でも、横田基地で行われた地元市などに対する説明で、相模原市か町田市で誤って落下と相模原の名が出てきました。本市にとって横田基地の米軍機の訓練はよそごとではありません。今回の落下物事故・訓練を巡る、市長の対応、そして落下訓練そのものの概要について伺います。
次に、これも前回からの宿題ですが、同じ空での事故です。昨年8月19日の本市上空で起きた日航機と米軍機のニアミス、運輸省の事故調査報告が出されていないとの事で来ているわけで、先日、6月11日に発表になったと報道されています。その分析を含めニアミス事故について原因、及び対応を伺います。
 周辺事態法成立、基地行政への影響は 次に、基地問題の最後ですが、日米新ガイドラインと周辺事態安全確保法、国会での成立を受けての基地を抱える市長としての見解を伺います。そして、市長は本市への影響、どういった点を懸念しているのか。  さらに、昨年の議会質問で相模総合補給廠の跡地利用計画に着手すると回答、頂いたわけですが、この跡地利用計画案の策定などに周辺事態安全確保法、影響があると考えているのか、併せて伺います。



 ◆◇市長答弁(要旨)◇◆
 ◆PCB含有物の保管問題については、再三の要請にもかかわらず、現在まで国から文書回答はない。6月7日、在日米陸軍司令部(キャンプ座間)に改めて確認を求めたところ、規則に基づき管理している旨の回答(口頭)を得た。今後も書面の回答を働きかける。 なお、PCB含有物の搬出については回答がなく、確たる把握はできないが、「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分に関するバーゼル条約」による規制もあり、国外への搬出はなかなか困難であろうと思われる。
◆相模補給廠での地雷訓練については、米軍から3月15日付け(市に届いたのは3月29日−筆者注)で文書回答があり、「この訓練は全米軍兵士に義務づけられた航法(ママ)、救急処置などと併せて行われたこと、爆発可能な弾薬は一切使用されていないこと、新聞記事にあるようなオタワ条約による規制対象となる対人地雷の使用は一切無かったこと、米軍も地域社会の安全確保に関心を寄せていること」との内容だった(ニュース 265号掲載−編集者注)。市としては、米軍に対し、地雷訓練を含め市民に不安や危惧を与えるような訓練の自粛を改めて申し入れた。
◆砂袋の落下事故については、5月10日に横田基地に出向き、在日米軍横田基地第 374空輸団司令官に対し、事故原因の究明と再発防止を強く要請(文書)した。また、神奈川県基地関係県市連絡協議会としても、国に同様の口頭要請を行った。
◆日航機と米軍機のニアミスについては、運輸省が6月11日に発表した調査結果では「衝突又は接触の危険性があったとは判断されない」との結論だった。しかし、両機が相当程度接近したことは事実であり、当日の状況としては、上昇している米軍機に関し、横田管制空域から東京航空交通管制空域へと担当管制空域が変わったにも関わらず、その連絡が行われなかったこと、また、東京航空交通管制部も当該米軍機を把握しながら、横田管制所に確認しなかった事などが原因と承知している。このため再発防止策として、両管制の連絡調整を的確に行うことなどの他、この秋以降、現在専用電話で行われている連絡業務をコンピューターで自動的に対応できる新システムを導入すると聞いている。市としては、6月9日運輸省航空局に出向き、当日の状況説明を受けるとともに、再発防止について口頭で要請した。
◆「周辺事態安全確保法」第9条では、地方公共団体等の協力について規定されているが、現時点では協力の内容が明確ではないので、現在国において作成している法第9条の地方公共団体・民間の協力に関する解説書等の内容を確認し、本市にどの様な影響が想定されるかさらに検討したい。  この法律の制定は日米防衛協力の新指針の実効性を確保するためのものであり、このことが直ちに市内の基地の強化に結びつくものではないと考えている。よって、「周辺事態安全確保法」の成立が跡地利用計画案の策定に影響があるとは考えないが、今後とも、情報の収集に努め、基地の動向にも充分留意する必要がある。



課題は山積み−再質問で追及



 この後、2回の再質問を行った。とても採録はできないが、今後の課題を提起、改めて相模原市の対応を求めた。以下、その要旨を記しておく
 まずはPCB含有物の保管問題について。米国の情報公開で、私の手元にはすでに膨大な文書が届いている。96年、97年、98年、99年の3月まで、そのリストがあります。3月14日に公開請求を行ったものだが、第一陣が4月末に、第二陣が最近届いた。国は相模原市に対して、いまだに回答をよこさない。これはどういうことか。市長の立場で国にきちんとした申し入れをすべきではないか。
 補給廠にはPCB含有物が保管されているのは明らかなのだから、どういう保管状況にあるのか、それは安全な保管になっているのか。在日米陸軍司令官に直接確認したということだが、先日、基地内で行われたイベントの際にも、青いシートをかけただけで置かれたPCBに汚染されたトランスがあった。その前で市民がくつろいでいる様はゾッとする光景である(ニュース 266・267号参照−編集者注)。今後の対応も改めて聞きたい。また、補給廠からの撤去・搬出の件は、米軍準機関紙、「スターズ&ストライプス」(星条旗新聞)が3月中には3分の2は国外に運び出すと報道したことがまだ実施されていないといことなのか、その確認を求めたい。
 地雷敷設訓練も含めて、補給廠の訓練基地化は大きな問題。今後の課題として、見過ごせない課題である。

 横田基地関連の事件、事故は数多くある。落下物事故以外でも、相模原市の上空が、特に市の中央から北部にかけて横田に着陸する米軍機の着陸体制に入るルートだから、爆音の被害もある。これも含めて今後の課題としたい。 次にニアミス問題。運輸省の報告では、なぜ米軍機が6000メートルまで上昇したのかがわからない。羽田の管制と横田の管制が旨く連携できていなかっただけでは、まだまだ不安だ。一歩間違えれば大惨事になる。そうした危険を含んだ事故である。今後も安全確保のための努力を要望する。

 日米新ガイドライン、周辺事態安全確保法の本市への影響について。すでにマスコミでも報道され、先の衆議院のガイドライン特別委員会の議論の中でも明らかにされた、1994年に統幕4部が在日米軍から受けた対日支援要求の中に、こんな記述がある。
 『相模総合補給廠における給水、給電、ごみ等処理、汚水処理等に関する支援要求については、関係自治体等と事前に調整する必要がある』と。この点、国からは具体的に、本市に協議などがあったのか。また、指摘されている事項について補給廠では現在はどういう状況にあるのか聞きたい。



 再質問、再々質問への答弁の記録はまだ出来ていないので、尻切れとんぼのレポートとなった。ご容赦を。なお、質問と答弁の全文は『金子ときお市議会だより』の次号(9月発行)に掲載する。読みたい方は金子ときお(神奈川県 相模原市議会議員) kaneko@rimpeace.or.jp まで。


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