愛宕山地域開発事業に関連する
「岩国市内部協議文書」をめぐって

 9月25日午前、神奈川県の横須賀基地12号バ−スに原子力空母ジョ−ジ・ワシントンが10万トンを越える巨体を接岸させた。 政府が強引に推進する「米軍再編」、この企みがまた一歩前に動いた瞬間だ。
 港内を威圧するほど広い飛行甲板には、所狭しと艦載機が並ぶ。 この艦載機がいずれ、岩国基地をホ−ムベ−スに爆音を浴びせかけることになるとは…。
 改めて「米軍再編」への怒りが沸き上がる。

 原子力空母・ジョ−ジ・ワシントンに乗る艦載機59機が岩国基地へと言う日米政府の方針は、パイロットや整備要員など数千人の兵士や 家族が岩国へ移り住むことでもある。当然、彼らの居住地を確保しなければならない立場の防衛省には大きな課題が生じてきた。
 岩国での受け皿となる滑走路の増設工事は工期が2年延長、完成は2011年以降となった。しかし連動して進められた213fの 埋め立てで基地敷地は1.4倍に広がった。

 その埋立て用山土採取で進められた「愛宕山地域開発事業」が破綻、250億円余の負債が残ることになった。 基地滑走路移設事業という国家的プロジェクトに絡んで、山口県と岩国市の共同事業に振りかかった新たな災いである。
 事業開始から10年が過ぎ、埋立て土砂を搬出した愛宕山の開発地には広大な更地が残った。住宅地販売は中止され、不足した経費を回収 出来るメドも今は無い。来年から銀行への借入金返済が始まり、債務保証をしている山口県と岩国市にはその義務が生じることになる。

 中国新聞8月18日朝刊に、1面左肩8段のスク−プ記事が躍った。「岩国・愛宕山/民空見返りに米軍住宅」という見出し、 厚木からの空母艦載機部隊移転で必要となる米軍住宅用地に関連する記事だ。
開発で生じた負債整理で悩む地元に乗じ、もう一つの地元が要望する課題「軍民共用空空港」化をアメに開発跡地の米軍住宅化を求めて 来るという内容だ。

 報道された記事で明らかになった文書は本年4月、井原勝介前市長に競り勝ち就任した福田良彦市長や幹部が出席した協議記録など 3通・37ペ−ジの膨大な記録だった。
県や市はこれまで一貫して愛宕山を米軍住宅用地として求めたいとの防衛省からの意向はまだ無いと答えてきたが、この記録文書は 明確に愛宕山開発跡地を米軍住宅にすることを前提に岩国市へ7項目の意向確認を求めるなど具体的な内容だ。
岩国市当局はこの事態に驚愕し、「文書は存在するがいろいろな場面を考えた想定問答」として意思形成過程の内部文書だと非公開を貫いた。

 筆者も参加する「空母艦載機移転に反対し岩国の発展を願う議員有志の会(重岡邦昭代表・市議9名/県議2名で構成)」はその後 この内部文書の入手に成功した。そしてこの文書の扱いについて本物かどうかを独自判断、「市民に有益な情報である」と確信しメデイア を通じ広く市民へこれを公開した。

公開の反響は大きく、最初に反応したのは岩国市当局であった。自らは当然市民へ明らかにすべき文書の内容を閉じ込めておきながら、 副市長自らが有志の会へおもむき口頭で公開を抗議するという無様な醜態を見せた。
 市民にとって大切なことは単に内部文書が漏洩されたことでは無く、記録されたその内容が市民を騙し愛宕山を米軍住宅に変えようと している事実である。
報道関係者も文書の内容を大きく取り上げ、開催中の市議会一般質問では有志の会も重岡議員を先頭に多くの議員がこの問題を取り上げた。

 愛宕山開発地の米軍住宅化反対の取り組みは市民を欺く内部文書暴露と並行し、開発地周辺の住民で立ち上がった「愛宕山を守る会 (岡村寛代表)」や9つの市民運動団体が団結してサポ−トする「愛宕山を守る市民連絡協議会」と発展し大きく盛り上がっている。

 山口県は自らの失政は覆い隠しながら、米軍再編という国策に貢献することだけにその精力を注ぎ画策が続く。
 でも、こんな事で岩国は負けない。昨年12月、議員有志の会で短時間に呼びかけた「1万人集会」は1万1千人の市民が国の仕打ちに 「怒」のアピ−ルを大きく掲げた。
 まもなくその一周年、「愛宕山の米軍住宅化を絶対阻止する」と、「ワンモア1万人集会」の再開を期して新たな取組が燃えはじめた。

「やっぱり岩国は、負けない!」


(田村順玄・岩国市議)(写真は編集部、 08.9.25 撮影)


艦載機満載のジョージ・ワシントンが横須賀基地に接岸。左下は歓迎式会場の12号バース


赤や青のテントが張られ、赤白青の旗がたなびく横須賀基地12号バース。福田市長も歓迎式に出たという


'2008-10-4|HOME|