「愛宕山の新住宅市街地開発計画」の事業継続を求め、
中止を認めた国を相手に周辺住民が裁判を開始 その1


2009年7月31日、提訴のために広島地裁に入る原告団・弁護団
 

 山口県岩国市の愛宕山丘陵で10年前から進められてきた新住宅市街地開発法に基づく「愛宕山地域開発事業」の事業者である山口県住 宅供給公社が計画中止の決定をし、国の認可がなされたことを不当と周辺住民が国を被告に7月31日、「認可取消しの取消しを求める」 訴訟を提起した。

愛宕山地域開発事業は県と市が主導し、山口県住宅供給公社が平成10年2月に国の認可を受け開始した事業であるが、岩国基地の滑走路 拡張工事の埋立土砂供給を主目的に進めた事業でもある。完成すれば約6千人が住む理想の街が誕生、21世紀の地域の核となる様な街が 出現するとバラ色の夢を撒き散らした公共事業だった。

 事業開始から10年以上が過ぎ、景気は先細り・大幅な重要予測と事業の見直しが進められ、3年前に県・市は事業中止の決定と都市計 画法上の変更手続きを進めてきた。並行しこの事業の前提となる「新住宅市街地開発法」上の認可取消し申請を行い、今年2月国土交通省 中国地方整備局はこれを簡単に認めてしまった。

 あれよあれよと進行した事業変更の流れは周辺住民の了解は勿論、説明すらなされないまま一方的に進められ、今後の成り行きが心配さ れた。つまり、土砂採取で出現した60ヘクタ−ルの跡地を防衛省へ売り飛ばすという県知事の思惑が明らかになったからだ。それは跡地 を、米軍再編・空母艦載機部隊の米兵と家族の住宅に活用するという、とんでもない借金処理案だった。つまり、国の米軍再編を後押しす る事業変更案である。

 この事業に際し170人余の旧地権者からは21世紀へつながる理想の街を造るからと用地を提供させ、周辺住民へは連日の発破振動や 粉塵公害を撒き散らしながらも同様の理由で事業公害に我慢と協力を強いてきた。それを、基地の埋め立て用土砂供給の目的が果たされた 瞬間、いとも簡単に事業を中止し跡地を米軍住宅として防衛省へ売り飛ばすという県の企みは絶対に看過出来ない解決策だ。

そもそも「新住法」には新住宅市街地開発事業を廃止するという条文は無く、途中で事業を投げ出すことなど想定していない。山野の緑 をはぎ取り、荒れた土地を残して事業を放り出すという無責任な方針は都市計画法の理念を無視した蛮行である。
 しかし国は住宅供給公社が申請したこの事業の廃止をロクな審査も行わず簡単に認可、周辺住民は「これは法に違反している」と国を相 手に提訴する事になったのだ。

周辺に住む住民で作る「愛宕山を守る会」は昨年7月に組織を立ち上げ1年、11万署名を達成するなど精力的に活動を続けてきた。 まさに「愛宕山米軍住宅化阻止」のこの裁判こそがこうした運動の集大成、この裁判を大きなクサビに米軍再編・艦載機部隊の岩国への 移転そのものの阻止を目指し運動を盛り上げようと張り切っている。(その2に続く)

2009年8月 リムピ−ス岩国 田村 順玄 (岩国市議)



2009-8-26|HOME|