米軍再編「岩国に艦載機を移転」の本質を探る

 

2010年度(FY2010)海兵隊航空計画が明らかになった。
FY2009, FY2007版と比べて、艦載機の岩国移転に係る資金手当て、沖合い移設に係る基地施設整備の資金手当てが目立つ。
筆者が以前から指摘してきた、CVW−5(空母艦載機部隊)の格納庫の新設、MAG12(海兵隊航空部隊)とCVW5の司令部の場所 の統合などの計画が資金面でも表面化した。

FY2010版で初めて明らかになったのが航空機中間修理施設(AIMD:Aircraft Intermediate Maintenance Department) を岩国に造る 計画だ。AIMDはエンジンの交換や機体のオーバーホールも行う、大規模なメンテナンス組織だ。
ちなみに海兵隊では同様の機能を持つ組織をMALS(Marine Aviation Logistics Squadron)という。岩国に建設予定のAIMDは海軍の 組織であり、厚木から岩国に移転する艦載機のメンテナンスを担当すると見られる。
FY2009, FY2007版ともに、MILCON PLAN(軍事建設計画) に記述は無かったが、今回のFY2010版では projedt no. MS250-T として AIMD AVIATION MAINTENANCE FACILITY, 4千万ドル が載っている。
日本政府の施設改善計画、つまり「おもいやり予算」で作る計画となっている。

航空機を運用する場合に無くてはならないのが、そのメンテナンス組織だ。米軍再編の中で「厚木の艦載機が岩国に移転」が日米政府で 「合意」されたときに、メンテナンス機能は岩国に移るのかどうかが注目をあびた。
「空母艦載機が岩国飛行場へ移駐することによって、恐らく日常的な整備機能というのは岩国に移転するというふうに思います。だけれど も、おっしゃるように、定期整備それから本格的な修理については引き続いて厚木飛行場に残る部隊が実施するというふうに言われており ます。そういうふうになると思います。」(2006年6月15日、衆議院安全保障委員会における額賀防衛庁長官の発言より)
厚木と岩国でメンテナンス機能をダブルで備える、と言っているのだ。

その後、メンテナンスをどこでやるのか、という具体的な話は出てこなかった。今回の2010年度海兵隊航空計画の中の記述が、米軍側から 出た初めての動きだ。メンテナンス機能を岩国・厚木の双方で持つ、と米軍再編交渉の日本側主役の一人が国会で明言したことの具体化が 開始された。
メンテナンス機能を厚木・岩国の双方で維持するならば、現在厚木にある格納庫・駐機場、そして大島沖に広がる艦載機の訓練空域 (R116)なども維持したまま岩国に名目的に移動する、と考えるのが自然だ。

そもそも艦載機が一緒に行動する空母や随伴艦は横須賀にいる。空と海の統合された訓練を行おうとすれば、艦載機の発進基地は厚木にな らざるを得ない。
厚木基地司令官が語る、CQ(Carrier Quolification、空母着艦資格)取得訓練は厚木から離陸して行う、という話がその典型だ。 (06.2.8 朝日新聞神奈川版)
米軍再編の日米ロードマップの英語版で "the continued requirement for U.S. operations from Atsugi."と書かれているのは、米軍が 引き続き厚木を作戦基地として使用することの表明に他ならない。

そんな中で格納庫やAIMDなど現在厚木にある施設を岩国に作る計画はどんどん表面化してくる。艦載機の岩国移転の名目で、岩国に 厚木と同じ施設が造られていく。これで厚木の施設も米軍が引き続き使用すれば、どういう事態になるのだろうか。
今でも海兵隊機が配備され、事故の危険や騒音にさらされている岩国に、艦載機の危険性や騒音が拡大するだけだ。二重投資の後で米軍が 厚木と岩国の両方の基地を自由に使う状況は、艦載機の移転という言葉では語れない事態だ。

(2009.11 田村順玄・岩国市議)


2009-11-29|HOME|