米軍再編「岩国に艦載機を移転」の本質を探る (その2)

 

2010年度(FY2010)海兵隊航空計画の中で、岩国基地に航空機中間修理施設(AIMD:Aircraft Intermediate Maintenance Department) が造られることが明らかになった。 「艦載機の厚木から岩国への移転」に係る動きだ。
このAIMDの建設について、また厚木のAIMDとの関係について、岩国市は承知しているかどうか、12月の岩国市議会で市に質問した。回答は以下の通り。

『まず、AIMD(航空機中間修理施設)につきましては、厚木飛行場における施設は、現在、空母艦載機及び回転翼機の整備を行っていると承知しており、国からは、 「厚木飛行場から移駐する空母艦載機等の中間的な整備(航空機から取り外した複雑な部品のメンテナンスなど)を行うための施設であり、移駐する空母艦載機の中間的な 整備は全て岩国飛行場で行われることになる。』
『また、「厚木飛行場における中間的な整備を行う施設につきましては、引き続き、同飛行場に残る回転翼機の整備のために使用されると承知しているが、今後、整理・縮小 を含め、その取扱いについて米側と調整することとしている。」と聞いております。』

額賀防衛庁長官は国会で、阿部知子議員の質問に、「空母艦載機が岩国飛行場へ移駐することによって、恐らく日常的な整備機能というのは岩国に移転するというふうに思 います。だけれども、おっしゃるように、定期整備それから本格的な修理については引き続いて厚木飛行場に残る部隊が実施するというふうに言われております。そういう ふうになると思います。」(2006年6月15日、衆議院安全保障委員会)と答えている。
岩国市が国の説明として出した「移駐する空母艦載機の中間的な整備は全て岩国飛行場で行われることになる」とは明らかに矛盾する言い方だ。
額賀防衛庁長官がごまかしたのか、それとも岩国市がいい加減な聞き方をしたのだろうか。

もし、本当に「移駐する空母艦載機の中間的な整備は全て岩国飛行場で行われることになる」ということになれば、厚木基地の艦載機の修理格納庫は全て不要になるはずだ。 滑走路の西側に並ぶ大型の格納庫は全て、返還されなければならない。
もし、それが返還されなければ、艦載機が岩国に移駐する、ということ自体がまやかしで、厚木と岩国の双方を艦載機が使う体制となる。
そう疑うには根拠がある。

米軍再編の日米ロードマップでは、
4.厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐 のところで「厚木飛行場から行われる継続的な米軍の運用の所要を考慮しつつ、厚木飛行場において、海上自衛隊EP-3、 OP-3、UP-3飛行隊等の岩国飛行場からの移駐を受け入れるための必要な施設が整備される。」となっている。
英語版では "Necessary facilities will be developed at Atsugi Air Facility to accommodate Maritime SDF E/O/UP-3 squadrons and other aircraft from Iwakuni, taking into account the continued requirement for U.S. operations from Atsugi."
「考慮する」のは、「厚木基地からの米軍の作戦行動の必要性が継続している」ことだ。
この「作戦行動の必要性」というのが、在日米軍にフリーハンドを与える理由になってきた。真夜中にジェット機が爆音を響かせて離陸するのも、作戦行動上必要だ、の一言 で正当化している。

このロードマップ(特に英文の方)を読めば、米軍はこれまでの厚木の施設は返さずに、米軍の行動に邪魔にならないように、岩国から移駐する航空機部隊の施設を作れ、 と言っていることがわかる。
厚木を今後も使い続けることを、施設の面から宣言しているに等しい。

今後も継続して厚木を使い続ける、というのが「艦載機の厚木からの移転」の実態だ。これを艦載機の移転とはいえない。艦載機の基地が厚木と岩国に拡張する、というのが 正しい表現だ。

(2009.12 田村順玄・岩国市議)


沖合移設工事が進む岩国基地 (09.12.13 撮影)


2009-12-14|HOME|