岩国駅前飲食街に米軍の立ち入り禁止区域が

基地から離れた飲食街、目立つ「ウエルカム・アメリカン」の看板

 

米軍岩国基地の海兵隊が基地の中で発行する「週刊誌」に、最近興味ある記事が掲載された。岩国基地内には以前「トリ−テラ−」という名称の週刊誌があったが、数年前に廃刊し最近はA4版12ペ−ジの「イワクニ・アプロ−チ」という週刊誌がウエブ版で復活している。  その「イワクニ・アプロ−チ」1月15日号、1ペ−ジ目のトップに掲載されたのが今回紹介する「Establishment of off-limits areas 」という記事である。岩国駅前の飲食街のある場所を「立ち入り禁止区域」にしたというおふれだ。

指定した場所は基地の有る川下(かわしも)から3キロメ−トルも離れた岩国駅前の飲食街、週末の深夜など辺りは随分賑わう。今回指定された店は飲み屋ばかりの雑居ビルが集まる付近にあり、看板プレ−トから米兵を歓迎する表示が目立つ。
 店名と併せ「ウエルカム・アメリカン」「1ドリンク600円」といった表示、米軍が立入禁止にした店はどうやら風俗店という扱いのようだ。ならば米軍は独自にこれらの店を内定しチェックしたということだろうか、一体いつ?。

 厚木からの艦載機移転問題が出て、容認姿勢の岩国市長は受入れ条件としての「安心・安全対策」に躍起だ。岩国基地の司令官たちと合同で見せ掛けの該当パトロ−ルをこれまでに2回行った。パトロ−ルと言ってもメインの通りをマスコミ相手に大名行列を行ったに過ぎず、その効果など全く無い。その証が最近、基地近くの裏通りでは米兵が酔っぱらって民家の屋根に上がり捕まるなど事件が頻発している。

 基地司令官と市長の合同パトロ−ルは行われても、沖縄県と同様に山口県警は米軍との合同パトロ−ルは行わないことを名言している。基地から何キロも離れた岩国駅前まで米軍の管理下に置かれることは問題であり、岩国市民も米軍のMPに監視されることになるのだから当然の措置だ。

 こういう状況の中で決まった今回の米軍の立ち入り禁止措置は、いささか疑問が残る。 それは、該当する店の営業状況を米軍はどのようにチェックしたかということだ。米軍は隠密に、この地域の飲食店をチェックする行動をしたのだろうか。もしそうだとしたら米軍が市民生活の中まで勝手に入り込み、基地から遠いこのエリアも米軍の管理下にされたということになる。つまり、また基地が広がったことになるのだ。

 これは、安保条約や地位協定ではどの様に許されているのだろうか。愛宕山に米軍住宅を作り、フェンスに囲まれた基地の飛び地が出来ることだって市民は大いに危惧しているのに。今や市内には700人もの米兵家族が一軒家を借り上げ、住んでいることで基地の境界がどんどん広がっている現実に心配は広がっている。

 今回の立ち入り禁止措置はいかにも風俗店の取締りを装い、米軍の権限を市民の生活エリアにまで軍靴で入り込むという米軍側のさきがけの行動だ。看過出来ない行為である。  余談であるがかってベトナム戦争の頃、岩国市内に「ほびっと」という反戦喫茶が有った。昨年末この喫茶店の当時のマスタ−が店を紹介する本を出し、反響を呼んだ。反戦米兵が立ち寄る「ほびっと」はそこそこに繁盛していたがしばらくして、山口県警の執拗な干渉と岩国基地の米兵立ち入り禁止措置で客足が減り、まもなく閉店した。

 当時「ほびっと」に立ち寄る若者たちが滑走路北端の土手でタコ挙げをし、ファントムの飛行を止めたくだりなど面白い。警察は「ほびっと」と米兵の繋がりを絶たせようと躍起になり、「赤軍派」と「ほびっと」を無理やり結び付けた強制捜査を行った。「ほびっと」から市民を遠ざけるなどこの企みが効いただろう、経営は厳しくなり「ほびっと」はほどなく閉店した。

   今、民主党政府は2010年度予算で199億円の愛宕山開発用地買い上げ予算を計上し、愛宕山に厚木艦載機部隊の家族住宅を建設しようとしている。4千人の米兵と家族が団地住民が隣り合う愛宕山に住み着くことになれば、岩国には総数1万人近い米軍関係者が集まることになる。当然、犯罪や娯楽のために街に出てくる頻度は上がってくる。市内全域が米軍管理下となり、名実共に基地の街になってしまう。何としてもこうした動きは阻止して行かねばならない。

(田村順玄 岩国市議)(「おはよう愛宕山」363号 2010.2.07 たちばなし に加筆)


「イワクニ・アプロ−チ」で報じられた店の一つ。店頭に張られたホーネットの
写真には「F18よ、永遠なれ」など、米兵の書き込みも (10.2.6 撮影)


2010-2-14|HOME|