厳しい時こそ新たなフアィト!

「米軍再編」に抗する岩国のたたかいが今年も続く


 「やれるところからやってゆくということ。岩国の場合は色々と意見も頂き、与野党からもご意見を頂いたが、特に市長からも前向きに積極的に対応して頂いた。そういうことで(再編施策を)進めることが出来た。その結果が数字に現れてくる・・・」これは昨年末、12月24日に2011年度政府予算が閣議決定されたあとの取材会見で北澤防衛大臣が報道陣へ述べたコメントの記録である。

 民主党政権は沖縄・普天間基地の課題解決で鳩山総理の退陣など、具体的な結果を出せず県民総反発の辺野古居座りを決定したがその後の進展は見えてこない。こうした中で可能な場所から実績を固めていきたいという焦りの姿勢・矛先を岩国基地へ定めてきた。その帰結が、2011年度予算に見られる岩国基地再編関連予算の計上である。

 2011年度政府予算案に盛り込まれた岩国基地関連の内容は盛り沢山、その極めつけは私達が執拗な反対の意思を突きつけている「愛宕山開発跡地への米軍住宅建設計画」である。2010年度予算で跡地の買収費199億円を計上したが、未だ山口県や岩国市も国への売却を表明していない。国は地元容認派や岩国市長が物乞いのように米兵の厚生施設・スポーツ施設建設を要望したことを受け、昨年9月に活用方針を具体的に示した。高級将校向けに270戸の米軍住宅を建設することと併せ、野球場や陸上競技場などのスポーツ施設を配置するという懐柔策を提案してきたのだ。

 こうした背景の中で計上された岩国基地関連の2011年度予算案は厚木基地からの艦載機移駐に伴う施設整備に係わる予算として契約ベース720億円(歳出ベース363億円)という多額をまずしっかり確保したうえで、「11月の岩国市長からのご要望を踏まえ、安心・安全対策としての騒音対策に4億円、地域振興策として@ごみ処理施設の整備Aまちづくり支援事業(防災センター等)B楠中津線の整備C昭和町藤生線の整備に計5千万円、愛宕山用地に整備する家族住宅等の設計等に要する経費2億円」という内容が示された。

 岩国市や岩国基地の現状をローカルには理解されていない現状でこの計上内容を説明することはいささか困難だか、一言で言えば地元市長が要望する内容に大しては「痒い」ところに手が届くような草の根の予算でありまさに「可能な所から落としてゆく」という田舎村の予算査定を見るような実態が見えてくる。  ごみ処理施設の調査とは、現在買収予定地である愛宕山開発跡地のど真ん中に立地している市民の可燃ごみ焼却場が高級将校住宅の隣にあってはならないという必要から、まちつくり支援(防災センター)とは住宅立地後のテロなど不測の事態で基地への緊急避難用大型ヘリポート設置の対応、2本の道路整備はどちらも将校らが愛宕山から基地へ至るアクセスコースであるこのインフラ整備なのである。

 表面では安心・安全対策とうたいながら、その実は愛宕山に住み着こうとする米兵や家族の安全対策第一をおもんばかる岩国市長の配慮である。加えて、新たに爆音被害に対する住民対策だと名売った4億円の予算とは、こうした防音工事の受注を生業とする地元住宅業者への市長支持へのお返しである。  さらに政府は全国でことごとく連敗を続ける爆音裁判、岩国でも進行中の裁判で防音対策を一切手当て出来ていない現実を認め、92年3月以降建設の住宅に対してW値80以上の住民の家屋に防音工事を施す制度を認めた。この予算を4億円計上したのだ。

 しかしこうして2011年度予算に計上された予算案も、肝心の跡地買収が出来なければなにも出来ない。愛宕山では「愛宕山を守る市民連絡協議会」に結集する地元住民を中心に広範な人々が粘り強い反対の取り組みを継続している。

 2011年元旦、朝日がまぶしい愛宕神社前の公園では恒例の「1」が付く日の「愛宕山見守りの集い」が元気に実行された。寒風の中で公園に集った70名を越える人々は口々に新年の挨拶に続け新たな年も頑張ろうと熱い決意を語り合った。地元「愛宕山を守る会」は大釜で岩国名物の「茶がゆ」をつくり、「ぜんざい」をつくって振る舞った。「白菜の漬物」「沢庵」や「蒸かし芋」、まったく参加して楽しく陽気な笑顔が新年から飛び交った。

 昨年12月の市議会審議から、筆者が追求し明らかになった愛宕山開発跡地の多くの問題点。都市計画の「線引き」では「第1種中高層住居専用地域」と定められている当該用地では、岩国市長が防衛省に求め国側もこれに応えているスポーツ施設は今の都市計画の法規制では建設不可能である事実や、本来なら事業者である県住宅供給公社が責任を持って施工しなければいけない「インフラ整備」を岩国市や山口県が肩代わりして実行している事実。不当な便宜供与で市民の税金を投入しているのだ。

 愛宕山裁判の行方も本年2月13日の第6回口頭弁論は注目すべき段階、昨年8月の第4回口頭弁論で裁判所から指示された新住宅市街地開発事業の廃止理由の明記を未だ提出出来ず、1月21日を期限に再度提出を指示された国側答弁が出るからだ。現行法制度の中では、「新住事業」を廃止できる条文などなく、これまでもまったく法律的な裏付けを持たず廃止行為を続けてきた事業者やこれを認めた国土交通省の誤ちが明らかになる。

 沖縄で、世界一危険な普天間基地の課題を何一つ解決出来ず、その失策を何とか岩国基地の再編施策実施で補おうとする民主党政府の防衛施策を、2011年も我々は決して見逃さない。愛宕山をめぐる状況も決して安穏ではないが、厳しい時こそ大きなフアィトが沸いてくる。指摘した多くの問題点を一つづつ確実に打ち砕き、いまこそ岩国から反抗に転じていく。意気盛んな、新年の決意である。

 2011年正月に   ピースリンク広島・呉・岩国  田村 順玄(岩国市議)
写真は 2010.12.21 愛宕山見守りの集い (田村 撮影)


2011-1-11|HOME|