海上自衛隊岩国航空基地祭 米軍が市民の見学を拒否


基地祭当日、市民の入り口となった業者門と、誘導にあたる海自隊員

 恒例の海上自衛隊岩国航空基地祭が9月18日、米軍岩国基地内の海上自衛隊エリアで実施された。例年行われる5月5日の日米フレン ドシップデーが、今年は東日本大震災の影響で実施されなかったことと、8月に米軍が実施したミュージックフェステイバルが期待外れだ ったため、今回の市民の関心は今一歩盛り上がらなかった。

 しかし米軍再編計画の渦中の岩国基地を見たいと思い、東京からの2名の知人のご案内を兼ねて筆者も足を向けることにした。車の渋滞 を予測し、知人たちには岩国駅からの送迎バスに乗ってもらい、帰りの便宜を考え一人でマイカーで入場した。

 入口は業者門、縦列に従い入門手続きは海上自営隊の隊員が示すカードに名前と携帯電話番号を書き、免許証を見せる。直ぐにOKで フロントに青い用紙を提示して入門した。 米軍の憲兵隊は軍用犬などで危険物チェックをしていたが、私の並んだ列は殆どノーチェック だった。


管制塔も近くに見える来場者駐車場。ここで「センセイ、お引取りを」と要求された

 約5分、民空エリアや遊水池脇を走り管制塔脇のアンダーパスを潜ると海上自衛隊エリアに到着、指定の駐車場で車を下りる準備をし た。すると、旗を振っていた自衛官が近づき「恐れ入りますが上官が参りますのでそのまま車でお待ちください」の指示。15分近く待た され、「どうなんだ」と聞くと「まもなく参りますので」と返答の後、「上官」とかが来て「米軍からの指示で、ここからお引き取り頂き たい」と退出の要請が告げられた。

 理由を聞くが「米軍の指示」の一辺倒、「現場で案内を約束している人が居る」と伝え要請を拒んだ。対応したのは当日の駐車エリアを 担当している岡本久桂という2等海佐だった。東京からの2名に連絡を取り、かれらの合流後は3人であれこれ聞いた。知人はいずれもマ スコミ関係者で、その内の一人は防衛省にもめっぽう事情が通じ自衛隊側もタジタジ。

 現場には首席幕僚や広報室長、米軍の憲兵隊も集まり炎天下でスジの通らぬ退出要請に抗議が続いた。自衛隊側はこのエリアは米軍に使 わせてもらっている部分で、「米軍がダメったらダメなんだ」の一点張りでラチが開かない。おまけに「現場で合流した知人2名もマコミ なら当日の登録がされていない」ので同様に退出して、と言う始末。
 市民に開かれた当日の行事にこのような制限をかけることは絶対に許されない、と重ねて強く抗議した結果、知人たちは海上自衛隊の広 報がご案内をするということで決着した。 しかし、慇懃無礼に「田村先生はお引き取り願いたい」の一点張り。こんな奴らにセンセイな どと呼ばれたくないものだ。

 ともかく正式な見学拒否の理由を示せという執拗な要求に憲兵隊は、「必ず回答するが、週明けの火曜日まで待ってほしい」との答え で、退出を求め理由を示せない矛盾を露呈した。しかし周囲にいた人達もこの答えを聞いたことを確認し、退出することにした。時刻は 午前11時46分、入門から2時間以上経過していた。


海自の首席幕僚や広報室長、米軍憲兵隊も集まった「押し問答」の現場

 いつも20万人を超えるフレンド・シップデーに比べれば報道では3500人だったとか、市民の関心の低さが印象的だった今回の海自 基地祭だったが、翌日このことが新聞で大きく報道されると、多くの市民から憤慨の声が寄せられた。「米軍の本質を見た」「民空エリア だって米軍敷地、愛宕山に作ると言う運動施設も米軍エリア」「米軍の気にいらない市民は入れないのか」と米軍の理不尽な行為に市民の 怒りが集まった。

 それにしても本当に今回の行為は全て米軍の指示だったのだろうか? 業者門での手続きは全て自衛隊で、そこから駐車場までは5分余 り。その間に見学を許せない人物のチェックを米軍が判断する時間が有ったとは到底思えない。米軍と綿密な打ち合わせをするような態勢 が有ったのか、疑問である。一瞬通りすぎた業者門周辺には警察関係者も居たようで、こうした人々がすぐ連絡を取り合って5分後に「不 適」を決定したとすればりっぱなものだ。

 ところで、衆目の中で「火曜日までに理由を伝える」という約束した結果は、火曜日(20日)18時を過ぎてもまだ届かない。基地 報道部を通じ「必ず今日中に回答せよ」と強く要請しているが、恐らく何も言ってはこないだろう。
 きっと、米軍としても彼らの好ましくない人物をシャーシャーと中枢部まで入れてしまうという大きなミスをおかしてしまい、悔やんで いるに違いない。あれだけ大げさな警備をし、武装をし管理している軍隊だ。米軍のセキュリティーなんて、これくらいの物だということ をさらけ出してくれたバプニングである。それが判っただけでも「大きな成果」だ。

 そして、結局米軍にとっても自衛隊にとっても、私の見学を認めないという理由を公表できないということがはっきりした。回答を約束 した通訳やそばに居た自衛官など、公務員でありながらの彼らの無責任な態度は絶対に許せない。

 これまで、15年間続けてきた「軍隊にも秘密はあってはなりません!」「あなたは知っていますか?在日米軍の実態?」を掲げた 「リムピース」の活動。在日米軍の動きに迫るわれわれが、米軍や自衛隊にとって好ましくない存在であったことが、今回の事件で改めて 見えてきた。

リムピース共同代表(岩国市議)田村順玄 (2011.9.20記、写真は9.18撮影)


2011-9-20|HOME|