「岩国基地」最近の動きから

集団的自衛権行使容認に反対する、更なる行動の実践を!


グレーの機体が並ぶ岩国基地のKC130給油機ゾーン

 2014年7月15日、岩国基地に沖縄・普天間基地から1機の大型輸送機が着陸した。KC130空中給油機ハーキュリーズで、普天間基地に駐留している海兵隊部隊の所属機だ。KC130 空中給油機は今から18年前、世界一危険と言われてきた普天間基地の負担軽減を目的に、日米政府が合意し岩国基地へ移転させることになっていた。

 この日、岩国基地滑走路が見渡せる北端の漁港施設には愛宕山を守る市民連絡協議会の呼びかけに応じ約40人の市民が集まり、移転してくるKC130空中給油機の飛来抗議の行動を行った 。午前9時過ぎ、普天間基地でのセレモニー後最初のハーキュリーズが飛び立ったと情報が入った。それから2時間程度で岩国基地に到着するという時間経過の中で、集まった仲間は11時ころ から抗議のリレートークを行い岩国への移転を糾弾した。

 愛宕山を守る市民連絡協議会へは政党や団体の垣根を越え、岩国周辺の平和運動を実践している全ての仲間が協力しあって行動している。それぞれの代表が沖縄・辺野古新基地の建設を糾弾し、 愛宕山への米軍施設建設を反対し、厚木の艦載機岩国移転反対を訴えた。そして、この度のKC130空中給油機岩国配備がこの様な日米政府の軍事政策の推進に大きな役割を果たしていると言う ことをバクロした。

 時間を読んだ様に午前11時35分、南の空から1機目のKC130空中給油機ハーキュリーズが降りてきた。1番機に同乗してきた海兵第152空中給油輸送中隊司令ストーパー中佐はマス コミのインタビューに応え、今回の空中給油機岩国配備を現在岩国基地に駐留しているFA18ホーネットを近くでサポート出来ると言う価値を強調し、その上でKC130そのものも今後も 沖縄周辺での訓練や行動を継続すると沖縄の基地負担軽減に結びつかない事実を明らかにした。

 こうして岩国基地に配備が始まったKC130空中給油機であるが、当時岩国ではその扱いを巡って市民の心が大きく揺れ、色々ないきさつの結果当時の市長が受け入れを表明したことであっ た。それは、あくまで「普天間基地の全面返還」という大義名分が有ったからであり、それが前提の条件だった。しかしその後も普天間基地の返還は遅々として進まず、あげくの果てには辺野古 新基地の建設へと事態は大きく変わっていった。
その間に岩国基地へは空中給油機どころか厚木基地からの空母艦載機移転も加わり、滑走路移設事業完成後は大きな受け皿が完成、岩国基地が沖縄以上に基地機能を一極集中させた大軍事施設に 変わってしまった。

 この度、KC130空中給油機は当時の合意条件である12機より3機多い15機の部隊構成となり、輸送中隊司令の言う通り岩国移転後も普天間基地は勿論、沖縄周辺でも通常訓練を継続する ことを言明しこれが実行に移された。昨年末、今秋自らの選挙を控えた沖縄県知事はかねてからの「普天間の代替基地県外移転論」を裏切った形で「辺野古」への決定で政府を後押しした。
そうした流れをくみ取った上で、政府の防衛政策に追随する岩国市長や山口県知事は改めてKC130空中給油機の岩国移転を認めることを容認し今ここに移転が始まったのだ。

 今回KC130空中給油機は6月議会が終了するのを待って、7月から8月にかけ岩国基地へ870人の兵員・家族とともに移転してくる事となった。台風で一週間遅れたものの、こうして 7月15日、2機のKC130空中給油機が宜野湾市の関係者などに送られ岩国基地へ降り立ったのだが、この日から移転を開始すると言いながら実際には6月14日にウエストパック・エクスプ レスと言う高速船を岩国基地岸壁へ乗り付け大量の関連機材を船便輸送をしていた。
そのうえ、8月中と言いながら一週間後の7月21日にはすでに9機のKC130空中給油機が新設された専用格納庫前のエプロンにずらり駐機するというすばやい動きが見られた。

 岩国基地に移転して来た空中給油機は「スーパーハーキュリーズ」と呼ばれ、「ハーベスト・ホーク」と言う機銃装置も装填できる攻撃性も備えた危険な飛行機だ。何より、「空飛ぶガソリン スタンド」と言う異名があるくらいで、胴体に大量の航空燃料を積み空中給油を行う。事実前述した輸送中隊司令の発言にも有る様に、「FA18ホーネット部隊が所属する同じ基地で一体的に 運用出来る効果は大きい」という意味は、このハーベスト・ホークを付けた機体などにも作戦行動に関連するのかも知れない。
つまり、この飛行機が岩国基地に来る意味と基地機能がさらに向上することを証明している。

 KC130空中給油機部隊の沖縄からの移転が進む脇で、同じ岩国基地へはやはり普天間基地から「MV22オスプレイ」が連日飛来するようになった。筆者は6月議会の一般質問で、「恐らく 沖縄県知事は普天間基地負担軽減の具体策としてオスプレイの岩国への移転を提案してくるだろう」と質問した。つまり、その様な提案が国などから出た時には岩国市長としてどう言う態度を取る のかと問うたのだ。勿論市長は、「今以上の基地機能強化には応じられぬ」と答弁したが、政府や沖縄県知事の沖縄での基地負担打開策には今やはっきりした解決策など見当たらない。

 こうした時登場したのが、これから導入する計画の陸上自衛隊のオスプレイの配備基地に佐賀空港の活用案だ。さらに辺野古新基地建設が進まない場合の海兵隊部隊のオスプレイもこの基地を 利用して駐留させたいという案まで出してきた。こうした日本政府も防衛政策が、「新たな基地施設を全く新たな地域に建設し、活用していく」という構想でそのように簡単に実現できる筈が無 い。

今やこうした施策を実現させるためと称して、これまで無かった都道府県対象の交付金制度も打ち出してきた様だが、相変わらず「アメとムチ」の力ずくで日米政府の横暴を国民にごり押ししよう とする焦りが見え隠れする。
 いずれにしても、現在の在日米軍の軍事行動に岩国基地を抜きにした運用など到底考えられないというのが現実の姿だろう。

 岩国の様に米軍基地が存在する上に自衛隊の航空基地まで存在するここでは、今や日米軍隊の境や差が見えなくなり、集団的自衛権行使容認の閣議決定を根拠に平和憲法を無視した日米共同の 軍事行動が現実のこととなってきた。中国や北朝鮮を対象にした日米共同軍事行動が発動されることになる基地の街に住む私たちは、こうした政府の危険な動きを座して見守るだけで終わっては ならない。私たちはさらに声を大きく発して、この危険な動きに反対する姿勢を示さないといけない。

 さらに私たちは、岩国基地の埋め立て裁判や愛宕山米軍住宅建設反対する座込み行動や裁判、艦載機部隊やオスプレイの岩国基地での飛行差し止めを求めた爆音裁判なども果敢に取り組んでいる。 この様な諸行動を確実に実践し、更なる運動の攻勢を極めてゆきたいものである。
 アレコレ言っている間に、8月1日には一カ月前倒しして、KC130空中給油機部隊野15機がすべて移転完了と基地のホームページが伝えた。 

(田村順玄・岩国市議・RIMPEACE共同代表)


高速輸送艦が那覇から2回やってきた。2回目の停泊中(2014.7.24 読者 撮影)


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