2015年正月−新施設建設、一大軍事拠点作りが進む

米軍再編下の岩国基地を見る(上)

 五連の木造アーチ橋「錦帯橋」で有名な山口県岩国市、そのもう一つの顔は米海兵隊岩 国基地の存在だ。40年前から岩国市民に「悲願」とまで言わしめた基地移設事業で、岩 国基地は大きく変わりつつある。その面積は1.4倍に広がり、水深13メートルの巨大 岸壁を併設した新滑走路が完成したその広大な新基地には、ほとんど全ての新たな施設建 設が大工事ラッシュとなって進行している。

 岩国基地には米海兵隊の部隊が駐留し、36機のFA18ホーネット戦闘攻撃機や垂直 離着陸機ハリアーなどの部隊が連日濃密な飛行訓練を繰り返し市民の頭上に爆音を浴びせ かけている。そしてこの基地にはその米軍施設を間借りをした形で、海上自衛隊の航空機 部隊も同居し数多くの機種を組織した海上自衛隊有数の航空機部隊が此処にある。

 基地に隣接し背後にそびえる愛宕山の一角、岩国市尾津町の団地頂上に岩国基地を一望 できる場所がある。ここは新たに完成した滑走路は勿論、現在進められている基地内施設 の建設工事をほぼ見通すことが出来、「岩国版アンポの丘」と呼ぶ我々の基地監視スポッ トである。


 この場所からほぼ真っ正面でまず最初に目に付く場所が14年8月に普天間基地から完 全移転したKC130空中給油機のエプロンと格納庫である。真新しい格納庫とエプロン には岩国へ移転した空中給油機が常時7〜8機、出番を待つ如く駐機している。新年3 日、仲間が撮影した写真では15機中11機のKC130空中給油機を確認することが出 来た。

 さらに新たに建設された新滑走路の周辺には、マスタープランで明らかにされたこの基 地を使うそれぞれの部隊の関連施設が整然と配置され建設工事が進行している。これまで のこの基地の主・海兵隊部隊や海上自衛隊の航空機部隊、昨年夏に正式に移転してきた沖 縄/普天間からの空中給油機部隊、隣の一画には厚木から2017年に移転を予定してい る艦載機部隊の関連施設がエリアとして定められ、施設建設が進行しているのだ。

 格納庫や整備施設などは、それぞれの部隊がこれから岩国基地を拠点に作戦を展開する ために21世紀の最新鋭の機能を具備し、要塞化している現場がここにある。それらの施 設は大部分が日本側の思いやり予算で建設され、たとえば2014年度だけで903億円 という巨額の税金がその現場に投入されている。すべてが、艦載機の岩国への移駐という 2017年を目安に、完成目指しての大工事ラッシュが続いている。

 昨年夏移転を完了した空中給油機部隊に目を向けてみよう。今回岩国へ来た15機のK C130空中給油機は、今から18年前日米政府の合意で普天間基地の全面返還と引き換 えに岩国が移転受け入れを合意し今日に至っていた。しかしその合意条件はあくまで普天 間基地の全面返還が前提で、同居しているヘリコプター部隊の移転が必要となる。

 その代替施設建設がこれまで迷走し、さらに日本政府が負担をしてまで8千人の海兵隊 部隊をグアムへ移転させることなど遅々として進まず、10年以上足踏みし結局振出戻っ て今日の大迷走となったのが辺野古新基地建設・埋め立て案であった。年末の沖縄県知事 選挙は、正に日米政府の全く現実を読み取らない無策の中で進行した大愚作、そのツケが 民意の総結集として表現された結果であった。こうした背景が有りながらも、一方の空中 給油機だけはさっさと「先行移駐」という形で岩国基地にまず配備された。米軍の空中給 油機を岩国基地に配備する意味は大きく、これまでの同機が普天間で果たしてきた軍事的 価値をはるかに上回る効果がこれから岩国基地を新拠点として展開されることは、間違い なく予想出来る。

 2012年10月、日米の外務・防衛トップが確認した米軍再編の見直しはこれからの 岩国基地の使われ方を表現した決定的なものであった。それは大意、@普天間基地からK C130空中給油機を岩国基地に移駐させる。A今、岩国に居る海上自衛隊部隊を今後も 岩国基地の維持し続ける。B厚木基地から空母艦載機を2017年度頃までに岩国基地に 移転させる。C米国以外初となるF35Bステルス戦闘機を2017年、岩国基地への配 備を開始する。という内容であった。

 こうした中、昨年11月上旬米軍は「2015米海兵隊航空計画」を公表した。米海兵 隊航空計画は2012年まで毎年、センセーショナルな内容を公表しこの計画書に沿って 米海兵隊の動きがほぼ追認される形で進められてきた。

 例えば「オスプレイ」の日本配備のプロセスを見ても、早くからこの計画書で公表され て来たにも係わらず日本政府は一貫してその策略を公言せず、現実にはこの計画書の通り 岩国基地を経由して普天間基地に2年続けて岩国基地を経由して持ち込まれその内容を裏 付けた形となった。

 その「2015海兵隊航空計画」が3年ぶりに公表された事実は重たく、新たな岩国基 地の役割りがまた見えてきた。

 今回の「2015海兵隊航空計画」によれば、「F35Bステルス戦闘機」が2017 年から16機岩国基地に配備されるという表現に関心を持たなければならない。「F35 Bステルス戦闘機」は岩国基地にいるFA18ホーネント戦闘攻撃機の後継機として米軍 が未だ開発中の新鋭機であるが、これまでアメリカ以外で実践配備もされておらず多くの 不安なリスクを持った航空機である。オスプレイと同様、またこの岩国を選び始めて運用 する基地として取り上げるという米軍に憤りすら感じ不安が増幅する。

 これから沖縄で進行している辺野古新基地の施設が完成し、大岸壁が出来れば強襲揚陸 艦も接岸し、ハリアーと同様にこの「F35Bステルス戦闘機」も同機の垂直離着陸機能 を使い運用が可能となる。つまり、岩国基地と沖縄の基地の一体化が今以上に濃密となる 新たな要素の体現化だ。

 今や「オスプレイ」も岩国基地抜きの運用は考えられないような、岩国基地を使用した 動きも見逃せない。オスプレイは普天間基地に配備されて以来も、全国各地で訓練と称し た飛行訓練を続けているが、その場所への往復では殆ど必ず岩国基地を経由し、岩国基地 の機能を使用し中継基地として定着した。

 それは沖縄県民の感情を薄めるために、或いはオスプレイの何機かを恒常的に岩国基地 に配備するとか、そのような策が浮上してくることも十分予測出来、警戒を緩めることは 出来ない。(続)

田村 順玄 (リムピース共同代表・岩国市議)


2015-1-6|HOME|