田村順玄のたちばなし『救難飛行艇US−2が事故』


水没したUS−2(9905番)。2015.3.20 岩国基地で戸村良人撮影

 海上自衛隊岩国基地に配備されている飛行艇「US−2」が先月28日、足摺岬沖の海上で訓練中離水に失敗し水没する事故が起こった。US−2は日本が世界に誇る飛行艇で、2年前キャスタ ーの辛坊治郎氏を太平洋上で救出し有名になった。その性能が優秀だと言うことで、武器輸出3原則の歯止めを超えインドへ輸出する話が進んでいる。

▼海上自衛隊は早くから岩国基地に飛行艇を配備しており、前身のPS−1は8年間で6機が墜落や損傷事故を起こし30名が亡くなっている。その後哨戒から救難に任務を変えたUS−1が開発 されたが95年には豊後水道でまたまた墜落事故を起こし、この時も11名の犠牲者を生んでいる。
 今回事故を起こしたUS−2には19名の自衛官が乗っていたが、フロートが折れエンジンも一基が脱落、危うく全員が艇を脱出し幸い5名の軽傷で犠牲者を出すことは無かった。 しかしインドへの輸出という大命がある防衛省、その原因究明のため何としても回収をと焦っていたがその内機体は250mの海底に没してしまった。その尾翼を天に向け、海中に浮く写真が公表 された。

▼3月、岩国市は5年ぶりに「基地と岩国」という基地行政の紹介冊子を発行したが、この中でページを割いて岩国基地の海上自衛隊第31航空群でUS−1やUS−2が所属する第71航空隊の 働きを紹介している。つまりこの飛行機が優秀で、救難出動が1,000回を達成したというページである。一方1995年、豊後水道にUS−1が墜落し11名が亡くなった大事故については 1行も記録されていない。
岩国市はこの冊子をもって岩国基地の事故の記録を論じるバイブルにしているが、記録さえも適当に掲載し市民へ安全神話をばら蒔いている。しばらくすれば何も無かったように、又市民の頭の上 をUS−2が飛び続ける事だろう。

(田村順玄・岩国市議・RIMPEACE共同代表)(「おはよう愛宕山」489号 2015年5月3日号から)


2015-5-3|HOME|