愛宕山の米軍用施設 整備工事が進行。これまでに、37件220億円分を発注

270戸建設予定の住宅はまだごく一部だけ

 


消防署の奥に、緑の中に隠されたように広がる西地区の米軍住宅建設エリア(2016年1月 戸村 良人 撮影)

 愛宕山の防衛省施設建設工事が本格的に始まった。2017年に厚木から受け入れる空母艦載機部隊の兵士や家族のための住宅を、破綻した愛宕山開発跡地に建設する計画が具体的に動きはじめた。

 岩国基地へ移転する厚木艦載機部隊への居住施設は1,060戸が必要とされており、当初愛宕山へその全てが建設を予定していた。しかし地域住民を中心に、市民の反発が大きく国は計画を大きく変更せざるを得なくなり、基地内へ790戸、愛宕山への建設は270戸程度に留めると決定した。その上さらに岩国市民の怒りを抑えるため、市民の使用可能な運動施設を併設し、宣撫工作を強めると言う政策に出た。

 それでなくても2014年であった当初の移転計画が4年延ばされ2017年となり国の焦りは高まったが、それも明年に迫った今ようやく各種工事が本格的に始まった。こうした国の愛宕山活用状況を今回、防衛省の公表資料からまとめて見た。

 愛宕山の防衛省へ売却された用地は約75ヘクタール、2012年にこの用地を169億円で取得したがそもそも岩山、岩盤の土砂採取跡を防衛省は十億円余投入し二次造成し上物の建設を急いでいた。2015年度に入り一斉に各施設の入札が行われ、本年1月時点でその発注状況は37件約220億円が公表されており別表のとおりでその概要がわかった。

 建設されている場所は米軍住宅を建設する西地区(約30ヘクタール)と運動施設を建設する東地区(約15ヘクタール)に分けられ、東地区は市民の目に触れることが出来るが西地区は道路から隔絶され確認することも出来ない。先の説明会開催資料でも、米軍の意向ということでその配置計画さえ開示されていない。

 運動施設区域では野球場や陸上競技場、ソフトボール・テニス・バレーボール・サンドバレーコートや屋内交流施設など完成後は市民へ利用をさせるという触れ込みだ。

 肝心の米軍住宅は270戸を建設予定だが、現在までの発注数は99戸分。しかもまだ機械施設だけで、建築や土木工事は未発注だ。これら99戸分の工期が2017年5月末というのだから、本体完成はまだその先。残る171戸の発注は2016年度以降になるようだが、これまでのような工事の進行状況から見れば一度に現場で出来る工事は100戸ぐらいとしてあと2年くらいはかかる計算になる。つまり、2017年中に艦載機部隊が来ても住宅は整っていない計算になる。

 それにしても今回まとめて見た愛宕山への米軍施設建設は、その建設メニューから何でも有りの超デラックス。取得した用地費や宣撫工作の運動施設、わずか270戸のためだけに4億円近い消防施設やまた別に彼らだけのためのスポーツ施設や下水施設、IT機能を完備した通信施設など住宅支援施設が設備され投入総額は400億円余が予想される。

 これだけの税金がこの一角に投入される現実で、これを米軍住宅1戸当たりに換算すれば1億5千万円かかる計算になるとは驚きだ。政府がこれからも、岩国基地を国内の最重点基地として活用していこうとしている意気込みがよく判る愛宕山米軍施設建設の現状である。(「おはよう愛宕山」 507号記事に加筆)

田村 順玄 (リムピース共同代表・岩国市議) 


配置図 (愛宕山用地における施設整備計画について 中国四国防衛局 平成27年2月4日 より)


2016-2-9|HOME|