被爆者を冒とくする、8月6日「空母艦載機部隊」移転開始の通告

岩国市民はこれを許さず、これからも頑張り続ける

 6日の72回目原爆忌を前にした8月4日、中国四国防衛局から連絡があり先に岩国市長らが国に回答した「空母艦載機の移転容認」がいよいよ始まることが判った。
それも、最初に飛来する艦載機は「E2D早期警戒機5機」であるという。年明け早々、「E2D早期警戒機5機」は岩国基地へ先行移駐しており、勝手知ったる予定の行動だ。

8月4日、7年以上続いている「愛宕山米軍住宅反対」と市民の思いをも逆なでする262戸の米軍住宅が完成、関係者へ披露された。筆者も議員の立場でこの行事に参加し、初めて米 軍住宅をこの目で確認した。

厚木から艦載機が移転してくる、それにかかわる軍人の住宅が完成したことを確認させ、その続きに「艦載機の第一陣」が8月6日に岩国に降り立つという無神経な通告をするなど、 まさに占領国気分の8月の岩国である。

この防衛省からの連絡を受け,岩国市長が同日発したコメントがさらに許せない。「8月6日は広島原爆の日として、午前8時15分に黙とうを捧げることから、市においては、この時間 帯の航空機の飛行の自粛を要請しており、国からも米軍に配慮を求めるよう要請した」
・・・アメリカが投下した原爆、その記念日を単なる飛行を自粛して・・と形式的な要請で納めている。この日以降岩国基地で、米軍はしっかり飛んでくださいとエールを送っているよ うな岩国市長の心根は、絶対に許すことができない。

そんな、本州で唯一のアメリカ海兵隊基地が有る山口県岩国市。この基地は広島に隣接し、米海兵隊部隊が駐留する。加えてこの基地には沖縄・普天間基地から移転した空中給油機部隊 と海上自衛隊の航空部隊も同居し、2017年1月からは米軍が海外で始めて運用する「F35Bステルス戦闘機」も所属する。
その岩国基地へ今年、神奈川県の厚木基地から61機の空母艦載機部隊が移転し、沖縄・嘉手納基地を凌ぐ巨大基地が出来上がろうとしている。

 元よりこの基地は戦前、日本海軍の航空基地として建設され終戦後は連合軍がそのまま進駐、1962年から米軍の海兵隊基地として運用されている。その後拡大と強化を繰り返し、 市民に爆音や事故・事件など迷惑な存在を続けてきた。
何より、この間米国が起こしてきた幾多の紛争は朝鮮戦争からベトナム戦争、イラク戦争など重要な局面でいつも重要な役割を果たし、米軍の軍事行動を後押ししてきた。

 こうした中、2006年5月に決まった「米軍再編計画」で、沖縄・普天間基地の返還と神奈川県厚木基地の空母艦載機を岩国基地に移転させるというプランがここ11年間営々と進 められてきた。
当初岩国市民は大きな反対運動で盛り上がったが、これも次第に押さえ込まれ、計画は徐々に実行へと移されていった。政府は種々の圧力とお金で岩国市民を押さえつけ、再編施策を 着実に進めていったのだ。

岩国では古くから、「市民の悲願」というまくらことばまで付け「岩国基地沖合移設事業」が有り、この事業で沖合千mに新滑走路が完成、2010年5月には運用を開始した。新施設 には大岸壁や弾薬庫も新設され、その敷地は4割も広がりその上に新しい基地が作られた。

この10年、日本政府が投入した岩国基地への新たな施設建設費は一兆円近く、国民の税金がそそぎ込まれた。日米政府は沖縄で足踏みしている再編計画の諸施策を、当面は岩国基地 さえあればこれがしのげると、岩国基地を重要視した。そして巨額の国家予算が岩国基地に投入されてきた。
沖縄が整備される前に、当面は岩国基地で在日米軍の役割を果たそうと言う日米政府の思惑がそこにあった。

 岩国基地にはこれまで海兵隊の約60機の航空機が所在し、これに海上自衛隊航空機部隊が同居し、基地を展開してきた。それにこの度、「空母ロナルドレーガン」艦載機部隊61機 が加わるという再編施策が組み込まれ、これが現実の事となったのだ。所在する軍用機の数は120機を越え、巨大な基地になって再生する。

今、日米政府はこの基地さえ確保しておけば、たとえ沖縄での新基地建設が停滞したとしても、当面は在日米軍の役割は果たすことができ支障 なく在日米軍の運用を確保できると岩国基 地の活用に全力を投入する。

 2017年6月になって、市議会や山口県議会はこうした今の状況に留めとなる「艦載機受け入れ容認」の意思を決定する手続きを進めた。それぞれの自治体で相次ぎ容認決定・宣言、 7月11日には山口県知事・岩国市長や周辺2市の首長が揃って、内閣官房長官や外務・防衛両大臣を訪ね「空母艦載機の移駐容認」を正式に回答した。
併せて4項目の要望書を提出し、「極東最大級の基地となり」とその実態を認めた上で地域振興策のさらなる充実など、国の財政措置を求める要請行動を行った。

 そこには、市民の命と安心・安全対策をまず確保しなければならない行政のトップの認識はかけらも見られず、この災いを千載一遇のチャンスと結び付け新たな銭ネタを求める姿が あった。私たちの安全と安心を売りとばし、市長や県知事は、米軍基地の拡大強化をお金で引き換えにしようとしている。
何としてもこうした基地の現実を、全国の仲間に伝え広げて行かなければならない。

今その必要性を痛切に感じ、そのためにも、岩国市民はこれからも、しっかり頑張ってゆかなければと決意しているこの頃である。

(田村 順玄 岩国市議・リムピース共同代表)



2017-8-6|HOME|