普天間の空中給油機、近く爆撃機に変身


ハーベスト・ホークの構成要素。左はミサイルランチャー、右は探知装置(NAVAIRのニュースリリースより)

米海兵隊航空計画(2011会計年度)の中に、KC130J空中給油/輸送機を偵察機・爆撃機に変える計画が出ている。HARVEST HAWK と名 付けられたキットを装着することで、簡単にKC130Jを対地攻撃ミサイルのプラットフォームに変えるものだ。給油/輸送機から 爆撃機への変身システムだ。

この航空計画の中で、爆撃機変身システムを正規のMAW(Marine Air Wing)に3システムずつ合計9システム配備すると言っている。 1st MAW傘下の第152空中給油飛行隊(VMGR-152)にも3セット配備されることになる。
VMGR-152は普天間にいるKC130Jの飛行隊で、この計画では2013年4月に岩国に移駐することになっている。

「ハーベスト・ホークは、KC130Jへの取り付け・取り外しが簡単に出来る兵器システムだ。火器管制装置を機内の貨物室に置き、 目標探知センサーを左翼下の機外燃料タンクに取り付け、ヘルファイアー・ミサイル4発搭載のランチャーを左の空中給油ポッドの 場所にとりつける。

海軍航空システムコマンド(NAVAIR)は、ハーベスト・ホークに撃ちっぱなし能力を加えるために、スタンドオフ精密誘導弾のテス トと運用をめざして努力している。
30ミリ機関砲の搭載は延期され、後のシステム改良時に行われる。

目標探知センサー、ヘルファイアー、スタンドオフ精密誘導弾を組み合わせたハーベスト・ホークを搭載したKC130Jの、最初の実戦 配備は2010年夏までに行われる予定だ。」(2010.4.26 NAVAIRのニュースリリース『ハーベスト・ホークの第一段階のテストが 終了』より)

「米海兵隊のハーベスト・ホーク搭載の航空機に、近くノースロップ・グラマン製のスタンドオフ精密誘導爆弾バイパー・ストライクが 装備される。これは海兵隊の空中給油機・輸送機のKC130Jの能力を拡張するための努力の一環である」(2010.6.2 ノースロップ・ グラマンのニュースリリース『ノースロップ・グラマン製のバイパー・ストライクがKC130Jの武器に追加される』より)

ハーベスト・ホーク開発中の記述は、海兵隊航空計画2010会計年度版から登場した。2010会計年度版と2011会計年度版で記述にほとんど差 はなく、作戦可能と認定される予定が1年ずれているだけだが、開発計画が先送りされたのではない。実戦配備に向けたテストが進んでい ることは、上記NAVAIRやノースロップ・グラマンのニュースリリースからもわかる。

ジェット戦闘攻撃機からヘリコプターまでの海兵隊航空部隊に空中給油を行うのが本来の任務のKC130Jに、爆撃、偵察任務を付与し ようと海兵隊が考えたバックには、イラクとアフガニスタンでの海兵隊の戦闘行動がある。

「海兵隊航空部隊は、海兵隊地上部隊を支援するためのものだ。イラクの自由作戦と不朽の自由作戦の両方で、海兵隊地上部隊は火力と 諜報・調査・偵察(ISR)についてよりいっそうの支援を要請し続けてきた。
武装したKC130により、諜報・調査・偵察と火力の支援を継続的に行うことが出来る、と考えられた。」 (2009年、ケイト・S・オキ海兵隊少佐のレポート『KC130の役割の変更』の "Executive Summarry" より)

同レポートの本文には「特殊作戦軍の配下のAC130の数が少ないこと、(海兵隊)地上部隊の作戦の優先度が低いために、ガンシッ プの支援が受けられない」という記述もあった。察するに、海兵隊地上部隊の作戦支援に、海兵隊が自由に使える空からの火力が欲しい、 という切実な要求が海兵隊の空中給油機KC130Jにハーベスト・ホークを搭載するという「解決策」を生み出したようだ。

同レポートではまた、アフガニスタンにおける不朽の自由作戦の初期の6ヶ月、KC130の空中給油任務はほとんど無く、飛行回数の 95パーセントは夜間の兵站任務だったという。おそらくその後も輸送任務で飛ぶほうが空中給油任務で飛ぶ回数よりずっと多かった はずだ。
岩国に飛来したKC130が低空飛行ルートをたどる訓練をしているのも、空中給油任務ではなく輸送任務のための訓練だろう。

任務が新たに加われば、訓練形態も変わってくる。ハーベスト・ホークを搭載したKC130Jが普天間や岩国から訓練飛行に向かうと きに、どんな訓練を行うのだろうか。
キャンプ・ハンセンの都市型訓練施設での地上部隊の訓練にあわせて、沖縄本島上空で爆撃のシミュレートを行うのだろうか。鳥島や 久米島の実弾射爆撃場をKC130も使うことになるのだろうか。

アフガニスタンで使う目的で開発された爆撃キットを積んで訓練することは、在日米軍基地がアフガニスタンの戦争と密接にかかわって いることを改めて明示することになる。

(田村順玄・岩国市議、RIMPEACE編集部)

[参考資料]
FY2011 Marine Aviation Plan 16-Sep-10

NAVAL AIR SYSTEMS COMMAND News Release 26-Apr-10 Harvest HAWK completes phase one testing here

News Release Jun 2, 20100 Northrop Grumman's Viper Strike Being Added to KC-130J Arsenal

The Ever Changing Role of the KC-130  Major Keith S. Oki, USMC 2009年


普天間基地の駐機場に並ぶ海兵隊の給油機・輸送機KC130J(10.8.19 撮影)


2010-10-11|HOME|