岩国基地拡張工事

拡張後の完成予想図


沖合移設に伴う基地強化と普天間基地移転の恐れ

枕詞は「悲願」、沖合移設の歴史

 68年6月、板付基地所属ファントムの九州大学構内墜落事故を機に、岩国でも同機種が配備されていた事から移設運動が始まった。当初の市民の要求は他所への移転。しかしいつの間にか「悲願」は滑走路沖合移設にすりかえられ、以後28年間基地撤去運動を封じる手段として政治的に利用されてきた。


沖合移設の問題点

1)基地は1.4倍、跡地返還なし

 計画では基地沖215ヘクタールを埋め立て、広さは4割増になる。28年前、沖合移設の甘味は手前1kmの跡地返還だった。予定ではわずか0.8ヘクタールの道路用地のみ返還で、「悲願」の跡地返還とは程遠い。

2)地元に内緒の「大岸壁計画」

この度長さ360m、水深13mの岸壁建設計画が「発覚」。現在の水深約4m、千トンクラスの船しか着けられない港に不自由した米軍は、日本政府に港の建設を再三要求してきた。作戦行動のとれる日本最大級の港ができる事により、新たな艦船を有する部隊の移転、母港化が懸念される。270m位の岸壁でも320mの船が着く。別表の艦船が接岸可能となれば格段の機能強化になる。

横須賀、佐世保を母港にする主な米艦船     95.11.15中国新聞
艦名 満載時排水量(トン) 長さ(m) 幅(m) きっ水(m) 乗員(人)
第7艦隊旗艦ブルーリッジ

18372

194 32.9 8.8

821

巡洋艦モービルベイ

9466

172.8 16.8 9.5

358

フリゲート艦サッチ

4100

138.1 13.7 7.5

206

駆逐艦ファイフ

8040

171.7 16.8 8.8

319-339

空母インディペンデンス

80643

326.1 39.6 11.3

艦乗員  2900

航空関係 2500

強襲揚陸艦ベローウッド

39967

254 40.2 7.9

艦乗員 290

揚陸部隊1700

 岸壁問題は900ページにわたる埋立承認の書類にまぎれ込ませてあり、市職平和研代表の田村順玄氏が発見しなければ表に出なかった。しかも地元への説明は皆無で、国は沖へ出すので当然岸壁の水深は深くなる、13mの港は機能強化ではないと無責任な言い訳をしている。

3)滑走路はB級をにらんだレイアウト

 図は2400mの平行移設という計画だが、滑走路は2本になる増設だ。おまけに追加埋め立てで3200メートルの滑走路にできるレイアウトになっている。米軍はB級滑走路を要求しており将来B級滑走路ができると嘉手納クラスの滑走路に日本一の軍港がセットされたとてつもない基地になる。

4)その他の問題点

 83ヘクタールの干潟藻場の消失や工事による汚染は瀬戸内の生態系に多大な影響を与える。埋立に関して必要な、し尿処理場や排水樋門に関する岩国市の同意書が添付されていない。基地に飲み込まれる位置にあるし尿処理場の移転先も未定、と問題点、不備は多い。


普天間基地移転の恐れ

 沖合移設が夢物語だった頃は普天間移転説はただの噂だった。しかし基地の移設強化により外堀を埋められる形になり現実味を帯びてきた。在日4万7千人を減らさないのは日米で了解。返還返還とうるさい普天間を動かしたいが、移転先探しは至難。そんな時基地拡張をしている岩国は恰好のターゲットだ。 米国防総省は95年3月「施設の返還・統合が決まったら適切な場所に同様な施設を提供するのが日本政府の責任」との態度を明らかにした。日本政府も財政難の折り、米軍や地元政治家の要求だけで、気前よく1600億円もかかる事業を行うわけはない。返還へ向けますますうるさい沖縄、移転先を港をとの米軍の要求を解決する一石二鳥の方法として28年間要求があった岩国の沖合移設を利用してやろうと考えた。沖合移設実現にメドがついた途端、急に活発に動きだした普天間返還。岩国と全く無関係だと言い切れるだろうか。


終わりに

 事業費1600億円は全て税金。なぜ他国の軍隊を私たちの税金で強化する必要があるのか。沖合移設は岩国だけの問題ではない。税金のムダ使いでもあり国民全体の迷惑だ。沖縄は基地撤去に燃えている。沖縄が頑張るほど岩国への普天間移転の信憑性が増す複雑な状況の中、95年岩国市職は普天間のある宜野湾市職と交流、基地撤去へ向けともに闘おうと約束した。「沖縄は気の毒」なのではなく、地域のエゴを越え手をつなごうと。  滑走路を沖合1km先に増設したところで米兵の犯罪はなくならない。米軍機の事故や近県に迷惑をまき散らす低空飛行が減るわけでもない。28年前、政治家の作りだした「悲願」は、米軍の悲願(基地強化)に化けようとしている。岩国市民は「悲願」など最初から望んではいないのだ。

岩国市職員組合平和研究所(96.1)                      


97-4-27

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