岩国基地の密約明るみに

発覚した、基地拡張に絡む「密約」と「合意覚書」

岩国基地滑走路の沖合移設事業の本格的なゴーサインを国が出したのは、92年8月のことだった。すでに運動を始めて20年、調査、調査で結論の出ない現実、空母艦載機のすさまじいNLP(夜間着艦訓練)に業を煮やし、保守系組織までもが「基地撤去」を打ち出そうかという時期であった。
この度、その頃に国と県・市、防衛施設庁の幹部が取り決めた会議の議事録が、報道機関によって明らかにされた。それは、7項目の国側からの照会に県と市が答えた、将来の滑走路拡張工事が完了した後の岩国基地の運用に係わる取り決めであった。 埋め立て手続きや許認可、漁業補償、埋め立て土砂の調達、などの具体的な課題や岩国市が恒久的な基地存続を願っていない「米軍撤退後は自衛隊も撤退する」と言う国との約束も反故にするという大変な取り決めが、その「密約」の中には表現されていた。さらに許されないのは、県や市が明確に反対の意思表明をしている「NLP」までもが新滑走路完成後は「実施を容認する」という裏切りの約束として盛り込まれていていたのである。
県民・市民を愚弄する「密約」の存在は、岩国基地滑走路移設事業の本質が何であったのか、私たちが常に言ってきた、「基地の拡張、機能強化」とゼネコンや政治家の思惑によって進められた政策であることが、白日のもとに明らかになった。
この「密約」締結からさらに1カ月半後、当時の県知事や市長、防衛施設庁の高官や広島防衛施設局長の4者で結んだ「合意覚書」が存在していた事を、知事と市長が明らかにした。そこでは、密約でさらに(かっこがき)となっていたNLPの記述を外し、他はすべて「密約」と同じ内容で約束した重要な取り決めであった。

「密約」と「覚書」に見る、「岩国基地滑走路移設事業」の本質

97年6月、本格的に工事を着工した「岩国基地滑走路移設事業」は、まさに市民をすべて騙して本当の事業の目的を打ち消し、国(防衛庁)の防衛政策の思惑と事業によって金儲けを企む組織の思惑が一致した行為である事だった。
覚書に見る各項目は、山口県や零細な予算規模の上数々の便宜供与を押しつけられた岩国市にとって、財政的にも破綻に追い込まれるほどの重たい現実である。
たとえば、埋め立てに使用する土砂は県と市が事業主体となった住宅開発で供給する。「愛宕山地域開発事業」という住宅地開発を850億円の予算で進行中である。 バブルが弾けた後の巨大開発のツケは、地元自治体に重くのしかかる。
地先漁業権者に対する対策は、「水産振興」という名目で膨大な条件工事を県と市が分担して受持ち、数十億円という事業費投入が延々と続く。
こうして建設されている新基地の完成後の運用は、水深13mの巨大岸壁が新設され、基地用地は1.4倍に広がり、2本の滑走路が誕生する。まさに、本土の一大軍事拠点基地が出来上がるわけである。市民の願いによって基地を拡張するという現実が、如何に非現実的でバカな事か、岩国の「密約事件」で明らかになったのだ。

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'2001-7-21|HOME|