岩国基地における主要航空機の飛行状況(97.4〜98.3)について

1998年5月26日

岩国市職平和研究所 田村順玄


はじめに

 岩国基地を舞台に、年間を通じて離陸する航空機のその実態をつぶさに監視し、分析・見解を加えた記録を公表して3年になる。1996年4月22日及び5月28日に1995年度中の飛行実態を公表した。昨年6月6日、1996年度の記録を公表、昨年秋12月4日には「米韓合同演習・フォールイーグル」と岩国基地の関係を分析して公表、そして本年2月22日には1997年1〜12月の記録を速報してこの間のめまぐるしい岩国基地の動きを分析した。

 このたび、1997年度中の離陸実態がまとまったので、これまで3年間の比較を試みながら、「低空飛行訓練の中止」「再開」といった憶測や、ガイドライン見直し後の岩国基地の役割などについて考えてみたい。このデーターがそのような検討の一助となれば幸いである。


  1. 配付資料の概要
  2. 飛行回数の3年間の比較
  3. イタリア・カバラーゼ「ゴンドラ墜落事故」と低空飛行中止の動き
  4. おわりに・・・


1.配付資料の概要

  1. 97年度/機種別・月別・年間離陸機数一覧表 (離陸総数9,083回)
  2. 97年度/機種別・月別・年間離陸機数グラフ
  3. 97年度/海兵隊FA18ホーネットの飛行記録とグラフ(飛行回数4,683回)
  4. 97年度/海兵隊AV8Bハリアーの飛行記録とグラフ(飛行回数365回)
  5. 97年度/海兵隊EA6Bプラウラーの飛行記録とグラフ(飛行回数157回)
  6. 97年度/普天間基地所属KC130ハーキュリーズの飛行記録とグラフ(飛行回数216回)
  7. 97年度/海兵隊機・岩国発・低空飛行回数ルート別(飛行回数193回)
  8. 97年度/海兵隊機・岩国発・ 低空飛行回数機種別(FA18=147回、EA6B=10回、AV8B=36回)


2.飛行回数の3年間の比較

(1)総飛行回数

総 数 対前年比
1995年度

9,255回

1996年度

9,799回

+544回

1997年度

9,083回

−716回

(2)低空飛行の比較

総数 ブラウン オレンジ イエロー パープル ブルー ピンク
1995年度 404回 69 134 80 101 16 4
1996年度 386回 61 114 91 97 12 11
1997年度 193回 55 51 21 63 1 0

(3)海兵隊 FA18ホーネットの行き先の分析

総数 R134 567 LIMA 韓国 低空 沖縄 その他
1995年度 3643回 850 576 566 737 175 337 402
1996年度 4042回 821 906 694 670 249 305 397
1997年度 4683回 852 957 1401 701 147 244 381

(4)低空飛行の分析

恒常的に岩国基地をホームベースとして訓練を続けているFA18ホーネット の低空飛行実施状況を月別に分析して見ると、昨年暮れ頃から極端に回数が減少していることが特徴的である。

特に、中国・四国地方に影響の大きいオレンジルートとブラウンルートは11月頃からパッタリと消え、沖縄との基地間移動にかこつけたパープルルートのみが確認される。

(5)レンジ型訓練の増大

AV8Bハリアーが、365回の飛行回数の内、その丁度半数に当たる183回、「567エリア」に飛んでいる。これは、他の機種とは違った動きである。また、その他の機種も総合して、「567エリア」や「リマ空域」といったレンジへの飛行が大幅に増えている。

岩国の海兵隊機及び普天間のKC130の各エリアと韓国への飛行回数の比較

総数 R134 567 LIMA 韓国
1995年度 2789回 1046 819 644 924 (EA6Bの数字を含まず)
1996年度 3749回 915 1140 838 856
1997年度 4370回 922 1175 1491 782

(6)レンジ型での訓練で考えられること

(7)「567エリア」について

 岩国近辺で唯一、陸上に設定された訓練空域であり、対地攻撃訓練などを行っているものと思われる。このエリアの下で窓ガラスが破れるなどの被害が出ているのもそのためであろう。なお、「567エリア」というのは米軍の呼び方で、運輸省の正式な名称は「空自訓練空域7(JDA−7)」という。

 この空域は、中国山地の低空飛行ルート「ブラウンルート」に接しており、ここでの訓練を行った後、ブラウンルートへ向かう例もあるとよそうされ、最近の広島県での目撃情報もこの例ではないか。

(8)「R109」「LIMA空域」について

 日米共同演習などが行われると、急に増える空域である。この空域からは沖縄へ飛ぶ場合が多い。最近、高知県でLIMA空域などの撤廃を求める運動が広がってきた。岩国基地・海上自衛隊の「P3Cオライオン」や標的を曳航する訓練支援機「U−36A」など、この空域への飛行回数の多さが特別に目立つ。


3.イタリア・カバラーゼ「ゴンドラ墜落事故」と低空飛行中止の動き

*5月5日、岩国基地の開放デーにおいて、岩国基地所属のFA18ホーネットのパイロットが取材のマスコミに対して、「イタリアの事故以来、命令により低空飛行は実施していない」とコメントしたと報道された。しかし、その後のマスコミの質問状に対して、横田の司令部は「一時低空飛行は中止していたが、すでに再開している」との回答があった。

 今回の監視記録によれば、岩国基地所属海兵隊機の低空飛行訓練は、イタリア事故以前から大幅に減少しており、特にオレンジルートは12月の2回以降は記録されておらず、ブラウンルートは11月から全く実施されていなかった。

 さらに、イタリア事故以後は2月6日のパープルルートでFA18が2機づつ2回(4機)記録されているだけである。

 その後の記録はまだ公表できる段階ではないが、4月9日にパーブルルートにFA18が1回2機とんでいることが確認されている。その他、ブラウンルートなどでも目撃記録が伝わっており、横田司令部の発表のとおり再開されたのかも知れない。いずれにしても、海兵隊だけすべてのの部隊で低空飛行の再検討を行ったのであろうが

、5月5日の時点で命令する者と、現場で実行する者の意思の疎通がはっきりせず、ちがったコメントが流れるという事は恐ろしいことである。

 広島県比婆郡東城町では、5月20日午前中、ジェット機の爆音を聞いたという住民情報があっとということで、今後の分析を急ぐが、低空飛行の再開について米軍の方針がどう変化したかは、6月上旬に帰ってくる空母艦載機の飛行の状況も見なければはっきりしたことは言えない。


4.おわりに・・・

 今回の監視記録公表に当たって、ここ3年間の岩国基地の航空機の飛行実態を振り返って言えることは、

(1)岩国基地は相変わらず、アメリカ海兵隊の最も重要な海外拠点として位置付けられており、その任務に大きな変化はないということである。

(2)低空飛行がここ数年で大きく減少してきたが、それは私たち「リムピース」の事実を裏付ける資料による告発と、住民世論の高まりに押され、幾らか変化したということも考えられ、運動の成果と言える。

(3)米軍にとっての低空飛行訓練に変わる作戦の変化は、数字のなかであきらかに「レンジ型訓練」への移行と読むことができ、その他、数字的な説明はつかないが、韓国国内からの米軍基地での訓練展開、(低空飛行?)も今後の調査の対象として明らかにしてゆかなければならないだろう。


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