木更津オスプレイは低空飛行訓練が出来ない(4)

低空飛行訓練場では、安全に降りられないオスプレイ

ここで、オスプレイの両エンジン出力喪失時、オートローテーション及び滑空により降下した時に、着地地点でどんなことが起こるか、防衛省の資料に基づき検証してみよう。 

防衛省が、木更津市から出た質問(照会)に10月31日付けで答えた文書の 10ページ目は「オスプレイのオートローテーション」と題した図だ。「オスプレイも(巷のうわさと違って)オートローテーションができますよ」とでも言いたげな図だ。これはオートローテー ションではなくて滑空の図だ、という議論は、この図が公表されたときからあった。

この図は実は普天間基地に米軍オスプレイが配備された2012年9月に、防衛省が「オスプレイはオートローテーション機能を持っている」と言って、麗々しくだしてきたパンフレット 「MV-22オスプレイ オートローテーションについて」の中の図 だ。表紙のほかに5ページのパンフで、その2ページ目の図が7年後に防衛省が木更津市に示した図と数値まで全く同じだ。


7年前のオスプレイ普天間配備時に防衛省が出したパンフの3ページ

2012年に出したパンフでは、この図の次のページに、シミュレータの詳しい数字が出ている。そのデータによると、「オートローテーション」で降りてきたオスプレイが着地した時のスピード は時速約130キロだった。


7年前のオスプレイ普天間配備時に防衛省が出したパンフの4ページ

へりがオートローテーションで降りるとき、垂直に近い角度で着地する。仮に河川敷やグラウンドなどに降りたとしても、ローターの回転域より外なら「地上の人または物件に危険を及ぼすこと」は少ないだろう。 でもオスプレイの場合は着陸した時に時速130キロというスピードで地上を突っ走る。自重16トンのオスプレイが130キロで走るのだ。満載の10トンダンプが急に目の前に130キロのスピードで現れたら、近くにいる人たちは大恐慌をきたす。

そんなスピードで着地しても安全なのは、防衛省言うところの「オートローテーション」の着地先が滑走路の場合だけだ。逆に言えば、滑走路の無いところには、オスプレイは「オートローテーション」で安全に降りることはできない。

最低安全高度の話は、陸自オスプレイの南房総での低空飛行訓練の話から出てきた。
木更津市の質問(問13)に対して防衛省は房総低空域飛行訓練場などでオスプレイも訓練を行うことを想定している、と答えている。(10月31日付け防衛省回答文書の15ページ)
房総低空域飛行訓練場の全体図は同文書の17ページに出ている。訓練場の全域に滑走路はない。また木更津基地からは最短でも10キロ以上離れている。訓練場に一番近い滑走路は訓練場の南西 端から5キロの海自館山基地だ。低空域飛行訓練場の中で海面高度1000メートルで飛行しても、滑空率が1:2のオスプレイでは届かない。ましてや元清澄山の山麓を高度300メートルで 低空飛行していたら、滑走路ははるかかなたであり、防衛省が言うところのオートローテーションでは、絶対に安全な着陸はできない。

南房総に設定されている低空域飛行訓練場の中を飛ぶオスプレイの最低安全高度は、仮に存在してもとてつもなく高い高度になる。それはオスプレイの上昇限度を超えるだろう。
だから陸自オスプレイは房総低空域飛行訓練場で低空飛行訓練はできない。(続く)

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


2020-1-9|HOME|