木更津オスプレイは低空飛行訓練が出来ない(6)

木更津基地周辺飛行も可能な範囲はごくわずか

このシリーズで、木更津(臨時)配備のオスプレイは房総半島南部の低空飛行訓練空域で、低空飛行訓練が出来ないことを示してきた。だが、問題は低空域飛行訓練場に限定されたものではない。
木更津基地周辺、木更津市域の大部分でも、オスプレイの最低安全高度はこれまでの木更津基地のヘリの運用高度を超える。

「オスプレイの飛行経路は、CH−47などの木更津駐屯地に現在配備している航空機と同様になると考えています」(陸上自衛隊V−22オスプレイの暫定配備に係る考え方について 令和元 (2019)年5月 防衛省・自衛隊)

「CH−47などの木更津駐屯地に現在配備している航空機」と同様に、木更津基地の周回ルートを使う訓練飛行や、千葉県中南部や三浦半島の上空に設定されている「空中操作空域」での訓練飛 行も有視界飛行であり、この最低安全高度以上で飛ばなければならない。

「有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの (以下、略)」(航空法施行規則第百七十四条)

オスプレイが飛行中動力装置が停止した場合について防衛省は、オスプレイの安全性評価基準として「固定翼モードによる滑空又はオートローテーションにより、安定降下ができること」を例示し ている。(木更津市に対する回答書の8ページより)
オスプレイが仮に安定降下してきたとして、降りてみたら木更津駅前通りを時速130キロで突っ走っていた、などということが起きないように、「地上又は水上の人または物件に危険を及ぼすこ となく着陸できる高度」(最低安全高度)を防衛省のデータに従って計算してみよう。

オスプレイのオートローテーション(木更津市に対する回答書の8ページ)の図に小さく記されている滑空率およそ2:1を使う。滑空率とは「前進した水平距離とその間に沈降した高度差の比」 だから、オスプレイの場合は高度100メーターから降下(滑空)をはじめれば地上に着くまでに200メートル進むことになる。


木更津飛行場場周経路図に、基地のフィールドから1kmの黒線を書き加えた

木更津基地の滑走路に到着する、というのが本来の安全要件だが、ここでは大幅に緩和して木更津基地の敷地内に到達すれば「安全な降下」とみなすことにしよう。
例えば木更津基地のフェンスから1qの地点から滑空を開始して木更津基地に到達するには、滑空開始時に500メートルの高度を確保していなければならない。木更津基地の場周経路の高さが西 側で270メートル、東側で420メートルだから、有視界飛行で場周経路付近で訓練飛行するオスプレイは、航空法上飛行してはいけない場所を飛ぶことになる。

上空に羽田空港に着陸する大型民間機の経路が設定されているため、木更津上空を飛ぶ自衛隊機の高度は低く抑えられている。このため、オスプレイの最低安全高度以上の高さで飛べるのは、木更 津基地のフェンスの近くまでだ。海上に設定されている木更津基地西側場周経路をオスプレイが飛んで「動力装置が停止した」場合は、基地に戻ろうとするオスプレイは時速130キロで海苔ひび に突っ込むか、最悪の場合潮干狩りの人々の中に突っ込むことさえありうる。

「オスプレイの飛行経路は、CH−47などの木更津駐屯地に現在配備している航空機と同様になると考えています」と防衛省は言っているが、実際には同様どころか極限された有視界飛行しかで きない。

現行の木更津基地配備のへりは、オートローテーションで垂直に近い形で降りることができる。オスプレイもオートローテーションが可能だと防衛省は言うけれど、オスプレイのそれは着陸時の速 度が時速130キロメートルというしろものだ。安全に降りるには滑走路に降りるしかないし、その滑走路まで持ちこたえるのも木更津の自衛隊の訓練経路を飛んでいたのでは無理だ、ということ が米軍オスプレイの普天間配備の際に防衛省が(わざわざ)出してきたデータから計算できる。

なぜこんな航空機を自衛隊に導入することになったのだろうか。(続く)

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


2020-1-11|HOME|