三沢のF16の任務は変わった−−星条旗新聞より


6月27日、28日の2日連続で、星条旗新聞に三沢基地のF16部隊の作戦部長に
取材した記事が載った。F16の騒音に対する苦情が少なくなったのは、基地の使命の
変化で低空飛行訓練が少なくなったことと、騒音軽減に向けたたゆまぬ努力のせいだ、
というのがこの記事の主要な論点だ。
本当にそうなのかどうかは今後の検証に待とう。三沢の伊藤裕希さんが調べている
三沢基地の飛行記録を見れば「基地機能の変化」なるものは少し見えてくるかもしれない。
とりあえず、興味深い部分だけ抄訳してみた。
90年代の基地機能の変化で、わが部隊のパイロットの低空飛行が目撃されることはまれとなった。
第13、第14戦闘飛行隊の使命の変化で、低空飛行訓練の必要性が少なくなった。
1995年以前の三沢基地のパイロットたちの主要な任務は爆撃目標に爆弾を投下することだった。
「われわれの主要な任務は、空対空戦闘と、低空飛行を行ったあとの爆撃だった」
三沢のパイロットたちは、以前と同じ年間8000ソーティーの飛行を行っている。80年代には、
立ち向かわねばならない脅威のために、そのうち50パーセントが低空飛行だった。しかし、
この5年間の三沢のパイロットの訓練は、敵防空網制圧(SEAD)訓練のために、高度1万から2万5千
フィートの飛行が中心だ。F16部隊の飛行訓練の高度が高くなったために、低空飛行の割合は
8000ソーティーのうちの6.5%になった。
高い高度を飛ぶことで、パイロットは地上からの対空砲火にさらされない。これは湾岸戦争で得られた
教訓だ。
しかし、任務遂行中の天候によっては、パイロットはより低い高度を飛ぶ必要が出てくる。また、
米軍に敵対する国の中には、パイロットに低空飛行を強いるような防御兵器を備えているところもある。
三沢のパイロットは低空飛行の技術を磨かねばならない。
三沢の部隊の訓練空域は、三沢の南200マイルから、北は北海道の北端(三沢の北300マイル)
におよぶ。訓練のうちの75%は日本海上空で行われる。空港、人口密集地域、原発の上空や六ヶ所村
のような原発燃料再処理工場の上空などが、飛行禁止区域に決められている。また、85年以降に
F16が墜落した地点や、青森、秋田両県にまたがる野性生物保護地域、それに噴火が続く有珠山から
5マイル以内も飛行禁止になっている。
パイロットが低空飛行をする場合、騒音をできるだけ少なくするために、一定のコースを飛ばずに
ランダムなコースをとる。低空飛行する戦闘機が通過したルートの下で、2年間ジェット機の音を
聞かない、ということもありうる。別の機体が同じ地域を飛ぶことはきわめて稀だ。
また、騒音低下のための別のルールも明らかにされた。もしF16のパイロットが山岳地帯を低空で
飛行しているときに、眼下に町が見えたら、1000フィートまで上昇してエンジンを絞らなければ
ならない。
北海道全域に点在するの牧場主に、F16の低空飛行による騒音が及ばない様な空域を探すことにした。
昨年行った検討の結果、訓練空域を北海道の南西部の半島部分、函館市の西方の地域に切り替えた。
この地域は低空飛行に対する制限がもっとも少ない。地形は険しく人口も少ない。天候さえ問題なければ、
われわれのパイロットたちにとっていい訓練空域だ。
しかし、これらのルート調整の努力によっても、みんなを満足させることはできない、と第35戦闘航空団
の作戦部長は語った。ある人々は、F16の低空飛行訓練を全廃すべきだと主張している。
以上が、星条旗新聞の記事の抄訳だ。これまで年間4000回も低空飛行訓練を行ってきたのが、
6.5%になったと言っても、年間500回以上飛んでいるということだ。それも、この間小学校を
標的にしていた、と問題になった地域のすぐ近くを新しい訓練空域に定めて。それにしても、米軍が
ここまで低空飛行の騒音被害に気をつかっているとは..。イヤイヤ、実は文句が出るから気にしている
だけだったりして。
いずれにせよ、低空飛行に苦情を言いつづけることが、住みやすい地域を作っていくのには是非必要な
ことだ、と改めて感じさせられた。

'2000-7-1|HOME|