原潜オハイオから海自潜水艦隊司令が出てきた


ホワイトビーチ沖で原潜オハイオに接触するタグボート。人員の移乗が行われた(08.11.14 撮影)

 海上自衛隊と米海軍による定期共同海上演習「FREETEX」が11月13日から19日までの予定で行われているが、その最中の14日、 沖縄・ホワイトビーチに米海軍の原潜オハイオ(SSGN 726)が寄港した。
 琉球新報 11.15 朝刊記事によれば、沖合いでオハイオから降りてタグボートに移ったのは海上自衛隊潜水艦隊司令(海将)らだった。 目撃した人の話しでは、指令たちは上陸するとすぐに迎えに来ていた乗用車に乗り組んで現場を離れた。
海幕広報室は「研修目的で乗船した」と認め、また上記演習への参加も示唆した(同記事)

 この定期演習には横須賀に配備されたばかりの米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンを始め総数45隻の日米の艦船が参加している が、訓練の想定は対水上艦・対潜水艦・対航空機艦隊防御訓練のようで、ほぼ毎年開催されている。
 演習は原子力空母とその艦隊を敵の水上艦、潜水艦、航空機から防御することを主な内容としているが、そのために潜水艦の捜索などに 当たる音響測定艦や「敵役」となる原潜なども相当数が参加している。
 特に今回の演習海域が九州西方および南方海域(東シナ海)を舞台としていることから、沖縄・那覇軍港やホワイトビーチへ音響測定艦 と原潜が集中的に寄港している。

 また、今回は戦略ミサイル搭載任務から特殊作戦任務へと改造を終えた原潜オハイオが始めて参加しているようで、今回のホワイトビー チ寄港もその途中と思われ、原潜から降りてきた海上自衛隊の将官らは訓練の連絡や統制・訓練評価、いわゆるインター・オペラビリティ のために乗艦していたものだろう。
 これまでも海上自衛隊と米海軍の共同訓練の場合、相互に艦船を乗り換えて訓練を行っていたので、米海軍の原潜に海上自衛官が乗り組 んだのは初めて、ということではないようだ。

 しかし問題なのは、乗り組んだ原潜が海上からの敵地潜入や破壊工作任務に対応するために改造された原潜ということである。
 ホワイトビーチに寄港したオハイオは戦略弾道ミサイルを搭載していた区画を改造して海軍特殊工作員(SEALs)を収容するスペースを 設け、甲板にはSEALs輸送用のDDS(ドライ・デッキ・シェルター)が2基取り付けられ、最大で48人の米海軍の特殊工作員(SEALs)を 収容することができる。

 もし、今回の日米共同演習で原潜オハイオが敵地への潜入や破壊工作を含む作戦任務を受け持ち、原潜に乗艦していた海上自衛官がこの 訓練の連絡や統制に参加しているとすれば、これは明らかに日本の防衛政策の基本である「専守防衛」を逸脱するものである。
 航空自衛隊の幕僚長が政府見解を否定する意見を在職中に発表するなど、いわゆる文民統制の実効性が危ぶまれている中、防衛政策の 基本である「専守防衛」を否定する敵地潜入・破壊工作の訓練に海上自衛隊の将官が参加していたとすれば、これは「重大な規律違反」を 超えた、明確な憲法違反といえる。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


海自司令を移乗させたタグが離れる。オハイオが搭載しているDDSがはっきりわかる(08.11.14 撮影)


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