オスプレイ普天間配備の危険性を暴く −2

オスプレイはなぜオートローテーションで安全に降りられないか?


オスプレイのガイドブック2011−2012(ボーイング社)より

オスプレイのメーカーであるボーイング社は、オスプレイのガイドブック2011−2012の中で、揚陸艦に搭載するオスプレイと、現行機種であるCH46シーナイトの大きさの比較を図示している。(上図)

一目瞭然なのが、ローターの覆域がCH46に比べてMV22オスプレイの方が小さいことだ。ティルトローター機の宿命で、ブレードを長く出来ないことが、この円の大きさの違いに現れている。
エンジンを回しているときは、高回転させればブレードの短さを補うことは出来る。実際、オスプレイの回転翼の回転数はCH46の25パーセント以上大きい。
オートローテーションのときは高速でまわすことが出来ないから、ブレードの長さがそのまま揚力の大きさに効いて来る。

もう一つ、オスプレイとCH46の大きな違いは、機体重量だ。最大離陸重量はオスプレイは23,859Kg, CH46は11,023Kgだ。(ボーイング社のテクニカル・スペックより。オスプレイは垂直離陸時の最大値)
オートローテーションに入ったとき、2倍以上重い機体が、より小さな回転翼の発生する揚力で、はたして安全に着陸できるのだろうか。
その答えは、ペンタゴンを支援するNPO、国防分析研究所の試験・評価部長だったアーサー・レックス・リボロ氏によって、明確なかたちで語られた。オスプレイのオートローテーションは安全ではない、と。

公表されないであろう、オスプレイの飛行データを基に示されたその結論に、公表データから少しでもアプローチできないか、トライしてみた。

自分が降下するときの相対的な上昇気流を使って、揚力を確保するオートローテーションは、パラシュート降下によく似ている。
首都大学東京・都立大学理学研究科ESR subgroup が開いているサイトの 講義ノート 「空気抵抗のある自由落下運動の例」 を参照しながら、パラシュートの直径をローターの2倍、重量をMV22とCH46のそれぞれにあてはめて、空気の慣性抵抗の数式から両機種の終端速度を算出した。
速度に比例する空気の粘性抵抗が働く、とするより、速度の二乗に比例する慣性抵抗が働く、とするほうが、パラシュート降下や雨滴の場合、日常の経験に沿った振る舞いが予測できる、というのがこの講義ノートでの結論だ。

空気の慣性抵抗と重力が釣り合って、それ以上落下速度が変化しないときの速度を終端速度という(のだそうだ)。
終端速度は、質量×重力加速度/(断面積×空気の密度)、の平方根で示される(のだそうだ、以下省略)。
オスプレイのローター覆域は、ローターの長さ5.8mから、211.3平方m(ローターが2つあるから)、同じくCH46のローターの長さ7.77m、ディスクエリア379.6平方m、重力加速度は9.8m/sec*sec、空気の密度を1.3Kg/1立方mとする。(ローターの長さ、ディスクエリアは、ボーイング社のテクニカル・スペックより)

それぞれのローター覆域に等しい断面のパラシュートに、最大離陸重量のオスプレイとCH46がぶら下がって降下したときの終端速度は、
オスプレイが時速105キロメートル、CH46が時速53キロメートル
となる。
現在、日本最速のエレベーターは横浜ランドマーク・タワーの展望台と地上をつなぐもので、時速は45キロメートルという。時速53キロはこれよりやや速い降下速度だ。
厚木基地で海自のヘリSH60がオートローテーションの訓練を繰り返しているのを目撃したことがある。スーっという感じで降りてくるスピードは、速いエレベーター並みに見えた。
CH46の時速53キロメートルという数字からは、パラシュート降下でオートローテーションのシミュレーションをすることが、当たらずといえども遠からずの結果になっている、とも言える。

オートローテーションの場合、まっすぐ下に下りてくるわけではない。高度が下がるときに、位置エネルギーを水平方向の運動エネルギーに替えるための操縦を行い、着陸寸前にディスクをやや上に向けて 揚力を得て、ソフトランディングする、という操作を行う。この操作をフレアというのだそうだ。
フレアで下降スピードを大幅に減らせるならば、オスプレイが100キロ前後の降下スピードで降りてきても安全な着陸が可能となりそうだが、データを解析した国防分析研究所は、「テストデータは、オスプレイは恐ろしい降下率で地面にたたきつけられることを示している」とレポートしている。
また、メーカーのボーイング社も「オスプレイはオートローテーションに頼らない」と言っている。
フレアによって速い降下速度を安全な速度まで引き下げるに十分な水平方向の速度が、オスプレイでは得られないことを示している。

水平方向の速度が得られない、ということは、着陸までに飛行する水平方向の距離を稼げないことでもある。このことが、普天間基地の飛行経路にどんなかかわりを持つか、次稿で触れたい。

(RIMPEACE編集部)


2011-9-24|HOME|