オスプレイ普天間配備の危険性を暴く −3

普天間の飛行経路と、オートローテーションでの到達距離

2004年8月13日、普天間基地から飛び立ったCH53D重輸送ヘリ・シースターリオンが、訓練飛行を終えて普天間基地に帰投する際に、普天間基地近くの沖縄国際大学に墜落した。
再発防止のために、日米政府機関が「普天間飛行場の危険性の除去」について検討した結果を、2007年8月に防衛省がまとめ、関係先に配布したのが「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」(以下、「取り組み」と略す)だ。この「取り組み」の2007年11月版が、11月7日に開かれた 「第4回 普天間飛行場移設に係る措置に関する協議会」の資料として収録されている。

全部で10ページの「取り組み」の中で、5ページを費やして(現状の場周経路、及びオートローテーションに係るクリアゾーン設定を含む)説明しているのは、「ヘリが現行の普天間基地の場周経路で訓練などの飛行時に緊急の際にもオートローテーションによって民間市街地に墜落することなく、飛行場に帰還できる」ということだ。
オートローテーション機能があるから、現在の場周経路で訓練しても、民間地への墜落事故は起きない、だから現行の場周経路で訓練を続けても問題ない、と言っているのだ。


「取り組み」の5から8ページ。オートローテーションで安全に降りられるという主張と、ヘリの場周経路
画面クリックで大きな画面が開く

2004年8月の墜落事故で、当該機CH53Dのパイロットは機体の異常を探知するとすぐに「オート・ローテーションに切り替えることにより、ロータリー・ラダー・ドライブ・システム故障のための緊急処置手順を適切に実行した」(事故報告書、予備陳述1 より)
オートローテーションに「適切に切り替え」ても墜落した事故の再発防止策の検討の結果が、オートローテーションがあるから大丈夫、というのもずいぶんと人を食った話だ。
では、オスプレイが普天間に配備されたときに、防衛省は同じ理屈を繰り返すのだろうか。

「取り組み」のP−4は、場周経路(オート・ローテーションによる飛行場への帰還)という見出しだが、オートローテーションとは「空中でエンジンが停止しても安全に着陸できる特性」だと説明している。そもそも安全に着陸できないオスプレイには当てはまらない説明だ。
では、安全ではなくとも滑走路近辺に「落ちる」ことは可能なのか?
例示してある図では、UH1と見られるヘリが高度330メートルから750メートルの距離を滑って滑走路周辺に下りることになっている。
2倍以上のスピードで降りてきて地面にたたきつけられるオスプレイがこんな距離を滑れるわけがない。ほぼ真下に落ちていくと考えたほうが実態に近いだろう。フェンスギリギリを飛んでいるオスプレイがオートローテーションで降りてきたら、かろうじてフェンスの内側、もし操作にミスがあればフェンスの外に落ちることにもなる。

「取り組み」のP−5では、滑走路から750メートル(つまり場周経路)を高度330メートルで飛んでいれば、エンジンが停止しても滑走路周辺に着陸可能、と主張している。ただしそれは現在も普天間基地に配備されているCH46,CH53,UH1,AH1について言っている。

では、オスプレイの場周経路の設定はどうなっているのか。

2011年6月24日、沖縄県知事と宜野湾市長の連名で日本政府に「MV−22オスプレイの配備に対する質問状」を提出した。そのうちの一部について、9月1日、防衛大臣より回答があった。
普天間基地での訓練に係る質問(問8)と、その回答は次の通り。

問8 現在、普天間飛行場に配備されているCH−46は、普天間飛行場周辺において旋回飛行訓練を行っているが、仮にMV−22が配備された場合、同様の訓練が行われるのか。
またそれぞれの旋回飛行訓練の経路を図面に示し提示していただきたい。

答え MV−22は、普天間飛行場に既に設定されている飛行経路を飛行し、転換モードで飛行する場合は既存の回転翼航空機の飛行経路を、固定翼モードで飛行する場合は既存の固定翼機の飛行経路を飛行する旨米側より説明を受けている。
なお、具体的な飛行経路は、現在、米側に照会中である。

オスプレイがヘリモードで旋回飛行訓練を行うときは、今CH−46が飛んでいるのと同じ経路で飛ぶ、ということだ。飛行高度は平均海面から1000フィート(330メートル)だ。
この経路を飛んでは、オスプレイはオートローテーションで降りても普天間基地の滑走路付近には届かない。それなのに、現行のヘリの飛行経路で旋回訓練を行うというのだ。
「危険性の除去に向けた取り組み」どころか、このオスプレイのヘリモードの飛行経路設定は「危険性を増大させる」ものでしかない。

さらに、「取り組み」のP−6に描かれている「絵に描いた餅」のような経路を飛んでさえ、オートローテーションで安全に着陸できないオスプレイが、「既存の回転翼航空機の飛行経路」をはみ出したらどんなことになるか、考えただけでも恐ろしい話だ。

オスプレイの固定翼モードの飛行の問題点に話を進める前に、次稿では飛行経路からはみ出して飛ぶ普天間基地所属のヘリの飛行ルートを実例で示し、その危険性を指摘したい。

(RIMPEACE編集部)


2011-9-29|HOME|