固定翼機の旋回訓練経路とオスプレイ
MV−22は、普天間飛行場に既に設定されている飛行経路を飛行し、(中略)、固定翼モードで飛行する場合は既存の固定翼機の
飛行経路を飛行する旨米側より説明を受けている。(防衛大臣の回答、沖縄県知事・宜野湾市長あて、2011.9.1)
ティルト・ローター機オスプレイは、普天間基地で固定翼モードでも旋回訓練を実施する。その旋回訓練コースは既に設定されてい
る固定翼機の飛行経路だ、と防衛大臣は答えているのだ。
普天間基地でP3CやKC130などの固定翼機が旋回訓練をしていることは知られているが、そのコースが設定されていることを
米軍や日本政府が認めたことは、これまでなかった。したがって、県や市が求めた旋回飛行訓練のうちの固定翼モードの飛行経路も、
公式に図示されたことはない。
嘉手納基地に半年のローテーション配備をされる米海軍の対潜哨戒機P3Cが、よく普天間基地の滑走路を使って旋回飛行訓練を行
う。通常ヘリが旋回する経路とは滑走路を挟んで反対側の太平洋側を飛んでいる。コースはヘリの旋回経路よりずっと大きい。
大まかに見て、固定翼機の旋回コースの南側半分は国道330号線と沖縄自動車道に挟まれた地域の上空を飛行しているようだ。
普天間基地の滑走路と平行に飛行しているときの滑走路との距離は1.5キロから2キロといったところだ。
米海軍がオスプレイの西海岸海兵隊基地への配備前に行った環境影響評価(アセス)には、オスプレイが飛行するルートについて
出発、到着、旋回訓練ルートなどが図示されている。騒音の評価をするには、何はともあれ飛行コースを決めなければ話にならない
からだ。
オスプレイが固定翼モードで飛行し、着陸前にヘリモードにして旋回するパターンの中で、ミラマー基地のものを参考にしよう。
アセスで取り上げられた3つの基地のパターンの中で、コースの短径が普天間基地でのP3Cの経路に一番近いからだ。
アセスの図のルート中で m ポイント付近でオスプレイはヘリモードに移行し始める。固定翼モードで旋回するときでもアプローチの
最終段階ではヘリモードになる。回転翼が60度以上、上を向く。
このときにエンジンが停止したら、これまで見てきたようにオートローテーションに入れても無事に着陸は出来ない。しかも、旋回
経路に逸脱がなくても、固定翼旋回コースは普天間基地の外を大きく回るために「墜落に近い着陸」場所は民家の密集地域となる。
オートローテーションでも安全に着陸できないオスプレイは、ヘリモードでフェンスの近くをまわるよりも、固定翼モードで大回り
して途中からヘリモードに移行したときの方が、危険度が高い。
ちなみに、固定翼機が普天間基地で滑走路方向60度(RW/06)の旋回訓練をするとき、ファイナル・アプローチは西原、真栄原の上を
通り、風向きが逆(RW/24)の場合は野嵩の上を通過することが多い。
オスプレイが固定翼モードで旋回訓練を行えば、この地区の上でヘリモードになる可能性が高い。
固定翼機の普天間基地での旋回訓練のコースは、仮に米軍が公開をしぶっても、防衛省が実施している普天間基地の航跡調査には
歴然と出てくる。KC130かP3CかUC12か、といった区別はつかなくとも、普天間基地の北東側(太平洋側)を大回りする経路が記録
されていなければ、大金をかけて行った航跡調査で、目視で確認できる飛行が記録できていないという大珍事となる。
その大回りの経路が固定翼の旋回経路の実態だ。そして、防衛大臣の回答から、固定翼モードのオスプレイが旋回訓練で飛行する
経路、ということになる。
防衛省が実施している航跡調査からは、ヘリのはみ出し飛行の実態のほかにも、固定翼機の旋回ルートとヘリの旋回ルートが、滑走
路を挟んで反対側にあることも見えてくる。
せっかく大金を投じて(つまり税金をジャブジャブ使って)行う調査なんだから、得られた結果は有効に活用されねばならない。
少なくとも関連する自治体や市民に速やかに公開されるべきだ。目視でみんなが知っていることをまとめた結果に、軍事機密なんぞ
あるわけも無いのだから。
(RIMPEACE編集部)
2011-10-4|HOME|