普天間基地ヘリ航跡図を読む 1


2010年6月のヘリ航跡図。場周経路の部分を拡大した。トラック様の黄色い太い線が日米政府合意の場周経路


防衛省資料に図示されている場周経路。大部分が基地境界の中で、短径は750メートル
「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」(防衛省 2007年11月)より

10月6日に沖縄防衛局が、普天間基地のヘリ飛行状況を示すと言う「飛行状況調査結果について」を発表した。2010年1月から 2011年3月までの主にウィークデーを中心に機器を使って観測し、地図の上に航跡を落としたものだ。
固定翼機の航跡については、意識的に表示されていない。

宜野湾市役所のホームページから、発表された防衛省の見解と月ごとに集約されたヘリの飛行経路図をみることが出来る。
「普天間飛行場における回転翼機の飛行状況調査について」

15枚の飛行経路図を見て驚いたのは、固定翼機の航跡が抜かれていること、地図にスケールがはいっていないことだ。
もっと問題なのは、航跡図に記された飛行を行った機数が明らかになっていないことだ。
機数の問題は次回に取り上げるとして、ここでは、場周経路からのハミダシ飛行について述べたい。

今回の航跡図を見て、一瞬、場周経路は守られていると思ってしまった。 場周経路を回る軌跡が集中している部分が日米政府の合意した場周経路だと読み違えたからだ。
多数の航空機が同じ経路を有視界飛行方式で飛ぼうとするとき、ある程度のばらつきはあってもその経路に沿った分布になる。
場周経路を守って飛ぶならば、決められたトラック形の経路の真上が濃く塗りつぶされ、場周経路から離れるにしたがって記録された飛行 経路のラインの分布はまばらになるはずだ。

航跡図に場周経路を重ねてみて、飛行実態があからさまになった。旋回飛行で滑走路と平行する航跡が場周経路の外側に分布している。 (上図)
場周経路の内側にはほとんど航跡がない。
この航跡図が語っているのは、普天間基地で旋回訓練をするパイロットが、決められた場周経路ではない、別の経路の上を飛ぼうとして いることだ。パイロットたちが経験的に飛ぼうとしているのは、場周経路のもっと外側にはみ出した経路だ。
もしそうでなければ、普天間のヘリ・パイロットは、しょっちゅう飛んでいるはずの決められたルートもたどれない、ひどい腕の 持ち主ということになる。

沖縄防衛局がこの航跡図を専門家(ヘリ・パイロットと管制官)に見せたら、「場周経路の飛行はおおむね守られている」という回答が返 ってきたとか。「おおむね守られていない」としか読めないデータなのだが。
「守る」という言葉に沖縄防衛局はこだわっているが、まず客観的な事実として、場周経路からどのくらいのハミダシがあったのかを押さえ るのが先だろう。

場周経路のダウンウィンド・レグは滑走路と平行に750メートル離れている。「その距離ならオートローテーションで滑走路付近に戻れ るから安全だ」
それがあの大型ヘリの墜落事故以降、日米が調査して出した結論で、それが今の場周経路を使用する根拠となっていた。
ハミダシ飛行が常態化しているということは、安全に基地に戻れない経路を飛んでいるということになる。

場周経路より外側を大部分のヘリが飛んでいることは、航跡図を見れば一目瞭然だ。沖縄防衛局の仕事は、先ずその事実を認めることから 始まるはずなのだが。

(RIMPEACE編集部)


防衛省が記録した2010年4月のヘリの航跡図。場周経路を当方で書き加えた。


2011-10-13|HOME|