オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶ

  
オスプレイ環境審査書(米海兵隊)に示された低空飛行ルート。ルート名は当編集部で加筆 

オスプレイ沖縄配備に向けた米海兵隊の環境審査の内容が、6月13日に防衛省から発表された。普天間基地周辺に限らず伊江島や沖縄本島全域に影響が及ぶ とするこのレビューの中に、本土へのオスプレイの飛来についても言及されていた。
鹿児島から沖縄本島に向かう海上ルートと、本土を走る低空飛行ルート5本の計6ルートをオスプレイが飛行するという内容だ。

ここに示されている低空飛行ルートは、米海軍と海兵隊が勝手に決めて使っているもので、岩国の海兵隊固定翼機のホーネット、ハリアーのほか、普天間の KC130も輸送機として使っている。また海軍では厚木の艦載ジェット機(スーパーホーネット、グラウラー)が使用する。
谷間を縫うように高速で飛行する非常に危険な訓練だが、飛行高度については別項で述べる。

いくつかの米軍機の事故報告書から、低空飛行訓練は対地攻撃と一体になった訓練であることが分かっている。敵のレーダー探知を避けるために地形に沿っ て飛行し、目的地の手前でポップアップしてから急降下して爆撃する。これが戦闘攻撃機の低空飛行訓練の実態だ。
KC130空中給油機は、名前と実態がことなりミッションの9割以上が輸送任務だ。オスプレイの場合も該当するが、低高度で戦域に浸入して兵士を降ろす ための訓練のために低空飛行ルートを飛ぶ。

岩国と厚木の戦闘攻撃機の動きを調べると、それぞれのルートと各基地の関係が浮かび上がってくる。
トカラ列島を縫って飛ぶパープルルートの場合は、岩国を離陸した機体が鹿児島の先で海面近くに降下してルートをたどり、最後に沖縄本島近くの射爆場で 爆撃訓練を行う。
本土に設定されているルートでは、ルートの途中のポイント(上図でルート中の黒点)を目標として模擬攻撃を行うことが多い。岩国のホーネットの事故報告書 では、四国山中の水力発電施設がオレンジルートをたどる途中の攻撃目標になっていた。

九州山地をまわるイエロー・ルートの飛行は、岩国から飛んで岩国に戻るケースが多い。
四国山中と和歌山を通るオレンジ・ルートは、厚木・岩国間の飛行で使うことが多い。木曽山中から北アルプスを経て新潟に向かうブルー・ルートは主に 厚木から飛ぶことが多い。新潟から奥羽山脈を通るピンク・ルート、茨城の大子付近から青森をつなっぐグリーン・ルートは厚木から三沢に向かう機体が 飛ぶことが多い。

実は海軍・海兵隊が管理する低空飛行ルートはもう1本ある。岩国基地の北東から中国山地を横断するブラウン・ルートで、岩国の海兵隊機が 一番利用してきたルートだ。
今回のオスプレイの飛行予定ルートに入ってないのは、理由が不明だ。少なくとも昨年までは艦載機がこのルートを飛んでいる。

オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶということは、その際に岩国・厚木・三沢などの米軍基地を離発着するということだ。キャンプ富士と厚木の整備能力の 違いを考えれば、厚木の代わりを全部キャンプ富士がこなす、ということにはならないと思われる。

また、オスプレイの低空飛行ルート使用により各ルートの飛行回数は平均で毎月3,4回だ、とレビューでは述べている。オスプレイの飛行がその通りだと しても、オスプレイは単独では戦地を飛行しないと見られる。前方制圧能力が他のヘリと比べて極端に小さいため、AH1やA10などの強力な火力を持つ 機体がエスコートすることが考えられる。
戦地での飛行を前提とした低空飛行訓練では、エスコートの機体との連携も訓練されるだろう。低空飛行ルートの飛行回数増は、もっと増えることが考え られる。

(RIMPEACE編集部) 


2012-6-16|HOME|