オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶ−4

低空飛行・安全策は「よく見て避けろ」

オスプレイが低空飛行ルートを飛ぼうとしている。急激な戦闘機動が困難だ、と指摘されているオスプレイが飛ぶことで、低空飛行の危険性は倍加する。

死者多数を出した大事故を続けざまに起こして飛行停止となっていたオスプレイのテスト飛行が再開されたのは2002年5月だった。テスト飛行の再開にあわせるように、海軍省はオスプレイ に対する要求水準を下げた。

オートローテーションで安全に着地する、という要件がはずされたのもこの時だが、まだほかにもいくつかの要件が外された。NBC兵器からの防御能力も要求されなくなった。そして戦闘機動 能力も。(議会への調査報告より、海軍省ライブラリーに収録)

ペンタゴンを支援するNPO国防分析研究所で、オスプレイの評価を担当したアーサー・レックス・リボロ氏も、オスプレイの欠点として、揚力不足、オートローテーションで安全に降りられ ないこととともに、戦闘機動能力の欠如を挙げている。コンピュータ制御のオスプレイは、回避機動をとろうとするパイロットの激しい機動要求を抑制する傾向があると証言している (2009.6.23 米下院委員会)。

低空飛行ルートはパープルルート以外は山の中を通っている。尾根を越え、谷をたどって新幹線の倍以上のスピードで飛行する機体が、危険を回避するための急激な機動が出来なくては、仮に 民間のヘリや谷間のケーブルなどを見つけても回避はできないだろう。

94年10月に早明浦ダムのダム湖に厚木のA6艦載攻撃機が墜落した事故報告書の中に、在日米海軍司令部通知 3530 という書類が入っていた。94年3月付で出されたこの通知の題名は 「低空飛行訓練ルート」だった。

『低空飛行ルートは第5空母航空団と第12海兵航空群が開発した訓練ルートで、日本に駐留している間に所属機が低空飛行訓練を行うためのものだ。これらのルートは運輸省(当時、訳注)航空 局に認知されてもいないし(航空路誌などに)記載もされていない。したがってこれらの訓練ルートは民間機のパイロットに公式に知らせる手立てがないし、この低空飛行ルートを飛行する際の 障害物・危険物についての情報を更新することもできない。「よく見て避ける」(See and Avoid)がこのルートを飛行する際に最も重要なことだ。』

これが艦載機や海兵隊機の低空飛行訓練に責任を持つ在日米海軍司令部の正式な見解だ。低空飛行を行う米軍機の第一の安全策が「よく見て避ける」なのだ。

この “See and Avoid” は、オスプレイ普天間配備のための調査の中にも出てくる。『中部訓練エリアは民間機の航路に囲まれていて、民間機の意図的ではない訓練空域進入が日常的に起きて いる。民間機との空中衝突を避けるのに “See and Avoid” は有効だ。』(Chaper 4, TRAINING AND READINESS OPERATIONS 4-1-6 SAFETY の中の Mishaps)

何年たっても、低空飛行の安全策はこの程度のものだ。

在日米海軍司令部通知 3530 は、「よく見て避ける」の次に、2機の戦闘機が木材運搬用のケーブルとぶつかったことがある、と述べ、地上1200フィートに張られていることもあるケーブルを 視認することは不可能だ、パイロットたちは木材搬送作業をしている兆候をつかまなくてはならない、としている。

低空飛行訓練が、パイロットの技量と運に左右されるきわめて危険なものであることがわかる。その危険な低空飛行訓練を、今度は急激な機動が難しいオスプレイが行おうとしている。世界一危険 な基地普天間にオスプレイが配備されれば、その危険性が倍加するのと同じ構造だ。

(RIMPEACE編集部) 


オスプレイ配備レビューで明らかになった低空飛行ルートのうちの3本。左からブルー、ピンク、グリーンの各ルート


2012-6-25|HOME|