オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶ−5

森本先生に質問、その1
なぜ6本の低空飛行ルートは航空路誌に載っていないんですか?


防衛省が作ったパンフレット「MV−22オスプレイ −米海兵隊の最新鋭の航空機−」より。(赤線は筆者)

2012年6月、防衛省はオスプレイの普天間配備について、関係する自治体に「理解を得る」ためにパンフレットを作製した。「MV−22オスプレイ −米海兵隊の最新鋭の航空機−」という名前だ。 (以下「防衛パンフ」と略)
この防衛パンフ、国民に見せたくないのか一般にはほとんど出回っていない。当編集部は「沖縄環境ネットワーク」のページにアップされた pdf版で内容を知った。一読して感じた問題点を3点だけあげたい。

防衛パンフの17ページ、MV−22配備後の運用(環境レビューに示されたもの)の日本本土等のところに、「日本本土及び沖縄北部の計6本の既存の航空路を、最大で、年間各55回、合計で330回 程度使用予定」と書かれている。発行した防衛省が意識したかどうかはわからないが、「計6本の既存の航空路の存在」を政府が認めたのは初めてだ。
これまでの政府答弁では「米軍は、低空飛行訓練を実施する区域を継続的に見直していることは承知しているが、具体的なルートの詳細等については、日米合同委員会の場においても確認しておら ず、承知していない。具体的ルートの詳細等は、米軍の運用にかかわる問題であり、これらを明らかにするよう米側に求める考えはない。」(平成11年8月13日、衆議院議員濱田健一君提出在日 米軍による低空飛行訓練に関する質問に対する答弁書)として、低空飛行訓練の重要性は認めるが、どこを飛んでいるかは関知しない、というものだった。

オスプレイが飛ぶルートを日本政府が関知せずに関係する自治体に話をしに行くわけにはいかない。「この近くをオスプレイが飛ぶ、と米軍が言っている。防衛省はどこを通るか全くわからないが、 米軍がそう言っているので連絡に来た」などと言ったら、ガキの使いじゃあるまいし、と追いだされて塩をまかれるのが落ちだ。
ルートの下の自治体に話をするためには、ルートをしっかり把握していることを認めなければならない。今回防衛省は低空飛行ルートを、防衛パンフの中ではっきり航空路と認めた。そしてパンド ラの箱を開けた。

国際民間航空機関(ICAO)に加盟している日本は、国内および周辺の航空路、訓練空域など、航空機の安全な運行に必要な情報を航空路誌(AIP)として公刊しなければならない。そこ には、航空路の経由ポイントの緯度・経度、ポイント間の飛行高度も明示しなければならない。もちろんその高度は、航空法や同施行規則の定めに合わなければならない。

「米軍は全く自由に飛行訓練等を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることはいうまでもない。(中略)米軍も、この点には十分に留意しており、 低空飛行訓練を行うに際し、最低安全高度に関する法令を含め、我が国法令を尊重し、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めている旨明らかに している。」(上記の政府答弁書)

「我が国法令を尊重」というのなら、少なくとも航空法施行規則第百七十四条、「有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は 物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの」という最低安全高度は守らせなければならない。500フィートとか150メートルという数字が独り歩きして いるが、今回日本政府が認識していることを認めた低空飛行ルートを含めて、谷間を両側の山より低く飛ぶことは禁じられている。
谷間に張られた木材運搬用のケーブルを切断することなど、法令を尊重した飛行ではありえないことだ。また、オスプレイが谷間を周囲の山より低く飛んだ場合、航空機モードで全発 停止したら、谷間に滑空して降りられる場所はないし、ヘリモードで飛んでいればオートローテーションがきかない。オスプレイは谷間を「合法的」に低空飛行することはできないし、ルートの下 の地形を認識している日本政府は、環境レビューに出ていた500フィート、200フィートという高度の飛行を、国内法に基づきやめるように米軍に働きかけな ければならない。

オスプレイだけではない。ハリアーにしろホーネットにしろ、低空飛行が日本の領土内で行われていることを認識した時、日本政府が真っ先にすべきことは、国内法の順守を米軍にせまることだ。 低空飛行ルートの場所を認識した以上、それは日本政府が避けて通れないことだ。
また、危険な低空飛行ルートの存在をその空域に出入りする民間航空機の安全のために、航空路誌への記載などで公知せねばならない。「よく見て避けろ」だけが安全対策では、航空機の安全もな にもあったものではない。
森本先生、見通しもなく首長に頭を下げに行く前に、やるべきことはたくさんあるんじゃないですか?

(RIMPEACE編集部) 


航空路誌のエンルート図3の一部。下のパープル・ルートの図と比べると、記載がないことが一目瞭然


防衛省パンフに出てくる「6本の既存の航空路」のうちの一つ、パープル・ルート(海兵隊の環境レビューより)


2012-6-30|HOME|