オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶ−10

米機の低空飛行で、防災ヘリが危険に直面

7月19日、全国知事会がオスプレイの配備について「安全性の確認ができていない現状では受け入れることは出来ない。政府は関係する自治体の意向を尊重して対応するよう強く求める」 とする緊急決議を行った。
朝日新聞によれば、会議の中で山形県の吉村知事が「県の防災ヘリ飛行に整合性がとれるのか。情報不足だ」と述べた。オスプレイに限らず米軍機の低空飛行訓練が地域の生活に重大な影響を 及ぼすことへの具体的かつ的確な指摘だ。

99年1月20日、岩国基地所属の海兵隊FA-18戦闘攻撃機が、高知沖の空域での空中給油訓練の際に僚機と空中衝突した。1機は高知沖に墜落、もう1機は岩国基地になんとか降りた。墜落した機体の パイロットは、高知県消防防災ヘリのクルーにより救助された。
この墜落事故の報告書の中に、救助したヘリの救助クルーとパイロットへの聞き取り調査メモが含まれていた。

出動、救助そして高知空港までの移送を詳しく語った高知県消防防災ヘリのクルーたちが、最後にいくつか質問をした。その中の一つが、四国山中を低空飛行する米軍機との遭遇に関する ことだった。

「米軍のF18が四国山地で低空飛行を行うが、ときどき我々は、彼らが大変早い速度で我々から飛び去っていくのを目視することがある。大変気になるのだが、彼らの目に我々は映っているの だろうか。彼らは我々を目視確認しているのか、それとも通りすぎる直前に我々を見つけるだけなのだろうか。彼らは実際我々を見ているのだろうか。」

防災ヘリは、山間の谷間を飛ぶこともある。有視界飛行で、管制機関からのトラフィック情報を得ながら飛ぶ。この空域に、日本の管制機関に届けずに(もちろん許可もとらずに)米軍機が飛び込 んで来たら、空中衝突の危険性は大きくなる。
その米軍機の最大の安全策が「よく見て避けろ」なのだ。高知の消防防災ヘリのパイロットは、あんな飛び方をしていて、本当に他の機体が見えているのか? 避けられるのか?と疑問を呈して いるのだ。

高知の消防防災ヘリのパイロットが見たのは、オレンジルートをたどる米軍戦闘機だ。彼らが救ったパイロットも、事故を起こさなければ空中給油の後、オレンジルートを西向けに飛ぶ予定だった。
ことは高知県のヘリだけに係る問題ではない。オスプレイが飛ぶ6本の低空飛行ルートが通る自治体の、防災ヘリの飛行すべてに係る問題だ。
山形県の吉村知事の指摘は、人命の救助にあたる防災ヘリが、米軍機の低空飛行訓練のために危険に直面してもいいのか、という問題提起なのだ。

これまで低空飛行訓練ルートの存在さえ知らん顔をしてきた防衛省・日本政府は、オスプレイの飛行ルートとしてその存在を認知せざるを得なかった。もはや、米軍機による低空飛行訓練の持つ 危険性に目をつぶるわけにはいかない。
「防災ヘリが危険に直面してもいいのですか?」という問いに正面から答えなければならない。

(RIMPEACE編集部) 


岩国基地のホーネット・高知沖墜落事故報告書に付属していた、高知県消防防災ヘリ・パイロットへの聞き取りメモ(抜粋)


2012-7-21|HOME|