風前のともしび、普天間基地場周経路の日米合意 (2)

場周経路見直し報告書の真の狙い

ところで、ここで防衛省が「報告書」を持ち出したのはなぜだろうか。報告書の結論は「普天間基地の場周経路を見直した結果、この場周経路を設定高度で飛んでいるヘリは、緊急の際にもオート ローテーションにより飛行場内に帰還を図ることが可能であることが確認された」という現状追認でしかなかった。
場周経路が安全だ、ということを言うならば、なぜそこに「オートローテーション」で安全に降りられる距離のことを論じなければならなかったのか? 「場周経路をきちんと守る」と当事者がひ とこと宣言すれば、それでおしまいの議論ではなかったのか。


緑の部分は、基地内にオートローテーションで降りられる、という範囲。はみ出し航跡はこの部分に集中する。(報告書付録より)

「場周経路をきちんと守る」と言い切れなかったのは、実態として場周経路からのはみ出しが常態化していて、口先だけでは基地周辺住民や沖縄県民の理解が得られないことがはっきりしていた からだ。
「はみ出しても基地のフェンスの中に戻れる、基地の外には落ちない」として、2004年8月のヘリ墜落事故で増幅された危険な米軍機への恐怖を少しでも和らげようというのが、事故から3年 後に出した報告書・日米合意の隠れた狙いだった。

「守っていないということを示すものではない」という防衛省の煮え切らない「評価」も、実は「オートローテーションによって基地の外には落ちないコースを米軍は飛んでいる」と言いたかった のかもしれない。だが、オスプレイのオートローテーション機能に対する不安が、防衛省をして情報処理能力を疑われるような「評価」に走らせたのだろう。
オスプレイが配備されたら、こんな甘いことも言えなくなるからだ。

(RIMPEACE編集部) 


2012-8-15|HOME|