風前のともしび、普天間基地場周経路の日米合意 (4)

森本防衛相は、唯一のオートローテーション論者

2011年6月6日、オスプレイの普天間配備を日本政府が沖縄県、宜野湾市などに通達した。日本政府が公式にオスプレイの配備を認めた日でもある。

普天間基地に配備されれば、オスプレイはヘリの場周経路も飛ぶ。2007年の報告書・日米合意の対象になっていたヘリの半分以上が、配備計画によればオスプレイに置き換わることになる。 オスプレイのオートローテーション機能が本当にあるかどうかで、この場周経路の見直しを検討した報告書も、結論がまったく変わってくる。オートローテーション機能をオスプレイが持たない のだったら、基地の中に安全に降りられるという結論も正反対のものになる。


オスプレイの普天間基地での場周経路。左上の点線がヘリモード、右下の実線が固定翼モードでの場周経路(環境レビューより)

オスプレイのオートローテーション機能については、メーカーのボーイング社もないと言っている。(「オスプレイはオートローテーションに頼らない」ボーイング社の宣伝冊子より)。 そもそも開発過程でオートローテーション機能をオスプレイの要件から外しているのに、なんでいまさら機能がついていることになるのか?

今、世界中を見渡して、オスプレイにオートローテーション機能があるなどと公式に発言しているのは森本防衛大臣だけだ。頑張って水掛け論にでも持ち込もうという腹なのかもしれないが、 ことは場周経路の安全性にかかわることだ。日米でいったん合意した安全性にかかわることだ。オスプレイにその機能があるというのなら、データで示してもらおう。

基地の境界から750メートル外側を飛んでも基地の中に安全に降りられる、という日米合意の結論は、オートローテーション機能の指標ともいうべき、最小降下速度と最大到達距離、および その根拠となるオートローテーション・チャートから導かれている。報告書ではそのデータをもとに750メートルのはみだしでも安全だ、と計算してきた。では、オスプレイがオートローテー ション機能を持つというのなら、最小降下速度と最大到達距離を示して「安全に基地の中に降下できる」はみ出しが何メートルあるのかを計算して、もしそれが短いのなら、日米が合意した報告書 の修正をしなければならない。

しかし防衛大臣は記者団に対して、最大到達距離の調査はしていない、と答えている。調査は実は簡単なことだ。米側にオスプレイのオートローテーション・チャートを開示するよう求めるだけ だ。2007年の報告書作成の時に「米側は、本件作業の効果的な実施に資するため、普天間飛行場及びその周辺におけるヘリコプターの飛行に係る経路の設定状況等についての詳細な情報を、 その進捗に合わせ、順次日本側へ提示した」(報告書序文)。オスプレイのオートローテーション・チャートがもし存在するのなら、前回の共同作業の続きとして米側は「詳細な情報を日本側に 提示」するだろう。

もしチャートが存在しなければ、それは実機でオートローテーションを試みていないことになり、オートローテーション機能がないことの証拠となる。オスプレイが普天間でヘリの場周経路をたど るときに、経路の安全性を担保するためには、基地内を飛ぶしかない。それでもオートローテーションで安全に降りられないのだが。

(RIMPEACE編集部) 


2012-8-15|HOME|