風前のともしび、普天間基地場周経路の日米合意 (5/止)

偽りのオートローテーションの行き着く先

ところでオスプレイの場周経路は、これまでのヘリの場周経路だけではない。離陸して固定翼モードになったオスプレイは、太平洋側の固定翼機用の場周経路をたどり、着陸前にヘリモードに 変わる。その時の基地境界からの水平距離は3000メートル以上だ。オスプレイのオートローテーション時の最大滑空距離が他のヘリの4倍あればつじつまは合うが、機能の存在自体が強く疑わ れているオスプレイには望むべくもない数字だ。

またオスプレイは普天間基地へのアプローチの際に、これまでのヘリが行わなかったオーバーヘッド・アプローチを行う。このときも、固定翼機の場周経路に近いコースを飛び、ヘリモードに切り 替える。固定翼モードの場周経路は、実はアプローチで最も使われるコースでもある。この経路の安全性に疑問符がつけば、大型ヘリの墜落にともなう場周経路の安全性の確認は、無意味なものに なる。


オスプレイの普天間基地でのオーバーヘッド・アプローチ・パターン。固定翼モードの場周経路に重なる部分がある(環境レビューより)

この場周経路の見直しとオスプレイとの関係を解きほぐさずに、仮に2件のオスプレイ事故報告の結果を説明に沖縄にやってきても、「8年前の墜落事故の総括もせずに、また危険なオスプレイ を導入するのか、味噌汁でツラ洗って出直してこい」となるのは必然だ。報告書に何度も出てくる「住民の安全」が口先だけだということがはっきりするからだ。(ちなみに、「住民の安全」 は報告書に7回も出てくる)

もう一度確認する。オスプレイのオートローテーション機能の有無は、なければしょうがない、という問題ではない。2007年の合同委員会の合意にある、普天間基地の場周経路の外を飛行し ても安全だ、という結論を覆すものだ。オートローテーション機能がある、といまだに防衛大臣が主張するなら、合同委員会の合意を導いた数値を、オスプレイについて明確にしなければならな い。

オスプレイのオートローテーション・チャートに基づく最小降下速度と最大到達距離は、少なくとも必須のものだ。
オスプレイのシミュレーターのパラメーターを示せばいいというものではない。実機でオートローテーションを行っていなければ、そのこと自体がオートローテーション機能がないことを示す。

防衛大臣に問う。自衛隊所属のヘリ・パイロットで、オートローテーションを実機で訓練したことがない隊員がいたら教えてほしい。オートローテーションで安全に降りられない自衛隊のヘリ あれば発表してほしい。
シミュレーターでしかオートローテーションの訓練ができないことの異常さを、一番感じているのは、自衛隊のヘリ・パイロットだろうから。

(RIMPEACE編集部) 


2012-8-15|HOME|