オスプレイが低空飛行ルートを飛ぶ−11

米本国の軍用機低空飛行ルート、国民への開示度は? その1

米政府が管理する空域、演習区域、ルートなどは、米本土全体に分布している。
空港・基地周辺に設定された、クラスA,B,C,D空域、制限空域、禁止空域などのほかに軍用訓練ルート(Military Training Routes、MTR)が存在する。軍用訓練ルートは低高度(高度10 000フィート以下)で高速(250ノット以上)飛行訓練を行うためのルートだ。
1500フィート以上の高度を飛ぶルートの場合、IFR(計器飛行方式)で飛ぶ。また1500フィート以下を飛ぶときはVFR(有視界方式)で飛ぶ。ルートには名前が付けられている。 1500フィート以上で飛ぶルートにはIR***(数字3ケタ)、1500フィート以下で飛ぶルートにはVR***と名前が付けられている。すべてのレグが1500フィート以下の場合は VR****と4ケタの数字がVRの後ろにつく。この4ケタのルートが、日本の各地を走る低空飛行ルートに相当する。

オスプレイが低空飛行を行うので、仕方なくそのルートの場所だけを公にして、それ以外の情報は秘匿というか米側から聞き出そうともしない日本政府のやり方に慣れてしまっていたのだろうか。 連邦航空局(Federal Aviation Administration,FAA)発行の VFR Terminal Area Chart に軍用訓練ルートが載っているのを見た時には、心底驚いた。
本来、周知しなければいけない飛行ルートだ。知らせなければ、付近を飛ぶ軽飛行機や民間ヘリが何も知らずにそのルートを横切ったり、訓練中の軍用機と逆方向に飛んで来て、あわや正面衝突 という事態もありうる。日本政府が米軍機の低空飛行訓練について国民に何も知らせないから、民間機との空中衝突などの事態がいつ起きてもおかしくない状況だ。


(左)VTAC Fairbanks より、(右)VTAC Orland より。VR, IR のルート名が読み取れる

FAA発行の VFR Terminal Area Chart は大都市の周りをカバーしてるだけだ。この25万分の1の航空図だけでは、全部の軍用訓練ルートをつかむことは出来ない。
ルート図にはなっていないが、それぞれのルートの通過点、およびその区間の許容飛行高度を全部記載したルート記述書がある。

「高速・低高度(250ノット以上、1万フィート以下)の飛行訓練は、連邦航空局と国防総省が共同で拡充した規則に従って確立され、パイロットが事前の飛行計画を建てられるように表形式で 公表されたルートでのみ行われなければならない、というのが連邦航空局と国防総省のポリシーだ」(海軍作戦規則 3770.2K、CHAPTER 5, 501.POLICY から抜粋)

低空飛行ルートの設定には、初めから連邦航空局が噛んでいる。オレンジルート、ブルールートなど日本国内の米軍低空飛行訓練ルートの設定の仕方とは大違いだ。

(RIMPEACE編集部) 


2012-8-16|HOME|