日米合同委員会合意の「安全性」が吹っ飛んだ

普天間場周経路とオートローテーション(1)


配備後間もないオスプレイが並ぶ普天間基地(12.10.12 世嘉良 学 撮影)

沖縄県民の総意を無視してオスプレイが強引に普天間基地に配備された。配備に先立ち防衛省は「MV−22オスプレイ オートローテーションについて」なるものを9月19日に示し、オスプ レイにオートローテーション機能はある、と強弁した。

同時に防衛省は日米両政府の「奇妙なやりとり」も公開した。
日本政府代表は「オスプレイが、既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有することを確認したい。」と発言した。これに対する米政府代表の答え は「両エンジンの故障という、オートローテーションが必要となるきわめて想定し難い事態において、パイロットは飛行場内に安全に帰還するためのあらゆる措置をとる。」(2012.9.19日米合同 委員会)

正面から答えていない、というよりも、安全に帰還する能力があるとは言えない、と答えているに等しい。オートローテーション機能をオスプレイ開発の要件から外した米軍にとって、いかにも答 えにくい質問を日本政府が行い、米政府が「滅多に起きないことだから、オートローテーション機能はなくてもかまわない」とは答えられなかったのには訳がある。

「安全宣言」が「非安全宣言」に

2004年8月に、普天間基地所属のCH53D重輸送ヘリが沖縄国際大学キャンパスに墜落する大事故が起きた。その後、「普天間基地場周経路の安全性」という報告が日米合同委員会で合意され た。安全性の根拠は、オートローテーション機能を使えば、場周経路を飛ぶヘリは、安全に普天間基地のフェンスの中に戻れる、というものだった。それだけだった。

オートローテーション機能は、日米両政府の中で「普天間基地の安全性」と深く結びついてきた。オートローテーション機能の乏しい機種を配備したら、2004年の墜落事故以降、それでも普天間 基地で場周経路を飛んでいれば安全だ、という日米合同委員会の合意が根拠を失う。日米合意の存在を考えると、「オートローテーション機能はなくてもかまわない」とは口が裂けても言えない。 「オスプレイが、既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有することを確認したい。」と日本政府がわざわざ米政府に答えを迫る形をとったのも、 これまでの「普天間基地の安全性」が、唯一「オートローテーションによる帰還が可能」という理屈に支えられていたからだ。

オスプレイが「オートローテーションにより場周経路から安全に基地内に帰還できる」のかどうかは、2007年の報告書合意以降の日米政府の「安全宣言」の信ぴょう性に係ってくる。「オスプレイ にはオートローテーション機能がある」と言わなければ、これまでの説明が成り立たなくなるために、防衛省は「MV−22オスプレイ オートローテーションについて」をわざわざ出して、それ を言おうとした。

その「言い訳」がはたして功を奏しているのだろうか?防衛省・外務省が出している公式文書・データを使って、オスプレイの普天間配備にともない「安全宣言」が「非安全宣言」に変わること を検証していこう。

(RIMPEACE編集部)


オスプレイが飛ぶ普天間の場周経路。左がヘリモード、右が固定翼モードの経路。海兵隊の環境レビューより


2012-11-10|HOME|