日米合同委員会合意の「安全性」が吹っ飛んだ

普天間場周経路とオートローテーション(3)


「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」(2007.11 防衛省)の中の、ヘリの緊急着陸の図。ヘリは
滑走路に直角の方向で着地している。オスプレイの場合、防衛省が言うところの「オート・ローテーション」
で滑走路に直角に着地しても、時速130キロで猛進するので、乗組員、機体、周囲の人間がみな助からない。
そもそもオスプレイの場合滑空率が極端に小さいので、最短距離で飛んでも滑走路に到達できず、手前に突っ込む

日米合同委員会で合意した文書「普天間飛行場に係る場周経路の再検討及び更なる可能な安全対策についての検討に関する報告書」(以下、「報告書」と略)の中で、普天間基地に配備されている UH1やCH53について次のように述べている。

『オート・ローテーション・チャートから導かれる平均的な滑空率(最大滑空距離)は、概ね4フィートの前方への滑空につき1フィートの降下である。
 普天間飛行場の現在の場周経路における通常の飛行時の設定高度(ベース・レグに至るまでの間において1,000フィートMSL)に照らし合わせた場合、飛行場の標高(約250フィート) を差し引いた750フィート前後の高度に対応する到達距離は、短い場合でも約2,600フィートとなる。
ダウンウインド・レグ通過時の施設境界線からの距離が水平方向に概ね2,500フィート(約750メートル)程度であれば、オートローテーションの手順を執ることによって飛行場内の何れか の地点に到達することが可能となるが、場周経路の殆どが当該距離の覆域に含まれている。』

ヘリモードのオスプレイ、滑空しても安全に基地に戻れず

ここまでは、従来の普天間配備のヘリについての記述だ。では、「オスプレイのオートローテーション」の場合はどんな数字になるのだろうか?

「MV-22オスプレイ オートローテーションについて」(2012.9.19 防衛省)によれば滑空率は2:1だから、750フィート前後の高度に対応する到達距離は、約1,500フィートとなる。 オスプレイはヘリモードのときはCH46など現行のヘリの場周経路を飛ぶ。滑走路と平行する場周経路のダウンウィンド・レグは、滑走路と2500フィート離れている。到達距離1500 フィートではまったく滑走路に届かない。滑走路と直角に降下しても手前1000フィートで墜落することになる。

滑走路に届かなくても、CH46やUH1,CH53の場合は、それでも基地内の空き地などに降りる可能性はある。着陸時の前進速度をほぼゼロにできるからだ。ところが固定翼を使って滑空 して降りてくる「オスプレイのオートローテーション」は、着地時の前進速度が時速130キロとされる。これでは滑走路に正対して降りてくる固定翼機の着陸とおなじ形態でしか安全に着陸でき ない。飛行場内の何れかの地点に到達しても安全に着地できないのだ。

そして滑走路に正対する位置まで飛ぼうとすれば、それに要する飛行距離は、直線距離よりも長くなることは、ユークリッド幾何学の初歩だ。到達距離1500フィートでは滑走路に近づくこと さえできない。

ヘリの場周経路を飛んでいてもエンジンが停止したら「防衛省の言うところのオートローテーション」では安全に着陸できない。普天間基地の危険性の一つにヘリのはみ出し飛行がある。防衛省が 調べた飛行航跡図からもわかるように、普天間のヘリは場周経路からほとんどすべてが外側にはみ出している。基地の境界からのはみ出しは、1500フィートを超えるのが多いのは明らかだ。 これだけはみ出せば、オスプレイの場合は基地の中にさえ戻れない(基地の中に墜落することさえできない)。オートローテーションの手順を踏んでも基地周辺の住居に墜落の危機が迫まる。

(RIMPEACE編集部)


ヘリモードで右回りの場周経路に入ったオスプレイ(12.10.24 撮影)


2012-11-10|HOME|