日米合同委員会合意の「安全性」が吹っ飛んだ

普天間場周経路とオートローテーション(4)


ヘリの場周経路(点線)と固定翼機の場周経路(実線)。大きさが違う。固定翼機の楕円の経路の短径は約2.6キロ(約8500フィート)
(海兵隊の環境レビューより )

ヘリの場周経路をヘリモードで飛ぶオスプレイが、オートローテーションで基地の中に安全に戻れないことがはっきりした。では、プロペラ機の場周経路を固定翼モードで飛ぶオスプレイは、 エンジン2発停止の場合に、安全に降りられるのだろうか。

普天間基地の飛行高度は、ヘリが1000フィート、ジェット機が2000フィート、そしてプロペラ機は1500フィートとなっている(「報告書」の「管制空域の設定」より)。スピードの 違う航空機を高度差をつけることで分離して安全に管制する意図からだ。

固定翼モードでの滑空も基地に届かず

平均海面高度(MSL)1500フィートの場周経路を飛ぶ固定翼モードのオスプレイと、普天間基地滑走路との相対高度は1250フィートとなる。プロペラ機の場周経路(ダウンウィンド) と滑走路の距離は最短でも8000フィート超。
滑空で降りるのが防衛省のお好みのようだが、滑走路と正対するまでの飛行距離は、最低でも滑走路との距離を直径とする円周の半分、つまり12000フィートを超える。

防衛省の「オートローテーション」によれば、ナセルを直角に立てた時(つまりヘリモードのとき)のオスプレイの滑空率は2:1(1フィート降りるときに2フィート前進する)だ。ナセルの 角度が0度となる固定翼モードで滑空した場合の滑空率を、ナセルを立てた時の3倍と大甘に見積もったとしても滑空率は6:1となる。
固定翼モードの滑空率については、「伝聞情報」として4.5:1を挙げる人もいる。(航空ファン 2012.12月号 元テストパイロットの目からみたオスプレイへの疑問 柳井健三氏)

甘い数字の6:1を採用しても、1250フィートの高度差から滑空した時の飛行距離は7500フィートだ。滑走路と直角方向(滑空では安全に降りられないコース)をとったとしても、滑走路には届かない数字だ。ましてや、安全に降りるために滑走路に正対しようと思ったら、必要な飛行距離の6割程度を飛んだところで普天間基地の高度に達してしまう。その下には民家が拡がっている。

固定翼モードで、対応する場周経路を飛ぶ際も、エンジンが止まったオスプレイは安全に普天間基地に戻ることができない。

場周経路を飛ぶオスプレイの高度と滑空率を考えれば、米政府に対する確認要求が「無いものねだり」だったことが、日本政府にはわかっていたはずだ。

固定翼モードでもヘリモードでも、オスプレイはエンジンが止まったら、これまでのヘリのようになんとか安全に降りることができないことが、改めて判明した。この「オスプレイの危険性」は、 普天間基地周辺住民にとって、きわめて重大な問題だ。

(RIMPEACE編集部)


固定翼モードでプロペラ機が周る場周経路に入ったオスプレイ。そのまま経路に沿って普天間基地に着陸した(12.10.23 撮影)


2012-11-10|HOME|