森本大臣、記者会見で「ご乱心」

低空飛行訓練は日本の航空交通管制下!?


11月9日の防衛大臣の記者会見の内容。防衛省のホームページより。

「米軍といえども日本の国内で飛行する場合、日本の航空法に従って、日本の航空交通管制下の中に入って飛行するということによって、飛行の安全が担保されている」だから低空飛行を行って も安全だ、と大見えを切ったのは現職の防衛大臣だ。
では、航空特例法によって日本の航空法の適用から除外されている米軍機が、日本の航空交通管制下に入らずに飛ぶのは、飛行の安全が担保されないことになる。

米軍機が低空飛行ルートを飛ぶ場合、フライトプランが認可されて、敵味方識別装置(?)が動いて航空交通管制下に飛行するのは、出発地の基地から低空飛行ルートの入り口までだ。
「厚木基地を離陸した "EAGLE 505"(事故機の編隊のコールサイン)は、IFRクリアランスをキャンセルして低空飛行ルート『オレンジ』に入った」(早明浦ダム湖に墜落したA6の事故報告書、 「事実関係」より)
計器飛行の飛行許可を得て厚木を離陸して、オレンジルートの入り口まで飛んだところで計器飛行をキャンセルして有視界飛行に移行して、オレンジルートを飛び始めた、と事実認定を行っている。

そもそも「日本の航空交通管制下の中に入って飛行する」ということは、飛行中の機体の位置、高度を、日本の管制機関がリアルタイムで把握している、ということだ。電波が届くところを飛んで いて、近くを飛ぶ航空機もすべて管制機関が把握していなければ、防衛大臣いうところの「安全が担保される」ことなどありえない。
周囲の山よりも低いところを飛ぶ低空飛行訓練は、レーダーに探知されないように飛ぶ。日本の管制機関が把握したくてもしようがない低高度を飛ぶから低空飛行訓練なのだ。

計器飛行方式をキャンセルした航空機は、管制機関の支援に頼らずに自分で周囲を見て、地面や他の航空機との衝突を避けなければならない。これを有視界飛行方式という。まさに低空飛行訓練は この有視界方式で飛行する。ただし安全高度の制限は適用除外となっているから、「飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度」は 適用されず、高度150メートルのみが制限となっている。
低高度を自分で障害物を避けながら飛ぶから、米軍の低空飛行の指示の中に "Sea and Avoid"(よく見て避けろ)が最も大事な安全原則だ、という言葉が繰り返し出てくる。

森本大臣の記者会見での発言は、低空飛行訓練が計器飛行方式で行われるという間違った前提に立っているから、政府機関の管制によって「安全が担保されている」などという結論が出てくる。
米軍の低空飛行訓練は日本の管制機関の支援なしに飛ぶ。また、米軍機の飛行は日本の航空法の適用から除外されている。そのことを知っていて、「日本の航空法に従って、日本の航空交通管制 下の中に入って飛行するということによって、飛行の安全が担保されている」と答えたとすれば、嘘つきであり、低空飛行ルートの下の各自治体のドクター・ヘリや防災ヘリなどの活動を 危険にさらすものでしかない。

(RIMPEACE編集部)


早明浦ダム墜落現場付近の急カーブ。94年10月14日のA6攻撃機の墜落現場は、ダム湖沿いに右奥すぐのところだ。
水面からの飛行高度が高度150メートル、ダム湖面の標高約350メートル。合計した機体の高度は500メートルとなる。
標高1000メートルを越える山に囲まれ、標高500メートルを飛ぶ機体が計器飛行方式で飛べるわけがない。(2012.8.31撮影)


2012-11-13|HOME|