巡洋艦シャイロー、海自参加の高度戦術訓練を終えホワイトビーチ寄港



ホワイトビーチに停泊する巡洋艦シャイロー。横須賀を母港とするイージス巡洋艦のうちの1隻だ

1月26日、巡洋艦シャイロー(SHILOH CG 67)が沖縄周辺海域などでのthe Surface Warfare Advanced Tactical Training (SWATT)を終えてホワイトビーチに入港した。

前日の1月25日には巡洋艦アンティータム(ANTIETAM CG 54)もホワイトビーチに寄港していたが、このアンティータムも今回のSWATTに参加していた軍艦だ。

米海軍HPの1月27日付けの記事「Forward-deployed U.S. Naval forces conclude SWATT」(https://www.cpf.navy.mil/Newsroom/News/Article/3280684/forward-deployed-us-naval-forces-conclude-swatt/)によれば、水上戦闘高度戦術訓練SWATTは、米海軍水上艦艇部隊の高度戦術訓練としては最高峰の演習だ。
「訓練シナリオは、統合防空ミサイル防衛(IAMD)、対潜水艦戦/水上戦(ASW/SUW)、情報戦(IW)、ミサイル発射や砲撃演習などの複合実戦で、西太平洋の脅威に対する作戦に備え、前方展開した水上部隊を訓練するもの」だったという。

同記事によると今回のSWATTには、シャイローやアンティータムの他、巡洋艦チャンセラーズビル(CHANCELLORSVILLE CG 62)、駆逐艦ラファエル・ペラルタ(RAFAEL PERALTA DDG 115)という横須賀母港艦船や、貨物弾薬補給艦ワシントン・チャンバース(WASHINGTON CHAMBERS T-AKE 11)、ヘリコプター海上攻撃隊51(HSM 51)、第15駆逐戦隊(DESRON 15)司令部部隊の各米海軍艦船、部隊に加えて、海上自衛隊の護衛艦あしがら(DDG 178)も参加していた。
なお、後述の海上自衛隊の「お知らせ」は、給油艦ジョン・エリクソン(JOHN ERICSSON T-AO 194)も参加していたとして、「あしがら」がジョン・エリクソンから給油を受けている写真を掲載している。

前述の米海軍HP記事は、SWATTに今回「あしがら」が参加したことについて、「the first multi-international iteration of the exercise with participation from the Japan Maritime Self-Defense Force」になったと述べている。SWATTに海上自衛隊が参加したのは初めてだということだろう。

同じ記事には、「この訓練を通じて、我々の戦術的能力と米海軍との相互運用性を向上させることができた」「このように、海上自衛隊と米海軍は、日頃から緊密に連携し、さまざまな事態に対応する能力を維持・強化している」という「あしがら」艦長の坂井一等海佐のコメントが紹介されているが、「私たちは多国籍軍として戦うのだから、多国籍軍として訓練するのは当然だ」("We are going to fight as a multi-national force, so it's only right that we train as a multi-national force")という、第7艦隊第71任務部隊(CTF 71)の副司令官ジャスティン・ハーツ大佐の発言も掲載されている。
つまり、今回のSWATTを端的に説明するならば、米海軍と海上自衛隊が、沖縄周辺の海域で「多国籍軍として戦う」実戦訓練を行ったということだろう。

「あしがら」の今回のSWATT参加について海上自衛隊は、「海上自衛隊は、日米同盟の抑止力・対処力を強化すべく、次のとおり米海軍と共同訓練を実施しました」。「目 的 海上自衛隊の戦術技量及び米海軍との相互運用性の向上」「訓練海空域 関東南方から四国南方を経て沖縄周辺に至る海空域」「訓練項目 各種戦術訓練(対空戦、対水上戦、対潜戦)、洋上補給等」などとHPの1月24日付けの「お知らせ」でごくあっさりと事後報告するにとどめている。
しかし他方で、同じ海自の「自衛艦隊」HPのニュース記事には、「今後も、米海軍が主催するSWATT(Surface Warfare Advanced Tactical Training)に海自が参加できることを希望しています」という坂井艦長の「所見」が掲載されている。

米海軍水上艦艇部隊とともに「多国籍軍」として戦う高度戦術訓練への初参加の決定は自衛隊の独断で行い、一旦参加した後では、それを既成事実として「今後も」参加していこうというのだろう。だが、日本の主権者がいつ、米軍の言う「多国籍軍」の一員として自衛隊が戦争することを認めたというのか。日本国憲法のどこを読めば、自衛隊が米軍と「多国籍軍」を形成してwarfareを行うことが許されていると言えるのか。

防衛省・自衛隊へのシビリアン・コントロールを機能させる意志のない政権のもとで進む自衛隊の暴走の一端が、ここにも現れている。きわめて危険な状況だ。

なお、シャイローは、1月30日にホワイトビーチを出港している。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)(23.1.29 世嘉良 学 撮影) 


1月29日のホワイトビーチ、向かって左側の海軍桟橋にシャイローが停泊し、右側の陸軍桟橋に海自の護衛艦「はまぎり」(DD 155)が停泊している。
海自の補給艦「おうみ」(AOE 426)が沖泊しているのも見える


ホワイトビーチの陸軍桟橋に停泊する護衛艦「はまぎり」


1月29日、ホワイトビーチの沖に停泊する補給艦「おうみ」。1月26日には、SWATTに参加した米巡洋艦アンティータムへの補給を行った


2023-1-31|HOME|