石垣駐屯地の開設と、日米共同訓練アイアン・フィスト


3月16日の石垣駐屯地正門前


住民からの抗議の要請書を受け取る三等陸佐


小銃を持ち行進する小隊


石垣駐屯地に建設された火薬庫


石垣駐屯地の遠景(23.3.16 木元 撮影)


石垣駐屯地の工事がはじまったのは2019年3月。約47ヘクタールの計画だった。同年4月に沖縄県環境アセスメント条例が改正施行され、適用される面積が50から20ヘクタール以上の事案となるため、環境アセスメントを回避するための強引な着工だった。
以来4年が経過したが、小銃射撃場もグラウンドも未整備のまま、3月16日、570名の隊員が配備され編成完結式が行われた。

駐屯地は於茂登前岳の麓に造成された。石垣島の水源地にあたる場所であり、地下水や周辺環境への影響が懸念されている。
16日も地元の人々は「命の水を守れ」と訴えていた。抗議行動の最中も正門には自動小銃をもった隊員など4名が立っていた。

駐屯地司令の井上雄一朗1等陸佐は「家族を含む隊員は約830人が島民となる」と「沖縄タイムス」(4月2日付)のインタビューに答えている。また、3月16日に住民団体が止めるよう抗議した迷彩服を着ての通勤について、「迷彩服に国を守るという自覚と誇りを持って勤務をしている。こうしたことを理解してもらうように努めたい」と発言。

570名の内訳は、八重山警備隊(隊本部、本部中隊、普通科中隊、後方支援隊)、北熊本の健軍駐屯地からやって来た第303地対艦ミサイル中隊、長崎県大村の竹松駐屯地からやってきた第348高射中隊(地対空ミサイル)、駐屯地業務隊などだ。

3月18日には石垣港に海上自衛隊の大型揚陸艦「おおすみ」が入港。ミサイルや弾薬の入ったコンテナ18個を陸揚げした。

住民への説明会は、こういった一連の動きが終わった3月22日であった。
井上1佐は先のインタビューで、「日米共同の使用や訓練は現段階では全く計画されていない。その上で、日米共同というのは我が国の防衛力、抑止力を高めていく上で非常に重要だと認識している。今後は連携強化を図っていく上でさまざまな議論、検討がされていくと認識している」と言い切っている。今後の動向、要注意である。

2月16日から3月12日まで日米共同訓練アイアン・フィスト(鉄の拳)23が沖縄から九州にかけて実施された。「おおすみ」はこの訓練にも参加している。
これまで、アメリカ西海岸のキャンプ・ペンデルトンなどで実施されていた訓練をはじめて日本で実施した。
陸上幕僚監部が訓練場所として公表したのは、日出生台演習場(大分県)、徳之島(鹿児島県)、喜界島(同)、キャンプ・ハンセン(訓練地区)等である。「航空基盤」として熊本空港に隣接する陸自高遊原分屯地をあげている。

しかし、2月16日の日米合同委員会では下記の5ケ所が承認されている。
キャンプ・ハンセン 2月25日〜3月14日
キャンプ・シュワブの提供水域 2月25日〜3月14日
金武ブルー・ビーチ訓練場の土地と提供水域 2月25日〜3月14日
徳之島(土地、建物など4ケ所) 3月1日〜3月6日
出砂島射爆撃場(沖縄県島尻郡渡名喜村) 3月5日〜3月6日

訓練内容も、統合火力誘導訓練、着上陸訓練、空挺降下訓練、陸上戦闘訓練、実弾射撃訓練、兵站・衛生訓練とものものしいものだ。残念ながら、出砂島射爆撃場でどのような実弾射撃訓練をやったのか、情報をえることができなかった。

3月1日には東シナ海で強襲揚陸艦アメリカ、ドック型輸送揚陸艦グリーンベイ、「おおすみ」が艦隊航行訓練を行っているが、その先頭には海自の掃海艇「ひらしま」と「やくしま」(ともに佐世保基地所属)がいる。掃海艇が揚陸艦の先陣を務めるなどという編成は、私の知る限り初めてのことだ。航行の支障となる機雷を除去する訓練も実施したのだろうか。日米共同訓練はまた一歩、実戦に近づいたといえよう。

(木元 茂夫)


3月4日、大型揚陸艦「おおすみ」の上空を飛行する米海兵隊の攻撃ヘリAH-1ZとUH-1Y(NAVY.MILより引用)


3月9日、金武ブルービーチに接近する海自の高速上陸用舟艇LCAC(NAVY.MILより引用)


2月19日、日出生台演習場での日米共同の負傷兵治療訓練(NAVY.MILより引用)


2023-4-25|HOME|